【知的財産権 後編】間違いやすい知的財産権問題|商標権と商号、資料の複製と著作権の取り扱い、営業秘密と情報の持ち出し

【知的財産権 後編】間違いやすい知的財産権問題_コラムサムネ
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。介護障害福祉現場に潜む知的財産権問題を前後編2回に分けて検討します。後編のテーマは【間違いやすい知的財産権問題】です。商標権と商号、資料の複製と著作権の取り扱い、営業秘密と情報の持ち出しについて詳しく解説します。

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・商標権と商号について理解したい方
・資料の複製と著作権の取り扱いについて理解したい方
・営業秘密と情報の持ち出しについて理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで1008社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【間違いやすい知的財産権問題】をテーマに取り上げ、商標権と商号、資料の複製と著作権の取り扱い、営業秘密と情報の持ち出しについて詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

事業所名やロゴと商標権・商号

介護障害福祉事業所では、特許権・実用新案権・意匠権が問題になるケースは比較的少ないため、ここでは、より身近な商標権と商号に絞ってお話しします。商標権は、商品やサービスに使う名称やロゴマークを保護し、そこに蓄積された信用を守る権利です。自社観点、他社観点の両面から、注意点を確認しましょう。

自社観点

まずは、自社の事業所名やロゴを守る、という観点です。日本では、先に出願して登録した者に権利が認められる、いわゆる先願主義がとられていますので、名称やロゴは、できるだけ早く商標登録しておくことが望まれます。また、会社名すなわち商号は登記されているわけですが、登記はあくまで、その内容を公に示すことが目的であり、「会社名を登記したから、名称は守られている」と考えるのは危険ですので、ご留意ください。

他社観点

次に、知らないうちに、他社の商標を侵してしまう、という観点です。例えば、長年使ってきた事業所名が、他社の登録商標に触れているとして、名称の使用差止めと、損害賠償の支払いを命じられた裁判例も存在します。そのため、事業所名やロゴを決める際には、特許庁の無料のデータベース、いわゆるJ-PlatPat(ジェイ・プラットパット)で、似た商標がないかを調べておくと安心です。

資料の複製と著作権の注意点

続いて、資料の複製と著作権の取り扱いの注意点を解説します。著作権は、文章や写真、図表などの創作的な表現物を、創作と同時に自動的に保護する権利です。介護障害福祉事業では、様々な場面で、著作権が問題となりやすいため、2つの場面に分けて、注意点をお伝えします。

資料やマニュアルの活用

1点目は、外部の専門家や事業者が作成した資料やマニュアルの活用についてです。これらの資料を無断で複製したり、アレンジして配ったりすると、著作権の侵害となるおそれがあります。活用可能な範囲を事前に確認しておくことが望まれます。

書籍や新聞のコピー

2点目は、書籍や新聞のコピーについてです。市販の書籍や新聞の記事を、研修のために人数分コピーして配る行為は、たとえ営利目的でなくても、著作権の侵害にあたるおそれがあります。「社内研修のためだから問題ない」と考えがちですが、利用が認められるのは、営利を目的としない学校などの教育機関に限られます。

営業秘密と情報の持ち出し

最後に、営業秘密と情報の持ち出しについて解説します。介護障害福祉事業所には、長年の運営で蓄積した、貴重な情報が数多くあります。具体的には、利用者リストや、独自のケアのノウハウ、運営のマニュアルなどです。これらは、不正競争防止法上の、営業秘密として、法律で守られる場合があります。営業秘密として認められるには、3つの要件があります。

3つの要件

①秘密として管理されていること(秘密管理性)
②事業に役立つ情報であること(有用性)
③世間に広く知られていないこと(非公知性)

この要件を満たす顧客リストやノウハウ、マニュアルを、無断で外部に持ち出す行為は、法律違反になる可能性があります。実際に、退職や転職の際に、情報を持ち出して使ったり、他者に渡したりして、民事上の損害賠償請求を受け、さらに刑事罰が科される事例も多数発生しているため、くれぐれもご注意ください。

事業所としては、営業秘密に該当する書類や情報に対して、アクセス制限を厳しく設けるなどして、秘密として特別に管理する姿勢を、日頃から示しておくことが大切です。あわせて、入社や退職の際に、秘密保持誓約書の提出を求めることも、有効な備えとなります。こうした備えは、事業所だけでなく、職員一人ひとりを守ることにもつながりますので、ご留意ください。

まとめ

今回のコラムでは間違いやすい知的財産権問題について解説しました。商標権と商号、資料の複製と著作権の取り扱い、営業秘密と情報の持ち出しについてご理解いただけたかと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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