就労継続支援A型の事業計画(収支計画)では、作業所利益が利用者(障害者)賃金を上回るように|就A指定申請
障害者を雇用契約で受け入れる福祉サービス、就労継続支援A型。指定申請の際には、綿密な事業計画(収支計画)の提出が求められ、事業計画(収支計画)の完成度が、指定申請の結果に大きく影響を及ぼします。このコラムでは就労継続支援A型の事業計画(収支計画)の作成について、障害者総合支援法の専門家が詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・平成29年4月就労継続支援A型の指定基準の変更点を理解したい方
・就労継続支援A型の新規指定時に必要な事業計画(収支計画)を理解したい方
・就労継続支援A型事業所に対する実地指導の仕組みを理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した合同法務事務所です。このコラムのリライト(更新)時である、令和3年9月時点、これまでに設立支援した介護障害福祉事業件数が、累積400社を突破。日々の開業相談の中で、就労継続支援A型事業の事業計画(収支計画)についても数多くご対応しています。安心してお読み下さい。
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就労継続支援A型とは?
就労継続支援A型は、一般就労が困難な障害者を雇用契約で雇い入れ、就労をサポートする福祉サービスです。事業所は行政庁から営業許可(指定)を得る必要があり、利用者は在住自治体から利用決定を受ける必要があります。
他の障害福祉サービスと異なり、原則として雇用契約の締結が必要となるため、利用者(障害者)は当然に最低賃金、労働時間をはじめとする労働社会保険法令の適用を受けます。
就労継続支援A型事業の指定基準が厳しくなった背景
A型事業所の本来のあり方
就労継続支援A型事業の利用者賃金については、基準省令第192条で次の通り規定されています。
《基準省令第192条第2項(意訳)》
就労継続支援A型事業者は、生産活動に係る事業の収入から必要経費を差し引いた額(利益)が、利用者に支払う賃金総額以上となるようにしなければならない。
つまり福祉作業所であるA型事業所で稼ぎ出す利益によって、利用者(障害者)に賃金を支払わねばならない、との当然の規定です。しかし過去に、この規定が守られない事例が頻発していたのです。
指摘された違反事例
基準省令192条第2項を、記号で表すと以下の通りとなります。
基準省令192条第2項
(ア)作業所の利益 > (イ)利用者(障害者)の賃金
ここで言う(ア)を算出するにおいては、
行政庁から支給される福祉サービス費(+)
支援職員の賃金(-)
を計算に入れません。つまり利用者(障害者)の生産活動で稼ぎ出す純粋な利益のみによって利用者(障害者)の賃金を工面しなければならないとの趣旨です。違反事例では、
行政庁から支給される福祉サービス費(+)
支援職員の賃金(-)
を(ア)に加えた結果により、(イ)を支払っていました。
このような違反事例では、作業所本来の仕事では利益がほとんど上がらず、利用者(障害者)は生産性の乏しい作業に終始していたのです。平成29年4月の指定基準厳格化の目的は、これらの違反事例を排除することにありました。
新規指定開業の際の事業計画(収支計画)の仕組み
平成29年4月以降に新規に指定を受けて開業する就労継続支援A型事業所においては、指定申請の際に、
(ア)作業所の利益 > (イ)利用者(障害者)の賃金
を示す事業計画書の提出が義務付けられました。
自治体により対応方針は若干異なるが、多くは指定申請の前段階に置かれる「事前協議」の段階で、事業計画書の提出を義務付けています。
さらに事業計画書がお手盛り(架空)ではないことを証明するために、売上先(委託元)との契約書案の提出を義務付ける自治体もあります。
以下、事業計画書作成の基本的な考え方をお示しします。
売上計算根拠
S製品の製造に2時間かかり、売値は5,000円
→ 1日6時間通所で 5,000円×3個=15,000円
→ 平均10名、20日通所で 15,000円×10名×20日=300万円
→ 12月換算で 300万円×12カ月=3600万円・・・・A
(年間販売 5,000円×7,200個以上の契約書が必要)
費用計算根拠
S製品の原材料仕入高 1440万円(2,000円×7,200個)
家賃・水道光熱費 360万円(30万円×12カ月)
消耗品その他 120万円(10万円×12カ月)
合計 1920万円・・・・B
A-B=1680万円・・・C
利用者賃金計算根拠
日給平均6000円×10名×20日×12月=1440万円・・・D
C 1680万円 > D 1440万円
となり事業計画書が指定基準を満たすことになります。
就労継続支援A型に対する実地指導
以上の通り、就労継続支援A型では指定申請の段階で事業計画の提出を求められるため、指定(開業)から半年後を目途に実地指導が行われ、生産活動が事業計画に沿った内容であるかどうかの確認がなされます。
ここで指定基準に違反する場合は、勧告・命令・指定停止・指定取消の措置が行われます。
しかしながら、開業当初は初期費用の多大な負担のため、計画を下回る財務状況に陥ることも考えられることから、今後収益改善が確実だと認められる場合には、経営改善計画書を作成し、1年間の猶予期間が設定される場合があります。
当然その1年後には再度実態調査が行われることに留意しましょう。
このコラムのまとめ
以上が就労継続支援A型 新規指定開業の際の事業計画(収支計画)の作成のポイントです。
他の福祉サービスと異なり、事業計画の内容によっては、行政庁から指定拒否される可能性がある点を理解しておきましょう。さらに指定申請を受けた場合でも、厳しい実態調査が続く点にも留意しましょう。
就労継続支援A型の設立開業をお考えの際、または事業計画策定でお困りの際は、当事務所の無料相談のご利用をお勧めします。
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【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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