心理的結びつき(コミットメント)|職員が辞めていく本当の理由、結びつきの3つの形、結びつきを強めるポイント【職員定着シリーズ①】

第1回 職員が辞めていく本当の理由 ── 定着率の高い会社から学ぼう
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。職員の定着にお悩みではないでしょうか?実はこの問題、給与や労働条件だけでは解決できない、いくつもの要素が複雑に絡み合っています。福祉起業塾では、この問題を全7回のシリーズで解き明かしていきます。第1回のテーマは【心理的結びつき(コミットメント)】です。職員が辞めていく本当の理由、結びつきの3つの形、結びつきを強めるポイントについて詳しく解説します。

第1回 職員が辞めていく本当の理由 ── 定着率の高い会社から学ぼう
心理的結びつき(コミットメント)|職員が辞めていく本当の理由、結びつきの3つの形、結びつきを強めるポイント【職員定着シリーズ①】
第2回 雰囲気を良くする助け合い精神 ── 職務を超えた小さな気遣い
小さな気遣い-OCB|雰囲気を良くする助け合い精神、OCBが続く仕組み、OCBを生み出す土台【職員定着シリーズ②】
第3回 ストレス軽減のための支援策 ── 個人任せにしていませんか
ストレスの軽減|職場の内外にあるストレスの原因、ストレスの3つのサイン、ストレスに対するサポート【職員定着シリーズ③】
第4回 給与とモチベーションの関係 ── やる気の源はどこにある
モチベーション|給与だけではモチベーションが高まらない理由、満足と不満足の違い、モチベーションが生まれる仕組み【職員定着シリーズ④】
1.心理的結びつき(コミットメント)_経路図

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・職員が辞めていく本当の理由について理解したい方
・結びつきの3つの形について理解したい方
・結びつきを強めるポイントについて理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで1020社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【心理的結びつき(コミットメント)】をテーマに取り上げ、職員が辞めていく本当の理由、結びつきの3つの形、結びつきを強めるポイントについて詳しく解説します。

結びつきの3つの形-コミットメント

はじめに、結びつきの3つの形について解説します。

職員がなぜ職場に留まり、なぜ辞めていくのか。その鍵を握るのが、職員が自分の職場に対して抱く心理的な結びつきです。これは専門的にはコミットメントと呼ばれる考え方で、3つの形があるとされています。

感情面の結びつき(情緒的コミットメント)

1点目は、感情面の結びつきです。職場への愛着にもとづくもので、「この職場が好きだから居る」という状態です。「利用者さんや仲間を含めて、職場そのものが好きだから、働き続けている」という声が、これにあたります。

損得面の結びつき(功利的コミットメント)

2点目は、損得面の結びつきです。対価があるから留まるもので、「辞めると損だから居る」という状態です。「長く勤めた結果、得られた手当が、転職したら無駄になってしまう」という声が、これにあたります。

義理にもとづく結びつき(規範的コミットメント)

3点目は、義理にもとづく結びつきです。恩に報いる義務感からくるもので、「居るべきだから居る」という状態です。「代表や先輩に育ててもらった恩があるので、辞められない」という声が典型例です。

この3つのうち、職場にとって最も望ましいのは感情面の結びつきです。損得や義理による結びつきは、より良い条件の転職先が見つかったときや、恩義を感じていた先輩が先に退職し、残る義務がなくなったと感じたときに、離職につながるおそれがあります。これに対し、感情面の結びつきは、そうした事情に左右されにくいためです。

2.心理的結びつき(コミットメント)_3種類

感情面の結びつきの効果

ここでは、感情面の結びつきの効果について解説します。

職場との間で、感情面の結びつきが強い職員は、当然、転職意思そのものが低くなりますが、効果はそれだけにとどまりません。こうした職員は、職場の価値観を自分のものとして受け入れているため、価値観を共有する職員どうしの連携がスムーズになり、職場全体の業務効率が高まります。

また、忙しい職員の仕事を手伝ったり、ほかの職員の急な欠勤によるシフト変更にも快く応じたりと、職務として求められる水準以上の行動を、自分から買って出る傾向があります。

この「職務を超えた小さな気遣い」こそが、職場の雰囲気を良くする土台になります。この中身については、第2回で詳しく解説します。

結びつきを強めるポイント

最後に、結びつきを強めるポイントについて解説します。

結びつきは、職場側の働きかけと、職員個人側の事情、その両方によって強まります。職場側の働きかけには4点あります。

仕事の中身と任され方

1点目は、仕事の中身と任され方です。責任ある仕事を任され、頼りにされていると感じる職員ほど、感情面の結びつきが強まる傾向があります。詳しくは、第4回で解説します。

職場の一体感

2点目は、職場の一体感です。団結力があり、まとまりのある職場は、感情面の結びつきを高めます。

役割の板挟み・あいまいさの解消

3点目は、役割の板挟み・あいまいさの解消です。役割を明確にし、職務設計を整理し、職場の中で自分の存在意義を実感できると、結びつきは強まります。詳しくは、第3回で解説します。

会社からの支援

4点目は、会社からの支援です。十分な福利厚生や、教育・研修への投資を通じて、「会社は自分を大切にしてくれている」という実感を職員が持てることが、結びつきを強めます。

3.心理的結びつき(コミットメント)_働きかけ

一方、職員個人側の事情としては、勤続年数と年齢が挙げられます。長く勤め、年齢を重ねるほど、3つの結びつきはいずれも強まっていくとされています。

感情面(情緒的コミットメント)

感情面では、任される仕事の幅が広がり、職場で築いてきた信頼を大切にしたいという思いが育ちます。

損得面(功利的コミットメント)

損得面では、辞めることで失う手当や今の職場でしか通用しない技能が増え、また年齢とともに転職の機会も減っていきます。

義理の面(規範的コミットメント

義理の面では、職場から受けた恩が積み重なり、辞めれば会社や職場の仲間を裏切ることになる、という思いが強まります。

このように、職員が自分の職場に対して抱く結びつき、特に感情面の結びつきは、自然に生まれるのを待つものではなく、職場の工夫で育てることができます。その第一歩となる「職務を超えた小さな気遣い」について、次回、詳しく解説します。

まとめ

今回のコラムでは心理的結びつき(コミットメント)について解説しました。職員が辞めていく本当の理由、結びつきの3つの形、結びつきを強めるポイントについてご理解いただけたかと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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