令和6年度介護保険事業者の財務情報公開義務 ただでさえ事務作業に割く余力がないのにこれ以上面倒な作業を増やさないで!
厚生労働省では現在、介護保険事業者に対して財務情報を公開させることを計画しています。すべての介護保険事業者は、令和6年度からはこの制度への対応に追われそうです。この件、実は2つの情報公開制度が密接にリンクしています。今回のコラムでは2つの情報公開制度に触れつつ、今後の対応方法について検討していきたいと思います。
このコラムの推奨対象者
・介護保険事業者に対する財務状況公開義務化の内容を知りたい
・3年に一度の経営実態調査との関係性を知りたい
・どのような内容の財務情報を公開すればよいのか知りたい
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年7月)現在、介護障害福祉事業の累積支援実績592社。介護保険業界、障害福祉業界の制度変更については、常にアンテナを張って情報収集に努めています。
同じ内容を動画でも説明しています。
令和3年度、4年度閣議決定「財務状況の見える化」
1点目は令和3年度、4年度に閣議決定された内容です。介護保険法の隣接法である、社会福祉法、障害者総合支援法に基づくサービスを提供している事業者には、実はすでに財務情報の公開義務が課せられています。具体的には決算情報と活動状況の公開義務です。
「隣接業界でも公開義務があるのだから、介護保険事業者も公開で行こう」
というのが閣議決定の理由なら、あまりに安易すぎますね。
さらに言いますと、決算情報と活動状況の公開に加えて、従業員一人当たりの賃金も公開対象となる見込みです。これは介護保険業界に処遇改善加算として公費が投入されているのが理由であろうと思われます。
多くの介護保険事業者さんが
「ただでさえ事務作業に割く余力がないのに、これ以上面倒な作業を増やさないで!」
というのが本音ではないでしょうか?
3年に一度の実態調査の補完的要素
2点目は経営実態調査です。3年に一度、介護事業経営実態調査というものが実施されます。無作為に事業所が選ばれるアンケートです。
ここで得た介護保険事業者の財務状況や賃金の情報を厚生労働省が分析し、業界の支援策の立案に役立てているのですが
「3年に一度の調査では業界の変化に追いつかないから毎年情報を集めよう」
と変更が予定されているわけです。この制度改正は令和6年に始まり、データベースの構築によって作業の効率化を図るとのことですが、いずれにせよ介護保険事業者にとっては余分な事務負担が増加しそうです。
以上2つの情報公開義務については、統合した1つのシステムで効率的に実施されることを心から望みます。
今後の対応方法
ここまでご説明した通り、令和6年度から全ての介護保険事業者に、財務情報の公開義務が課せられます。現状で特別養護老人ホームや障害福祉サービス事業所に課せられている財務情報の公開義務では、情報公開サイトに決算書類をPDFファイルでアップロードする方法が採用されています。
しかし今回の介護保険事業者に対する財務状況公開については、数値をデータベースに蓄積し、国の施策に迅速に役立てることが目的であるため、決算書類のアップロードではなく、決算書類の中から特定の数値をピックアップし、入力が必要になるのではないかと予測しています。
仮にそのような方策であると、事業者自らが決算書類をある程度理解し、入力対象となる数値情報を選択する必要が生じます。このような部分でも事業者側の事務負担は一定程度増加する可能性があります。
また介護保険事業者には、指定事業ごとに区分して会計処理を行う義務も課せられているため、当社の会計・税務部門でもしっかりと対応の準備を整えていきたいと考えています。
まとめ
以上が「令和6年度介護保険事業者の財務情報公開義務」の内容です。一方的に介護保険事業者に事務作業の負担を強いる流れには反対ですが、今一度自社の会計処理方法について見直しを行う必要がある点、ご理解いただけたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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(電話)0120-60-60-60
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