令和3年度障害福祉サービス報酬改定 就労継続支援A型は事業所自体をスコア評価の仕組みに変更

令和3年度障害福祉サービス報酬改定 就労継続支援A型をスコア評価
井ノ上剛(社労士・行政書士)

令和3年度障害福祉サービス報酬改定で就労継続支援A型の基本報酬算定では、事業所自体を総合的に評価するスコア評価方式が採用されました。基本報酬の算定にスコア評価が行われるのは、介護障害福祉分野では就労継続支援A型だけです。このコラムでは障害福祉サービス専門の社労士・行政書士が就労継続支援A型に関する令和3年報酬改定を詳しく解説します。

このコラムの推奨対象者

・就労継続支援A型 基本報酬の変遷を理解したい方
・平成29年度 就A制度の大転換を理解したい方
・就A事業所のスコア評価5つの指標を理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した合同法務事務所です。このコラムのリライト(更新)時である、令和3年8月時点、これまでに設立支援した介護障害福祉事業件数が、累積400社を突破。日々の開業相談の中で、令和3年就労継続支援A型の報酬改定についても数多くご対応しています。安心してお読み下さい。

就労継続支援A型 基本報酬の変遷

就労継続支援A型(以下就A)は、一般就労が困難な障害者を雇用契約で雇い入れ、就労をサポートする福祉サービスです。

他の障害福祉サービスと異なり、原則として雇用契約の締結が必要となるため、利用者たる障害者は当然に労働社会保険法令の適用を受けます。

令和3年度障害福祉サービス報酬改定では、就A事業所の基本報酬の算定のために、就A事業所自体を200点満点のスコア評価で優劣を付ける手法が導入されました。

事業所自体にスコアを付け、そのスコア結果により基本報酬に差を設ける手法は、数ある介護障害福祉分野の事業の中でも初の試みです。なぜこのような評価手法が用いられることになったか、過去数年間の就Aを取り巻く制度の変遷を追ってみましょう。

年度

基本報酬算定法

備考

H24(2012)

定員別

短時間利用者に対する減算(90%または70%) 

H27(2015)

上記減算をさらに強化(90%~30%)

H29(2017)

生産活動収支>利用者賃金を厳格化

H30(2018)

定員・利用時間の二軸

 

R3(2021)

定員・スコア評価の二軸

 

先に述べたとおり、就Aの利用者は労働者としての側面を持つため、労働社会保険法令、最低賃金法が当然に適用されます。例えば就A事業所の所定労働時間が1日7時間、週5日の場合、最低月給は概ね14万円となります。就A事業所としては、なるべく利用者の労働時間を短くし、月給負担を少なく済ませようとの意図が働いていたわけです。

このような就A事業所側の方策は、短時間利用者に対する減算措置の強化という方法で抑制されてきました。短時間労働の場合、基本報酬に減算がかかるという自動抑制装置です。

平成30年(2018年)の報酬改定では短時間利用者に対する減算措置が廃止された一方、前年度の事業所の平均労働時間が、次年度の基本報酬全体に影響を及ぼす制度に変更された点が特徴的でした。

令和3年度(2021年)の報酬改定で採用されたスコア評価は、これまでの考え方を踏襲しつつ、さらに多面的に就A事業所を評価しようとの厚生労働省の強い姿勢の表れであると言えます。

平成29年度 就A制度の大転換

令和3年度報酬改定の説明に入る前に、平成29年(2017年)の就A制度大転換について、改めて確認しておきましょう。この大転換は令和3年(2021年)報酬改定にも大きな影響を及ぼしているためです。

平成29年の基準改正では、就A事業所が総量規制の対象とされました。総量規制とはつまり、各自治体における障害福祉サービスの必要事業所数が確保できている場合に、以後事業所の新規指定(営業許可)を行わない、という仕組みです。これは就A事業所の過当競争、品質の低下を抑えるための方策です。

さらに平成29年の基準改正では、「生産活動収支>利用者賃金」を厳格化する方針が打ち立てられ、指定基準にも追記されました。

この背景には、就A利用者に対して付加価値を生まない内職作業しか行わせず、福祉給付費によって利用者賃金を賄っているケースが散見されたという事情があります。このような状態を避けるために、指定申請の際に収支計画書およびそれを裏付ける取引先との契約書の添付が義務付けられ、開業6カ月をめどに実地指導が行われるという異例の事態に発展しました。

当然ながら、当初の収支計画通りに運営ができていない場合、改善命令または指定取消措置が取られることになりました。

>>就A事業所の生産活動収支、事業計画の詳細はこちら

令和3年報酬改定で就Aますます困難に

このような背景のもと、令和3年度障害福祉サービス報酬改定で、就労継続支援A型事業の基本報酬に、「スコア評価方式」という目新しい手法が用いられることになりました。

端的に言うと、就A事業所自体を5分野200点満点の評価指標でスコア化し、その事業所の利用定員別にスコアに応じた基本報酬を算定する、という仕組みです。

定員20人以下の就A事業所を例にとると、基本報酬は下表の通りとなります。。

評価点

基本報酬(単位)

170以上

724

150以上170未満

692

130以上150未満

676

105以上130未満

655

80以上105未満

527

60以上80未満

413

60未満

319

スコア評価は「前年度の実績」により4月1日時点で評価するため、新規指定を受けた事業所の初年度、および年度途中に指定を受けた事業所の初年度と2年度目は「80以上105未満」とみなす特例措置が取られています。

就A事業所のスコア評価5つの指標

最後に、就A事業所のスコア評価に用いられる5つの評価指標について解説します。

就Aの基本報酬を左右する5つの評価指標とは次の表の通りです。

5つの評価指標

内容

200点内訳

労働時間

短時間労働になっていないか

80

生産活動

生産活動>利用者賃金となっているか

40

多様な働き方

利用者が働きやすい職場環境か

35

支援力向上のための取組

事業所自体の支援体制は万全か

35

地域連携活動

地域の企業・団体と交流しているか

10

それぞれの詳細説明については表にリンクを貼っているので、ご参照下さい。

まとめ

以上が令和3年度障害福祉サービス報酬改定における就労継続支援A型のスコア評価の概要です。これまで議論されてきた、労働時間の確保、生産活動収支の確保が基本報酬に直接影響するとともに、新たに利用者の定着、職員のスキルアップに資する事業所づくりへの取り組みが基本報酬算定指標として加わりました。

今回の報酬改定は就A業界に大きなインパクトをもたらすものでしたが、過去10年間に渡って議論されてきた「就労継続支援A型事業の適正化問題」に一応の終止符が打たれたものであると理解しています。

就Aスコア評価5つの指標は、以下の3部作で詳細解説しているので是非ご参照下さい。

就労継続支援A型 令和3年報酬改定 3部作

介護保険法改正編
就労継続支援A型スコア評価3部作その壱「労働時間、生産活動、地域連携活動」
就労継続支援A型スコア評価3部作その①「労働時間、生産活動、地域連携活動」を徹底解説
介護保険法改正編
就労継続支援A型スコア評価3部作その弐「多様な働き方」では8項目中5項目選択して評価
就労継続支援A型スコア評価3部作その②「多様な働き方」では8項目中5項目選択して評価
介護保険法改正編
就労継続支援A型スコア評価3部作その参「支援力向上のための取組」では8項目中5項目選択し評価
就労継続支援A型スコア評価3部作その③「支援力向上のための取組」では8項目中5項目選択して評価

>>厚生労働所公式 令和3年度障害福祉サービス報酬改定はこちら

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