公平なプロセス|結果よりもプロセスが重視される理由、納得されるプロセスの条件、伝え方の公平さ【職員の定着シリーズ⑤】

第5回 透明な会社運営が育む納得感 ── 不満の正体は決め方にある
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。職員の定着にお悩みではないでしょうか?実はこの問題、給与や労働条件だけでは解決できない、いくつもの要素が複雑に絡み合っています。福祉起業塾では、この問題を全7回のシリーズで解き明かしていきます。第5回のテーマは【公平なプロセス】です。結果よりもプロセスが重視される理由、納得されるプロセスの条件、伝え方の公平さについて詳しく解説します。

第1回 職員が辞めていく本当の理由 ── 定着率の高い会社から学ぼう
心理的結びつき(コミットメント)|職員が辞めていく本当の理由、結びつきの3つの形、結びつきを強めるポイント【職員定着シリーズ①】
第2回 雰囲気を良くする助け合い精神 ── 職務を超えた小さな気遣い
小さな気遣い-OCB|雰囲気を良くする助け合い精神、OCBが続く仕組み、OCBを生み出す土台【職員定着シリーズ②】
第3回 ストレス軽減のための支援策 ── 個人任せにしていませんか
ストレスの軽減|職場の内外にあるストレスの原因、ストレスの3つのサイン、ストレスに対するサポート【職員定着シリーズ③】
第4回 給与とモチベーションの関係 ── やる気の源はどこにある
モチベーション|給与だけではモチベーションが高まらない理由、満足と不満足の違い、モチベーションが生まれる仕組み【職員定着シリーズ④】
1.公平なプロセス_経路図

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・結果よりもプロセスが重視される理由について理解したい方
・納得されるプロセスの条件について理解したい方
・伝え方の公平さについて理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで1020社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【公平なプロセス】をテーマに取り上げ、結果よりもプロセスが重視される理由、納得されるプロセスの条件、伝え方の公平さについて詳しく解説します。

結果よりもプロセスが重視される理由

はじめに、結果よりもプロセスが重視される理由について解説します。

職場で不満の声が上がるとき、その矛先は、大きく2つに分かれます。決まった結果そのものへの不満と、その結果に至るまでのプロセス、いわゆる「決め方」への不満です。新しい勤務シフトが張り出された場面を例に、そこで出る2つの声を考えてみます。

2.公平なプロセス_勤務シフトが張り出された場面

1つ目は、「その日は子供の参観日だから休みたかったのに。希望が通っている人もいるのに」という声です。これは、割り振られた結果への不満です。ここで大切なのは、人は自分の扱われ方を、それだけで判断するのではなく、周囲の職員と比べて判断する、という点です。しかも、その判断は一人ひとりの事情や感じ方によるため、同じ一枚のシフト表でも、公平と感じる職員と不公平と感じる職員がいることに注意が必要です。

2つ目は、「先月は希望を聞いてくれたのに、今月は聞いてくれなかった」という声です。この職員の不満は、シフトの中身よりも先に、自分の声を聞かずに決められたという「プロセス」に向かっています。

ここに1つ、重要なポイントが含まれています。この声を裏返せば、先月は、希望がすべて通ったわけではなくても、聞いてもらえたから納得できた、ということです。つまり、たとえ本人にとって好ましくない結果でも、そこに至るプロセスが公平であると感じられれば、人はその結果を受け入れる。人事労務の世界では、そのように考えられています。では、どのようなプロセスが公平と受け止められるのでしょうか。次の章で見ていきます。

納得されるプロセスの条件

ここでは、納得されるプロセスの条件について解説します。公平と受け止められるプロセスの条件は、大きく3つに整理できます。

決める人の姿勢

1点目は、決める人の姿勢です。決定プロセスが人や時によってぶれず、誰に対しても同じように適用されること、そして、決める人の好き嫌いや先入観が決定から排除されていることです。

決めるための材料

2点目は、決めるための材料です。思い込みや不確かな伝聞ではなく、正確な情報に基づいて決められること、そして、決定が間違っていたときに、それを見直し、修正できる道が確保されていることです。

関係する人への向き合い方

3点目は、関係する人への向き合い方です。決定の影響を受ける人たちの事情や意見が決定プロセスに反映されていること、そして、プロセスそのものが倫理的に適切であることです。

このような条件を満たすことで、職員の決定に対する納得感は高まります。しかし、それだけでは十分ではありません。決まったことを、誰が、どのように伝えるかが残っているからです。この点を次の章で見ていきます。

伝え方の公平さ

最後に、伝え方の公平さについて解説します。

決定プロセスの条件を整えても、それで終わりではなく、それを運用する人の態度や伝え方によって、職員の納得感は変わります。つまり、何を決めたか、どのように決めたかだけでなく、誰がどのように伝えるかもまた、公平さを構成するのです。

伝え方の要点は、大きく2つに整理できます。

伝える中身

1点目は、伝える中身です。都合の悪いことでも取り繕わず、嘘やごまかしなく誠実に伝えること、そして、なぜそう決めたのかを、本人が理解できるまで十分に説明することです。

相手への接し方

2点目は、相手への接し方です。決定を伝える相手を一人の対等な人間として尊重し、敬意をもって接すること、そして、職員からの問いかけに対して、面倒がらず、丁寧に答えることです。

公平さへの関心が低い職場は、知らず知らずのうちに、職員の不満、ルールや手続きの無視、生産性の低下といった危うさに直面しています。

3.公平なプロセス_公平さへの関心が低い職場

さらに、第2回で解説した「小さな気遣い(OCB)」は、決定プロセスが公平だと感じられる職場でこそ育まれるものでした。公平さへの無関心は、職員の自発的な貢献を失わせることにもつながるのです。透明な会社運営は、手間のかかる回り道に見えて、実は納得感と貢献を育む近道であるといえます。

まとめ

今回のコラムでは公平なプロセスについて解説しました。結果よりもプロセスが重視される理由、納得されるプロセスの条件、伝え方の公平さについてご理解いただけたかと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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