介護事業所の【みなし指定】とは?介護保険法と健康保険法それぞれのみなし指定制度を解説!介護事業起業者のための開業講座⑤
近い将来、介護保険事業の立ち上げを考えておられる方に向けて「介護事業起業者のための開業講座」と題して、連載企画をお届けします。第5回のテーマは「みなし指定」です。介護保険法または健康保険法のどちらかで、事業所の指定を受けた場合、もう片方の法令でも指定があったものとみなされる「みなし指定制度」について詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・「みなし指定」の意味を理解したい方
・「みなし指定」の具体例を理解したい方
・健康保険法と介護保険法、相互の「みなし指定」を理解したい方
・介護保険法内の「みなし指定」を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数68名、累積顧客数は北海道から沖縄まで750社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは介護保険法または健康保険法のどちらかで、事業所の指定を受けた場合、もう片方の法令でも指定があったものとみなされる「みなし指定制度」について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
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みなし指定とは?
前回の開業講座コラムでは、介護事業所の「指定」について解説しました。
簡単に復習しますと、「指定」とは「ある行為をするために、行政庁から資格を得ること」を言います。訪問看護事業の場合、「ある行為」とは「保険給付の対象となる訪問看護サービスを利用者に提供し、保険者に対して保険請求を行う」ことを指します。
指定を得るためには、原則として行政庁に対して指定申請書類を提出し、その審査を受ける必要がありますが、指定申請をしなくても「指定があったものとみなす」例外的な制度があります。それが「みなし指定」制度です。今回は「みなし指定」制度について、深掘りしたいと思います。
みなし指定の具体例
「みなし指定」の具体例として、引き続き訪問看護を取り上げます。訪問看護とは、療養中の方の自宅を看護師等が訪問し、その方の療養上のお世話をする保険給付サービスです。
利用者が介護保険を使う場合、事業者側は介護保険法第70条に基づく訪問看護事業所の「指定」を受ける必要があります。一方で、利用者が医療保険を使う場合、事業者側は健康保険法第89条に基づく訪問看護事業所の「指定」を受ける必要があります。
利用者が使う保険の違いによって、介護保険法・健康保険法それぞれの指定申請と審査が必要となると、事業所側にも行政庁側にも大きな負担がかかります。この煩雑さを解消するのが「みなし指定」の制度です。
健康保険法第89条2項、介護保険法第71条では、「それぞれ対になる指定を受けている場合、こちら側でも指定があったものとみなしますよ」との例外が定められています。これが「みなし指定」の制度です。「みなし指定」の制度によって、煩雑な指定申請と審査を省略することができるわけです。
介護保険法側で指定があった場合に、健康保険法側で「みなし指定」が発生するのは、ここで解説した訪問看護に限ります。その逆、つまり健康保険法側で指定があった場合に、介護保険法側で「みなし指定」が発生するケースについて解説を続けます。
健康保険法側で指定があった場合の介護保険法側での「みなし指定」
健康保険法側で、病院・診療所としての指定があった場合、介護保険法側では訪問看護、訪問リハ、通所リハ、居宅療養管理指導、短期入所療養介護の「みなし指定」が生じます。
同じく健康保険法側で、保険薬局としての指定があった場合、介護保険法側では居宅療養管理指導のみ「みなし指定」が生じます。
介護保険法内の「みなし指定」
観点が異なりますが、同じ介護保険法の中でも、介護老人保健施設(通称:老健)または介護医療院の開設許可があった場合、訪問リハ、通所リハ、短期入所療養介護の「みなし指定」が生じます。この場合の訪問リハの「みなし指定」については、令和6年6月の法改正で新たに加わったものです。
このように、「みなし指定」制度で指定申請と審査を省略することで、事業所側、行政庁側それぞれの業務の効率化を図っているわけです。
まとめ
介護事業起業者のための開業講座、第5回では「みなし指定制度」について詳しく解説しました。介護保険法または健康保険法のどちらかで指定を受けた場合、もう片方の指定があったものとみなされる仕組みをご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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