■限定承認の概要

1.限定承認はどのように進めるか

限定承認は、被相続人の財産の範囲で債務を承継するという制度です。

相続財産が多岐に渡ったり、また全貌が不明であるため、プラスになるのかマイナスになるのか分からないようなケースで使います。

ポイントとなるのは、

①相続人全員で行う

②そのため、相続人の一部に「熟慮期間」が終了した場合、一部の相続人に「熟慮期間」が残っていても、もはや限定承認できない

という点です。

2.限定承認の精算手続き

限定承認後は次の手続きを踏みます。

①限定承認をしたことを公告し、債権者に「権利を主張してください」と申し出る。
②優先的に支払うべき権利を持っている債権者から順に弁済する。

自己破産の考え方に似ています。

■限定承認では課税関係で落とし穴が

1.限定承認が最も合理的なのか?

一見、非常に合理的に見える限定承認ですが、課税関係で落とし穴があります。

限定承認を選択した時、被相続人から相続人に「財産の譲渡」が行われたとみなされ、「被相続人に」譲渡所得税が課税される点です。

例えば不動産の値上がり益などが大きなインパクトを持ちます。

以下、少し複雑な説明が続くため、整理のため番号を振ります。

2.限定承認の含み益課税

①限定承認は「財産の譲渡」とみなすため、譲渡所得税は、「譲渡した側=被相続人」に課税されます。つまりこの時点で、「含み益」に課税がされるわけです。

②譲渡所得税は、死亡後4ヶ月以内に申告すべき「準確定申告」によって納税します。

③準確定申告により生じる(譲渡)所得税は、相続財産としては負債です。

④限定承認をしている場合、相続人の負債の負担は、財産の範囲に限られます。譲渡所得税も「財産がある範囲」で納税すればよいため、一見問題がなさそうに見えます。

⑤しかし、仮に財産が負債を上回っているのに限定承認をしてしまうと、上記のような「含み益」の分の所得税を余分に収めることになってしまいます。

⑥本来であれば、不動産を相続した相続人が、将来売却するときに課税されるべき不動産の含み益が、相続時点で課税されてしまう、というわけです。