ケアマネジメントのプロセス|インテーク、アセスメント、サービス担当者会議、モニタリング|介護事業起業者のための開業講座⑦
近い将来、介護保険事業の立ち上げを考えておられる方に向けて「介護事業起業者のための開業講座」と題して、連載企画をお届けします。第7回のテーマは「ケアマネジメントのプロセス」です。インテーク、アセスメント、ケアプラン原案作成、サービス担当者会議、モニタリングなど、ケアマネジメントのプロセスについて詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・ケアマネジメントプロセスの全体像を理解したい方
・アセスメント、モニタリングの手法を理解したい方
・23項目の「課題分析標準項目」のエクセル版を探している方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数68名、累積顧客数は北海道から沖縄まで754社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムではインテーク、アセスメント、ケアプラン原案作成、サービス担当者会議、モニタリングなど、ケアマネジメントのプロセスについて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
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ケアマネジメントプロセスの全体像
初めに、このコラムで使用する通称について説明します。このコラムでは、介護支援専門員のことを「ケアマネジャー」、居宅サービス計画のことを「ケアプラン」、居宅介護支援事業者のことを「ケアプランセンター」と通称で呼びます。
ケアマネジャーの業務は、単にケアプランを作成するだけにとどまらず、実際の介護サービスが計画通りに行われているかを確認する作業までが含まれます。具体的にはインテーク、アセスメント、ケアプラン原案の作成、サービス担当者会議、サービス提供、モニタリングとなります。
運営基準第13条には「具体的取扱方針」として合計27項目に渡って詳細の記載があり、これら一連の業務のことを総称して、ケアマネジメントプロセスと呼びます。詳しく見ていきましょう。
インテーク(初回コンタクト)
第1段階はインテークです。介護業界で用いるインテークとは初回のコンタクトのことであり、要介護認定者がケアプランセンターのケアマネジャーにコンタクトを取り、相互の顔合わせを行うことを言います。
ケアマネジャーは契約書と重要事項説明書について説明し、問題なければ契約書を締結し、次のステップへ進みます。
アセスメント(課題分析)
第2段階はアセスメントです。介護業界で用いるアセスメントとは、介護サービス利用者の課題分析のことを指します。運営基準解釈通知では、ケアマネジャーの個人的な考え方や手法によらず、課題を客観的に評価するために、23項目に渡る「課題分析標準項目」が示されています。内容を見ていきましょう。
23項目の「課題分析標準項目」は1番から9番までの「基本情報に関する項目」と、10番から23番までの「アセスメントに関する項目」に大分類されています。
例えば1番の「基本情報」では、受付日時、氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、家族情報などを記載します。また、10番の「健康状態」では、利用者の身長、体重、血圧、既往歴、かかりつけ医、かかりつけ薬局などを記載します。
これら23項目のアセスメントは、利用者が入院中である場合等を除き、利用者の居宅を訪問し、利用者と家族に面接して実施する必要があります。また、その記録は2年間の保存義務があります。
>>23項目の課題分析標準項目(エクセル版)のダウンロードはこちら
ケアプラン原案の作成
第3段階はケアプラン原案の作成です。
ここでは厚生労働省の様式に沿って、ケアプランの概要を見ていきたいと思います。様式は第1表から第7表まで例示されていますが、第4表と5表を除く、合計5つの様式がケアプランに該当します。これらはあくまでも標準例に過ぎず、これ以外の様式のケアプランであっても支障ないとされています。
>>ケアプラン厚生労働省様式(PDF版)のダウンロードはこちら
第1表では、利用者の個人情報に加えて、利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果、介護認定審査会の意見及びサービスの種類の指定、総合的な援助の方針、生活援助中心型の算定理由を記載します。
第2表では、生活全般の解決すべき課題(ニーズ)について、利用者側の長期目標と短期目標およびその期間、それに対応する援助内容をサービス内容、保険対象か否か、サービス種別、提供事業所、頻度、期間について記載します。
第3表では、第2表で記載した援助内容に基づき、時間軸と曜日軸に分けて、提供するサービス、および週単位以外のサービスについて記載します。
第6表は1カ月単位で作成するサービス利用票です。サービスの提供時間帯、サービス内容、サービス提供事業者名を記載し、1カ月間のサービス計画と実績を記載します。
第7表は第6表の別表扱いです。サービス内容ごとに、区分支給限度管理と利用者負担額の計算、種類支給限度管理、要介護認定期間中の短期入所利用日数等を記載します。
>>ケアプラン厚生労働省様式(PDF版)のダウンロードはこちら
以上5つの様式に基づきケアプランの原案を作成しますが、この段階ではあくまでも利用者、家族、ケアマネジャーだけが関与しているケアプラン原案であり、ケアプランの最終確定のためには次のステップ、サービス担当者会議を実施する必要があります。
サービス担当者会議によるケアプラン確定
第4段階はサービス担当者会議です。サービス担当者会議には、ケアマネジャー、利用者、家族に加えて、ケアプラン原案に位置付けられたサービス提供事業所の担当者が参加し、専門的な見地からの意見を求め、調整を図ります。
サービス担当者会議はオンライン会議による実施も可能ですが、利用者または家族にオンライン会議の利用を求める場合には、事前に同意を得る必要があります。
またサービス担当者会議は、ケアマネジャー、利用者、家族、サービス提供事業所の担当者の4者会議が大原則となりますが、運営基準解釈通知により、3つの例外が示されているため、この点を理解しておきましょう。
サービス担当者会議 参加に関する3つの例外
1つ目は、利用者または家族に関して、家庭内暴力等が心配される場合です。この場合には、必ずしも参加を求める必要はありません。
2つ目は、末期がんの利用者で、主治医が緊急的な介護が必要と判断する場合です。この場合には会議を開催せず、ケアマネジャーがサービス提供事業所の担当者に意見を聞くことが認められています。
3つ目は、サービス提供事業所の担当者の日程調整がつかない場合です。この場合にも会議を開催せず、ケアマネジャーがサービス提供事業所の担当者に意見を聞くことが認められています。
サービス担当者会議の記録については、会議出席者、検討した項目、検討内容、結論などを記載し、2年間保存する必要があります。
サービス提供/モニタリング(実施状況の把握)
第5段階は実際の介護サービスの提供です。介護サービスの提供についてはここでの説明は省略し、第6段階のモニタリングについて解説します。
介護業界で用いるモニタリングとは、ケアプランの実施状況の把握のことです。ケアマネジャーは、ケアプラン作成後にも、利用者、家族、主治医、サービス提供事業所の担当者と継続的に連携を取り、ケアプランの実施状況の把握、つまりモニタリングを行う必要があります。
さらに運営基準ではモニタリングを完全なものとするために、利用者との面接についても定めがあります。具体的に見ていきましょう。
まずは面接回数と記録についてです。ケアマネジャーは少なくとも1カ月に1回以上、利用者と面接する必要があり、モニタリング記録についても、少なくとも1カ月に1回以上、作成する必要があります。
面接は利用者の居宅を訪問して行う必要がありますが、令和6年度の改正でオンライン会議を用いた面接が認められたので、その条件を確認しましょう。
オンライン会議を用いた面接 3つの条件
1つ目は、オンライン会議による面接回数の制限です。先にご説明した通り、ケアマネジャーによる利用者面接は、少なくとも1カ月に1回以上行う必要があります。オンライン会議による面接は2カ月に1回が限度となります。
2つ目は、オンライン会議による面接について、利用者から文書による合意を得ていることです。なお、実際のオンライン会議の操作は、必ずしも利用者自ら行う必要はなく、家族などの介助者が操作することも認められています。
3つ目は、利用者の心身状況が安定し、オンライン会議で意思疎通ができること、またオンライン会議では把握しきれない事項を、サービス提供事業所の担当者から情報提供を受ける旨、関係者が合意していることです。
以上3つを全て満たすことを条件として、オンライン会議による面接が認められているわけです。
まとめ
介護事業起業者のための開業講座、第7回では「ケアマネジメントのプロセス」について詳しく解説しました。インテーク、アセスメント、ケアプラン原案作成、サービス担当者会議、モニタリングなど、ケアマネジメントのプロセスについてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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