令和6年度報酬改定【児童発達支援・放課後等デイサービス】第1回テーマ「基本報酬の見直しと減算制度」
令和6年度、児童発達支援・放課後等デイサービスの報酬改定では基本報酬区分の大幅な見直し、支援プログラム未公表減算や業務継続計画未策定減算をはじめ様々な減算制度が導入されます。福祉起業塾では全3回に分けて、令和6年度報酬改定の内容を解説していきます。第1回のテーマは「基本報酬の見直しと減算制度」です。
このコラムの推奨対象者
・基本報酬の見直しと減算制度について知りたい方
・児童発達支援・放課後等デイサービスの現状と今後の方向性に関心のある方
・5領域の総合的な支援と事業所のプログラム公表義務の詳細について知りたい方
・報酬算定の基準変更とその影響について正しく理解したい方
・新設される減算制度とその適用条件についての具体的情報を集めている方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年3月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績690社(北海道~沖縄)、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年度児童発達支援・放課後等デイサービス報酬改定のうち「基本報酬の見直しと減算制度」に焦点当てて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
令和6年度報酬改定の全体像
令和6年2月6日、厚生労働省から発表された児童発達支援・放課後等デイサービスの報酬改定内容を見て、その項目数の多さに愕然とされた方も多いことでしょう。児童発達支援、放課後等デイサービスそれぞれで約40項目ありますが、これらを3カテゴリーに整理して分かりやすく解説します。具体的には
「基本報酬の見直しと減算制度」
「処遇改善加算と職員配置関連の加算制度」
「事業所外との連携による加算制度」
以上です。今回ご説明するのは「基本報酬の見直しと減算制度」です。初めに児童発達支援、放課後等デイサービスの事業所数の推移を確認しましょう。
2012年と2022年の10年間で比較すると、児童発達支援は2,106事業所から約5倍の10,447事業所へ、放課後等デイサービスは2,887事業所から約6.6倍の19,269事業所まで急増しています。
両施設に対して給付される障害福祉費もこれに比例して急激に増加しています。なるべく早い段階からサポートを受けることの重要性が、社会的に認識されている結果であると思われますが、利用者の奪い合いに繋がる過度な競争状態に歯止めをかけるため、令和6年度の報酬改定では基本方針の見直しが行われます。
以下の説明の児童発達支援では、センター型ではない一般型の事業所を前提にご説明します。
ピアノ・絵画・運動等のみを教えるサービスへのテコ入れ
ピアノ・絵画・運動等のみを教えるサービスに対するテコ入れが行われます。報酬改定の議論の中では
「ピアノ・絵画・運動等のみを教えるサービスは公費負担による児童発達支援として相応しくない」と明言されました。
「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」
「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」
以上5つの領域、全てを含めた総合的な支援が必要であると、運営基準に明記されたわけです。これに関連して、児童発達支援管理責任者が作成する支援計画の中にも、事業所が提供するサービスが、この5つの領域とどのような関連性があるのかを盛り込む義務が定められました。
つまりピアノ・絵画・運動などをプログラムに取り込んでいる場合に、5つの領域との関連性について、事業所側に説明責任が生じるという趣旨です。
ここで説明した5つの領域については、事業所の支援プログラムの中にも組み込み、インターネット等を通じて公表する義務が生じます。支援プログラム未公表の事業所には、1年間の経過措置期間を経て、令和7年4月1日以降、15%の支援プログラム未公表減算が新たに適用されます。
さらに児童発達支援、放課後等デイサービス事業所の質の改善を促すため、事業所の従業員、保護者による評価を受けた上で、事業所自らの自己評価、改善方針を保護者に示し公表する義務が生じます。令和6年度の段階では、この公表義務についての未実施減算は適用されていません。
基本報酬の改定
重症心身障害児以外の基本報酬
重症心身障害児以外の基本報酬は、30分未満の短時間の支援は算定対象から除外され、個別支援計画に定めた個々の利用者の支援時間に応じた算定方法に移行します。
具体的には「30分以上1.5時間以下」、「1.5時間超3時間以下」、「3時間超5時間以下」の3区分です。放課後等デイサービスにおける「3時間超5時間以下」の区分は学校休業日のみ算定可能です。
時間区分は個別支援計画に定めた支援時間で判定しますが、事業所都合で支援時間が短くなった場合は、実支援時間での判定となります。
これらの時間を超える長時間の支援については、延長支援加算の見直しにより評価されます。現行の延長支援加算は、営業時間8時間超過で算定できますが、改定後は最長の時間区分超過で算定する方式に移行します。
延長時間区分では「1時間以上2時間未満」、「2時間以上」の加算単位数をそのままに「1時間未満」がなくなります。新たに設けられる「30分以上1時間未満」の区分は利用者都合で延長時間が短縮された場合に限り算定可能となります。延長支援の人員配置は現行1名以上とされているところ、2名以上に変更されますが、これには児発管も含むことができます。
基本報酬の算定が、個別支援計画に定める個々の利用者の支援時間に基づく形に移行するため、時間管理について事業所側の裁量が効かなくなる点に注意が必要です。
なお放課後等デイサービスにおいて、児童の体調不良により30分未満のサービスとなる場合の欠席時対応加算(Ⅱ)は廃止されます。
重症心身障害児に関する基本報酬
重症心身障害児に関する基本報酬は、支援促進の観点から定員による報酬区分が1人単位刻みから3人単位刻みに変更されます。
具体的には定員5人から7人、8人から10人、11人以上の3区分となります。これにより例えば定員6人、7人、9人、10人の事業所は1つ上の区分に吸収されるため、純粋に報酬単位数がアップすることになります。
4つの減算制度
ここでは令和6年度報酬改定に伴い、新たに設けられる減算制度を含め、4つの減算制度について説明します。
虐待防止措置未実施減算
虐待防止措置は令和6年3月以前は努力義務、4月以降完全義務化となり、次の3つの基準を満たさない場合に、基準違反となり1%の減算が適用されます。3つの基準とは、
①検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
②虐待防止研修の定期実施
③虐待防止担当者配置
以上となります。
身体拘束廃止未実施減算の見直し
身体拘束については、児童又は他の児童の生命又は身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限り、その理由と実施状況を記録する場合に限り行うことができますが、次の3つの措置を講じていない場合に基準違反となり減算が生じます。3つの措置とは、
①検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
②身体拘束等適正化のための指針の整備
③身体拘束等適正化研修の定期実施
以上となります。令和5年度までは身体拘束廃止未実施減算が1日5単位であったところ、令和6年度報酬改定では1%に改められます。
BCP(業務継続計画)未策定減算
BCPについては、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。未策定の場合、基準違反となり1%の減算が適用されます。
令和7年3月31日までに限り、感染症対策マニュアルと非常時災害マニュアルを作成している場合、減算適用が免除されます。BCP対応がまだの方は、一度当社までご相談ください。
情報公表未報告減算
利用者への情報公表、災害発生時の迅速な情報共有、財務状況の見える化の推進を図る観点から、WAMNET(障害福祉サービス等情報公表システム)へ未報告となっている事業所に対する5%の「情報公表未報告減算」が適用されます。
また指定更新の申請を行う際にも、この報告の確認がなされるため、対処を急ぎましょう。
まとめ
今回は令和6年度、児童発達支援・放課後等デイサービスの報酬改定のうち、基本報酬の見直しと減算制度について説明しました。改定内容を正しく理解して、事業所運営の適正化を図りましょう。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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