外国人介護労働者受入れ 新在留資格「特定技能」とは?制度の概要

外国人介護労働者受入れ在留資格とは(介護)

 

人口減少社会の到来とともに、外国人労働者の受け入れに関する議論が活発になっている。平成30年10月、政府はついに外国人労働者に対して事実上永住を認める法改正の検討に入った。このコラムでは外国人労働者の中でも特に介護人材にポイントを絞って解説する。

 

【目次】
①新在留資格「特定技能」で事実上永住が可能に
②平成30年10月時点の外国人介護労働者の受け入れの仕組み
③新たな在留資格「特定技能」の創設で何がどう変わるか
④問題点とまとめ

①新在留資格「特定技能」で事実上永住が可能に

平成30年10月、政府が法改正の検討に入った新在留資格「特定技能」。この改正は次の2点において画期的かつチャレンジングな施策であると言える。

1)介護分野において、就労目的での入国が可能となったこと
2)介護分野での就労を続けることにより、事実上永住が可能となったこと

従来の技能実習制度、在留資格(介護)においては、深刻化する介護労働者不足問題への対応が不十分だった。新在留資格「特定技能」では就労目的で入国し、永住できるという点が従来にないポイントである。(永住権の付与ではない)

次に従来(平成30年10月時点)の外国人労働者の受け入れ方法について整理する。

②平成30年10月時点の外国人介護労働者の受け入れの仕組み

本稿執筆時点の外国人介護労働者の受け入れ方法は次の3種類である。その概要を示す。

技能実習制度 在留資格(介護) 経済連携協定(EPA)
制度の開始 平成29年11月 平成29年9月 平成20年7月
内容 発展途上国への介護技術移転 介護専門技術人材の受け入れ 経済活動の連携
人材要件 自国で介護または類似業種の経験がある18歳以上 留学生として介護福祉士養成校に通い、資格を得た者 インドネシア、フィリピン、ベトナムの看護学校卒業生等
在留期間 最長5年(更新不可) 最長5年(更新可) 4年中に資格を得れば最長5年(更新可)
職場制限 訪問系は不可。有料老人ホームは部分可。 原則制限なし 訪問系は資格取得者の身

③新たな在留資格「特定技能」の創設で何がどう変わるか

現状の(前項の表)技能実習制度、在留資格(介護)は介護分野における労働者不足問題を直視しない、あいまいな法制度である。技能実習制度の目的はあくまでも発展途上国に対する技術移転。技術移転のために研修生の地位で来日し、仕事を覚える。研修生たちは労働力ではないという建前のもと、かつては労働法の適用さえなく、劣悪な環境の下で酷使され社会問題にもなった。

一方の在留資格(介護)は制度としては浅いが日本国内の介護福祉士養成校への通学(留学)が前提となる。在学中は一定の制限の元での就労が可能だが、渡航費と学費、家賃ほか生活費を考えると留学生にとっては多大な負担が生じる。

新在留資格「特定技能」は技能実習生による資格取得を想定しているようであるが、そうなると技能実習制度自体の創設目的である「発展途上国への技術移転」自体が見直されるのではないだろうか。

ここで新在留資格「特定技能」の検討案を整理すると次表の通りとなる。

特定技能1号 特定技能2号
分野 農業、介護、飲食料品製造業、建設、造船船用工業、宿泊、外食、漁業、ビル清掃、素形材産業、産業機械製造、電子・電気機器、自動車整備、航空(14分野)
条件 相当程度の知識・経験 熟練技能
日本語 生活に支障ないレベル 高度なレベル
在留期間 最長5年 事実上永住可能
家族の帯同 不可

技能実習生は3年の経験により無試験で特定技能1号の資格を得ることができる。つまり技能実習5年+特定技能5年、合計10年間日本で介護就労することができる。この間に特定技能2号の認定を得ることで事実上永住が可能となるのである。

④問題点とまとめ

外国人介護労働分野における新制度「特定技能」の創設。この制度は介護分野の人材不足に真正面から向き合うものであるが、同時にクリアしなければならない問題点も多い。例えば違法ブローカーや地域生活上のトラブル等の問題だ。政府は制度の開始と同時に法務省内局である入国管理局を外局に格上げし、「出入国在留管理庁」を設置し監視を強化する。

在留資格の専門家である行政書士、労働問題の専門家である社会保険労務士も外国人介護労働者問題に十分に貢献できるよう、万全なる準備を期す必要があると考える。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538