ストレスチェックの全事業所への義務化|法律上の位置づけ、ストレスチェックの内容、組織としての対応方法

ストレスチェックの全事業所への義務化|法律上の位置づけ、ストレスチェックの内容、組織としての対応方法_コラムサムネ
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。ストレスチェックの実施が全ての事業所に義務化されることをご存知でしょうか。今回のコラムではストレスチェックの全事業所への義務化をテーマに取り上げ、法律上の位置づけ、ストレスチェックの内容、組織としての対応方法について詳しく解説します。

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・ストレスチェックの法律上の位置づけについて理解したい方
・ストレスチェックの内容について理解したい方
・組織としての対応方法について理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで953社、本社を含め11の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【ストレスチェックの全事業所への義務化】をテーマに取り上げ、法律上の位置づけ、ストレスチェックの内容、組織としての対応方法について詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

法律上の位置づけ

はじめに、ストレスチェック制度の法律上の位置づけについて解説します。ストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に規定されており、正式名称は「心理的な負担の程度を把握するための検査」です。2015年12月の施行以来、常時50人以上の事業所に対して、年1回の実施が義務付けられています。

50人未満の事業所については、これまで努力義務とされてきました。しかし、2025年5月に公布された改正法により、全ての事業所への義務化が決定しています。施行日は、最長で2028年5月までとされています。中小規模の事業所においても、外部委託先の選定や地域産業保健センターとの連携など、早期に準備を進める必要があります。

罰則については、50人以上の事業所が労働基準監督署への報告を怠った場合、50万円以下の罰金が科されます。ただし、罰則以上に注意すべきは民事上のリスクです。労働者がメンタルヘルス不調により休職や命にかかわる事態に至った場合、事業主側にストレスチェックの未実施や高ストレス者への対応不足があると、安全配慮義務違反として損害賠償を命じられる可能性があります。過去の判例では、数千万円から1億円を超える賠償が命じられたケースも存在します。

ストレスチェックの内容

続いて、ストレスチェックの具体的な内容について解説します。ストレスチェックは、事業者が自ら行うものではなく、医師や保健師など、厚生労働省令で定める有資格者による検査が求められます。法律上、ストレスチェックには3つの領域に関する質問を含めることが義務付けられています。

3つの領域に関する質問

1.仕事の量的・質的負担などの「ストレス要因」

2.疲労感や不安感などの「心身の自覚症状」

3.上司や同僚による「サポートの程度」

厚生労働省は、57項目で構成される「職業性ストレス簡易調査票」の使用を推奨しています。

高ストレス者とされた労働者が申し出た場合、医師による面接指導を実施し、必要に応じて就業上の措置を講じる義務があります。なお注意点として、結果は本人の同意なく事業者が取得することはできません。また、同意しないことを理由とした不利益な取り扱いは、法律で禁止されています。

経営の観点からは、集団分析を活用したPDCAサイクルが重要です。まず経営層が関与して体制を構築し、部署ごとの分析結果から高リスク部署を特定します。そのうえで現場ヒアリングを行い、改善策を実施します。翌年のストレスチェックで効果を検証し、施策を修正していくという流れです。

01ストレスチェックPDCA

用語整理

ここで、メンタルヘルスに関する重要な用語を整理します。

感情労働

相手の状態に合わせて自分の感情を抑制しなければならない労働を指します。サービス職はその典型であり、「笑顔を作り続ける」、「怒りや恐怖を飲み込む」などの場面が日常的に発生します。

バーンアウト(燃え尽き症候群)

情緒的消耗感(心の活力がなくなること)、脱人格化(相手に対して思いやりのない、冷淡な態度をとってしまうこと)、個人的達成感の低下(仕事のやりがいや手応えを感じられなくなること)、これら3つの側面で捉えられます。注意すべきは、感情労働そのものではなく、「良い対応をしたいのに構造的にできない」状況が、バーンアウトの引き金になり得るという点です。

プレゼンティーズム

メンタル不調を抱えながら出勤している状態を指します。欠勤など職場を離れている状態を指すアブセンティーズムと対の概念です。プレゼンティーズムは表面上、出勤しているため見落とされやすいですが、仕事の生産性損失は欠勤による損失の約3倍に達するとされています。

このほかに、[セルフケア]とは、労働者自身がストレスに気づき、休養や相談などによって対処すること、[ソーシャルサポート]とは、上司や同僚、家族などからの支援、[タスクシフト]とは、専門職の業務の一部を他の職種に移管し、負担を分散させる手法を指します。

メンタルヘルスケアマネジメント

最後に、組織としてのメンタルヘルスケアマネジメントについて解説します。セルフケアやソーシャルサポートは基本ですが、介護事業を例にとると、主要なストレス源は、人員不足や夜勤不安など、個人の努力だけでは解決できない職場の構造的課題です。したがって、組織として業務構造そのものを見直す必要があります。

とはいえ、人材不足が深刻化する昨今、取り得る選択肢は限定的なものとなります。そこで介護事業を例に、3つの方向性を提案したいと思います。

第一に、DXの導入による負担軽減です。

近年、AIが組み込まれた介護ソフトが普及しつつあります。たとえば、音声入力による記録の自動作成や、介護計画のAI生成支援など、これまで職員が多くの時間を費やしていた書類業務を大幅に短縮できる仕組みが登場しています。業務時間の短縮は、職員の精神的な余裕を生み出し、メンタルヘルスの改善につながることが期待できます。

第二に、タスクシフトの推進です。

介護職が本来のケアに集中できるよう、清掃や物品補充などの周辺業務を他の職種に移管する仕組みが有効です。ある特別養護老人ホームでは、この仕組みにより残業削減や有給取得率の向上につながった事例が報告されています。

第三に、ハラスメント対策の強化です。

とりわけ利用者や家族からのカスタマーハラスメントに対しては、毅然とした対応が求められます。この点、令和8年10月には、カスタマーハラスメント防止措置が法的義務として施行される見込みです。対応方針の策定、相談窓口の整備、対応マニュアルの作成、研修の実施など、今から計画的に準備を進めることが重要です。

まとめ

今回のコラムではストレスチェックの全事業所への義務化について解説しました。法律上の位置づけ、ストレスチェックの内容、組織としての対応方法についてご理解いただけたかと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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