【令和4年10月開始 ベースアップ等支援加算 入門編】処遇改善加算額を拡充|収入を3%(月額9000円相当)引き上げへ
令和4年10月の介護報酬改定により、処遇改善加算分野のベースアップ等支援加算が新設されることになりました。ベースアップ等支援加算はこれまでの処遇改善加算、特定処遇改善加算に次ぐ、介護障害福祉職員に対する処遇改善の第三弾と言えます。今回のコラムは入門編と題し、ベースアップ等支援加算の概要について解説します。
「読むのは苦手」と言う方は動画をどうぞ。
このコラムの推奨対象者
・令和4年10月開始のベースアップ等支援加算を自社でも導入したい人
・とにかく急いで(5分で)ベースアップ等支援加算の概要を理解したい人
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和4年7月)現在、介護障害福祉事業の累積設立支援実績484社。多くの顧問先から「令和4年開始の介護職員処遇改善ベースアップ等支援加算」についてご質問を受けています。このコラムは政府発表に基づきながらも、当社の見解も含めて分かりやすく執筆しています。
この入門編を読み終わったら実践編へ進みましょう。
- 1. ベースアップ等支援加算ができるまでの流れ
- 1.1. 平成24年度(制度創設)
- 1.2. 平成(改正)27年度
- 1.3. 平成29年度(改正)
- 1.4. 平成30年度(改正)
- 1.5. 令和元年10月(特定処遇創設)
- 1.6. 令和4年10月(ベースアップ等支援加算創設)
- 2. ベースアップ等支援加算の届出期限
- 3. ベースアップ等支援加算を取得するための5つの要件
- 3.1. ベースアップ等支援加算額を超える賃金改善を
- 3.2. 賃金改善額の3分の2以上を基本給又は毎月決まって支払われる手当の増額に
- 3.3. 賃金改善を行う項目を就業規則に記載
- 3.4. 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定
- 3.5. ベースアップ支援加算を含む処遇改善計画内容を全ての職員に対して周知
- 4. 実際の加算率
- 5. ベースアップ等支援加算 入門編のまとめ
ベースアップ等支援加算ができるまでの流れ
令和4年10月の介護報酬改定により、処遇改善加算分野のベースアップ等支援加算が新設されることになりました。初めに介護障害福祉職員に対する処遇改善加算の歴史を振り返りましょう。
平成24年度(制度創設)
前年度まで交付金として支給されていた処遇改善費が、介護報酬の一部に組み込まれ、処遇改善加算制度が創設されました。
平成(改正)27年度
介護職員のキャリア形成の向上を目的として、処遇改善加算が拡充されました。
平成29年度(改正)
賃金制度の整備、キャリアアップと昇給の結びつきを促進する目的で処遇改善加算がさらに拡充されました。
平成30年度(改正)
処遇改善加算区分(Ⅳ)(V)が「要件を満たさない事業所」と位置付けられ、一定期間経過後に廃止することが決定されました。処遇改善加算を取得する介護事業所の大半が加算区分(Ⅰ)~(Ⅲ)を算定して当時の現状を踏まえたものです。
令和元年10月(特定処遇創設)
特定処遇改善加算制度が創設されることにより、経験・技能ある介護職員(いわゆる10年キャリアの介護福祉士)に重点的に加算額を配分可能となりました。また介護職員以外の職種にも配分可能となりました。
令和4年10月(ベースアップ等支援加算創設)
毎月決まって支給される賃金の改善(ベースアップ)を目的とした、ベースアップ等支援加算が創設されました。今回のコラムのテーマです。
ベースアップ等支援加算の届出期限
ベースアップ等支援加算に限らず、処遇改善加算に関する届出は、加算を取得しようとする月の前々月の末日までに指定権者(都道府県または市町村)に提出する必要があります。
従って、令和4年10月の制度創設からベースアップ等支援加算を取得する場合、令和4年8月31日までに届出書を提出する必要があります。ただし自治体により期限の取り扱いには若干の差が生じる可能性がありますのでご留意下さい。
ベースアップ等支援加算を取得するための5つの要件
ここではベースアップ等支援加算を取得するために必要となる5つの要件について解説します。なおここでのご説明以外にも加算要件はありますが、当社の判断で重要と思われる項目をピックアップしています。
ベースアップ等支援加算額を超える賃金改善を
ベースアップ等支援加算を取得するための1つ目の要件として、受給する加算額を超える賃金改善を行うことが必要となります。この要件は処遇改善加算、特定処遇改善加算と同様に、処遇改善加算の根幹となるものです。
なお処遇改善加算、特定処遇改善加算と同様に、加算額<賃金改善額の判定は単月ごとに行うのではなく、対象期間の総合計で行います。つまり、ベースアップ等支援加算の創設期においては令和4年10月~令和5年3月のサービス提供見込報酬に加算率を掛けてベースアップ等支援加算見込額を計算し、その見込額を上回る賃金改善を同期間で行うというものです。
加算額がサービス提供月から2カ月遅れで入金されることから、実際の賃金改善期間を2カ月遅れ、つまり12月~5月とすることも可能です。この措置はこれまでの処遇改善加算に関する通達から推測して記述しています。
賃金改善額の3分の2以上を基本給又は毎月決まって支払われる手当の増額に
ベースアップ等支援加算を取得するための2つ目の要件として、賃金改善額の3分の2以上を基本給又は毎月決まって支払われる手当の増額に充てることが必要となります。ここで言う「基本給又は毎月決まって支払われる手当の増額」のことをベースアップと表現しています。
ベースアップ等支援加算は介護職員ではない、いわゆるその他職員(例:事務員)に対しても割り当てることができます。この場合、介護職員およびその他職員それぞれの賃金改善額の3分の2(66.7%)以上を、ベースアップに充てる必要がある点に注意しましょう。具体的な改善例を表で示します。
職種 | 賃金改善額 | うちベースアップ額 | ベースアップ比率 |
介護職員 | 370万円 | 259万円 | 70.0% |
その他の職員 | 82万円 | 59万円 | 71.9% |
この改善例では、介護職員およびその他の職員それぞれのベースアップ比率が66.7%を超えているため要件を満たしていることになります。なおベースアップ以外の額は、例えば変動する各種手当や賞与として支給して大丈夫です。
賃金改善を行う項目を就業規則に記載
ベースアップ等支援加算を取得するための3つ目の要件として、賃金改善を行う項目を特定し、就業規則等に記載する必要があります。
基本給による改善を行う場合は新旧の基本給表を明確にした上で増額します。一方、基本給以外の必ず支給される手当で改善を行う場合は就業規則に賃金項目と金額を明示します。名称についての定めはないため、ベースアップ等支援加算の対象賃金であることが判別できれば大丈夫です。
例えば「R4新加算手当」とし、勤続年数や職位によって異なる金額を表に記載しても大丈夫です。尚、就業規則の別紙の扱いで賃金規定が存在する場合、賃金規定を変更する必要があります。
処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定
ベースアップ等支援加算を取得するための4つ目の要件として、処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを算定している必要があります。これは特定処遇改善加算を取得する場合にも同様に課せられている要件です。要するに、ベースアップ等支援加算は、土台となる処遇改善加算に対する2階建て部分に該当するという意味です。
なおベースアップ等支援加算を取得する時点で、処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれも取得していない場合、同時に処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得する計画届を提出することでこの要件を満たすことも可能です。
ベースアップ支援加算を含む処遇改善計画内容を全ての職員に対して周知
ベースアップ等支援加算を取得するための5つ目の要件として、ここまで説明したベースアップ支援加算を含む処遇改善計画内容を、全ての職員に対して周知する必要があります。主な周知内容を整理すると次のようになります。
①行政庁に提出する計画届の内容
②ベースアップ内容が記載されている就業規則
これらを全ての職員に周知する必要がある点に注意しましょう。
実際の加算率
最後にベースアップ等支援加算の加算率について一覧表でお示しします。(主要事業抜粋)
サービス区分 | 加算率 |
訪問介護 | 2.4% |
通所介護 | 1.1% |
居宅介護 | 4.5% |
重度訪問介護 | 4.5% |
同行援護 | 4.5% |
行動援護 | 4.5% |
生活介護 | 1.1% |
短期入所 | 2.8% |
自立訓練(機能・生活) | 1.8% |
就労移行支援 | 1.3% |
就労継続支援A型 | 1.3% |
就労継続支援B型 | 1.3% |
共同生活援助 | 2.6% |
児童発達支援 | 2.0% |
放課後等デイサービス | 2.0% |
ベースアップ等支援加算 入門編のまとめ
今回のコラムでは「ベースアップ等支援加算 入門編」と題して制度の概要について解説しました。計画策定の手順としては、
①加算見込額を計算
②それに見合ったベースアップ額を計算(3分の2ルールあり)
以上が重要となります。
ベースアップ額は固定費の増大につながるため、①加算見込額を適切に計算することが第一歩となります。実践編では実際の計画書の作成について解説します。
処遇改善加算でお困りの場合は是非当事務所までご相談ください。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
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