令和6年度報酬改定【児童発達支援・放課後等デイサービス】第2回テーマ「処遇改善と職員配置関連の加算制度」
令和6年度、児童発達支援・放課後等デイサービスの報酬改定では処遇改善加算の一本化、児童指導員等加配加算の見直し、専門的支援加算と特別支援加算の統合をはじめ、職員配置関連で様々な変更が行われます。福祉起業塾では全3回に分けて令和6年度報酬改定の内容を解説していきます。第2回のテーマは「処遇改善と職員配置関連の加算制度」です。
このコラムの推奨対象者
・処遇改善加算の一本化を正しく理解したい方
・児童指導員等加配加算の見直しに関する知識を整理したい方
・専門的支援加算、特別支援加算の統合についての具体的情報を集めている方
・児童発達支援、放課後等デイサービスの職員配置関連について知りたい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数56名、累積顧客数は北海道から沖縄まで690社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年度児童発達支援・放課後等デイサービス報酬改定のうち「処遇改善と職員配置関連の加算制度」に焦点当てて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
処遇改善加算の一本化
令和6年度処遇改善加算の改正は大きく3つのポイントに分類することができます。
処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の一本化
経験技能ある職員、一般介護福祉職員、その他の職種間の配分ルールの撤廃
月給配分比率の見直し
1つずつ順を追ってご説明します。
3つの処遇改善加算の一本化
処遇改善加算を取り巻く制度は平成24年の制度創設以来、ご覧の変遷をたどったのち、令和6年6月、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算が一本化されます。
現行の処遇改善加算は加算区分Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに、特定処遇改善加算はⅠ、Ⅱに分かれ、ベースアップ加算は取得するか否かの二者択一です。組み合わせは18通りとなります。
これが令和6年6月から、以下の通り集約されます。
旧)処遇Ⅰ、特定Ⅰ、ベアあり → 新加算Ⅰ
旧)処遇Ⅰ、特定Ⅱ、ベアあり → 新加算Ⅱ
旧)処遇Ⅰ、ベアあり → 新加算Ⅲ
旧)処遇Ⅱ、ベアあり → 新加算Ⅳ
18通りある加算のとり方を4通りに集約すると、その間にある14の加算の取り方がどうなるのか、との問題が生じるため、1年間限定で旧14区分が維持されます。児童発達支援、放課後等デイサービスでは全体の加算率が1.7%アップするため、この部分を効果的に賃金改善に充てることができます。
具体的な算定要件を確認しましょう。
新)処遇改善加算の算定要件
新加算Ⅳでは賃金体系の整備と研修の実施、職場環境要件への適合、加算Ⅳの受給額の1/2以上を月給配分することが要件となります。
新加算ⅢではⅣの要件に加え、資格や勤続年数で昇給する制度の導入が求められます。
新加算Ⅱからは現行の特定処遇改善加算の要件が加わります。新加算Ⅲ、Ⅳの要件に加え、改善後の年収が440万円以上となる人が1人以上、職場環境の改善と見える化の実施が必要となります。
新加算ⅠはⅡからⅣの要件に加え、現行の特定処遇改善加算Ⅰの要件である専門有資格者の配置が必要となります。
以上が一本化の概要です。
職種間配分ルールの撤廃
現行の特定処遇改善加算では、職員を(A)経験技能ある介護福祉職員、(B)一般介護福祉職員、(C)その他の職種の3グループに分け、それぞれの配分比率を1:1:0.5以下にすることが求められています。
新加算制度では以下の通り規定されます。
職種間配分ルール
「福祉介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することが望ましいが、現行の処遇改善加算や特定処遇改善加算に見られるような、職種に着目した配分ルールは設けず一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める」
これにより、経営的な目線で賃金制度を再設計することが可能となります。
月給配分比率の見直し
3つ目の改正ポイントです。現行の加算制度では3つの加算それぞれについて、月給または賞与で配分しつつ、ベースアップ等支援加算に限り、2/3以上を月給配分するという要件が定められています。
これが新加算に移行すると、新加算Ⅳに相当する部分の1/2以上を月給配分する必要があります。
図でいうピンクの部分の比較計算を行う必要があるという意味です。要件を満たさない場合、賞与での配分予定額を月給に移す対応が必要となります。
ただし新加算取得以前にベースアップ加算を取得していなかった事業所は旧来の2/3基準もクリアが必要となる点に注意が必要です。
以上が処遇改善加算の一本化です。
児童指導員等加配加算の見直し
理学療法士など専門職による支援の評価は新たに設ける専門的支援加算に移行し、児童指導員等加配加算では児童指導員の配置形態と経験年数により、加算区分に差を設ける改定が行われます。
児童福祉事業に従事した経験年数に応じて、常勤専従の職員を配置する場合、経験5年以上で区分に応じて75~187単位、5年未満で59~152単位常勤換算法で配置する場合、経験5年以上で49~123単位、5年未満で43~107単位となります。
その他の従業員を配置する場合は36~ 90単位です。現行制度が49~123単位であることから、経験と勤務形態に応じ差がつくことになります。
専門的支援加算・特別支援加算の統合
現行制度では、常に見守りが必要な障害児への支援や、障害児の保護者への指導のために、基準人員を超える職員を配置する場合に専門的支援加算が算定でき、計画的支援を行った場合に特別支援加算を算定することができます。これらは併算定ができません。
この2つの加算を統合するのが(新)専門的支援加算です。
専門的支援「体制」加算は基準人員を超える理学療法士等の専門職を配置している場合に区分に応じて49~123単位算定することができます。また専門的支援「実施」加算は理学療法士等の専門職により、個別・集中的な専門的支援を計画的に行った場合に1回150単位を算定することができます。
専門的支援実施加算は専門的支援体制加算と併算定することが可能です。利用回数は児童発達支援で原則月4回、放課後等デイサービスで月2回です。ともに利用日数に応じて最大月6回まで利用することができます。
その他職員配置関連の6つの加算
以下、職員配置関連の6つの加算制度について説明します。
医療連携体制加算(Ⅶ)の見直し
医療的ケア児への支援の促進を図る観点から、医療連携体制加算(Ⅶ)について、現行100単位であるところ250単位に増額改定されます。同時に主として重症心身障害児に対して支援を行う事業所でも算定可能となります。
入浴支援加算の新設
こどもの発達や日常生活、家族を支える観点から、医療的ケア児や重症心身障害児に入浴支援を行った場合、児童発達支援で55単位、放課後等デイサービスで70単位、いずれも月8回を限度とした入浴支援加算が新設されます。
送迎加算の見直し
医療的ケア児や重症心身障害児の送迎について、こどもの医療必要度合いを踏まえ現行の54単位を維持し、重症心身障害児で+40単位、医療的ケア児はスコア16点以上で+80単位、16点未満で+40単位の改定が行われます。
通所自立支援加算(放デイ)
放課後等デイサービスにおいて、こどもの自立に向けた支援を促進する観点から、学校や自宅と事業所間の移動支援に関する通所自立支援加算が新設されます。具体的には、職員が付き添って計画的に支援を行った場合に、算定開始から3カ月を限度として60単位算定できるようになります。
強度行動障害児支援加算
強度行動障害を有する児童への支援を充実させる観点から、強度行動障害支援者養成研修の実践研修を修了した職員を配置し、支援計画を策定・実施した場合、基準20点以上の児童の場合200単位に、放課後等デイサービスに限り30点以上の児童の場合250単位に増額されます。いずれの場合も算定開始から90日間は+500単位算定することができるようになります。
視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算
視覚障害児や重度の聴覚障害児への支援を促進する観点から、意思疎通の専門人材を配置して支援を行った場合、100単位の視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算が設けられます。
まとめ
今回は令和6年度、児童発達支援・放課後等デイサービスの報酬改定のうち、処遇改善加算と職員配置関連の加算制度について解説しました。改定内容を正しく理解し、職員の配置体制の見直しと、処遇改善加算の一本化に伴う賃金制度の改定を検討しましょう。
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【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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