介護保険制度の財源、保険料、本人負担割合の決め方は?制度の全体像と財源を徹底解説!介護事業起業者のための開業講座⑥
近い将来、介護保険事業の立ち上げを考えておられる方に向けて「介護事業起業者のための開業講座」と題して、連載企画をお届けします。第6回のテーマは「介護保険制度の財源、保険料、本人負担割合の決め方」です。介護保険制度を保険給付と総合事業に分類し、その全体像を解説した上で、それぞれの財源について詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・要介護認定者、要支援認定者の数を把握しておきたい方
・介護給付、予防給付、総合事業の位置づけを整理したい方
・介護保険制度を支える財源について理解したい方
・1号被保険者の介護保険料の決め方を理解したい方
・介護保険サービスの本人負担割合を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数68名、累積顧客数は北海道から沖縄まで750社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは介護保険制度を保険給付と総合事業に分類し、その全体像を解説した上で、それぞれの財源について詳しく解説します。
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要介護認定者、要支援認定者の数
初めに要介護認定者と要支援認定者の全体数を確認しましょう。令和6年3月の厚生労働省の報告によりますと、要介護5の認定を受けている方が59万人、要介護4が89万人、要介護3が93万人、要介護2が119万人、要介護1が146万人、合計507万人の方が、国からの介護給付対象者となります。
一方、要支援2の認定を受けている方が100万人、要支援1が102万人、合計202万人の方が、国の予防給付または市町村の総合事業の支援対象となっています。
ここで介護給付、予防給付、総合事業それぞれの位置づけについて、制度の全体像の中で解説していきたいと思います。
介護給付、予防給付、総合事業の位置づけ
介護制度は、国が実施する介護保険法第18条の保険給付と、市町村が実施する第115条の45の地域支援事業に大分類することができます。
また保険給付は、介護給付と予防給付に中分類されます。
介護給付の具体例としては、要介護度1から5の方に対する、訪問介護、訪問看護、通所介護、地域密着型サービス等が該当します。
予防給付の具体例としては、要支援1と2の方に対する、介護予防訪問看護、介護予防通所リハ、地域密着型予防介護サービス等が該当します。
一方、地域支援事業は、第1項の介護予防・日常生活支援総合事業、第2項の包括的支援事業、地域包括支援センター、第3項の任意事業に中分類されます。
このうち、第1項の介護予防・日常生活支援総合事業は、1号事業と2号事業に分類され、1号事業に、要支援1と2の方、およびチェックリスト該当者に対する、第1号訪問事業、第1号通所事業が含まれます。これらは元々、保険給付の中の予防給付に含まれていましたが、平成29年に予防給付から市町村が実施する総合事業のうちの1号事業に移行しました。
その他の項目は、市町村が介護保険制度を後押しする取り組みであると理解しておけば良いでしょう。
介護保険制度を支える財源
ここでは介護保険制度を支える財源について解説します。介護保険制度は公費と保険料で成り立っています。公費とは税金のことです。
介護給付、予防給付および介護予防・日常生活支援総合事業は、国25%、都道府県と市町村が12.5%ずつ、合計で50%が公費つまり税金で賄われています。
このうち介護保険施設に関しては、国と都道府県の負担割合がプラスマイナス5%異なりますが、市町村を含めた公費全体としては、やはり50%となります。
一方、保険料に関しては1号被保険者から徴収する部分が23%、2号被保険者から徴収する部分が27%となり、合計50%となります。
その他の地域支援事業の財源負担はご覧の通りです。
このような負担割合で介護保険制度の財源を確保しているわけです。2号被保険者の介護保険料は、健康保険や厚生年金保険と同様に、事業主が半分を負担します。以下、1号被保険者の保険料の決め方について、詳しく見ていきたいと思います。
1号被保険者の介護保険料の決め方
ここでは1号被保険者、つまり65歳以上の方の介護保険料の決め方について解説します。
1号被保険者の介護保険料は、3年に一度見直しが行われます。国がその時々の介護保険の財政状況を勘案し、基準を定め、保険者である市町村がその地域の実情に応じた制度を構築する形となります。
令和6年度の国による見直しでは、合計13段階の基準が定められました。基準表の見方を説明します。
この基準表では、第5段階、つまり本人が市町村民税非課税で、世帯に課税者がいる場合で、かつ本人の年金収入等が80万円超の場合、乗率が1.0となっています。ここが基準額となります。
仮にある市町村が、このまま国の基準表を用い、年間介護保険料の基準額を50,000円と定める場合、第5段階に該当する方の年間介護保険料は50,000円×1.0、つまり50,000円となります。月額は12で割ることで4,166円となります。
同様に、第8段階に該当する方の年間介護保険料は50,000円×1.5、つまり75,000円となり、月額は6,250円となります。
国が定めるこの基準表は、令和6年度の見直しまでは9段階でした。ここに第10段階から13段階まで4つを加えることで、高額所得者の保険料負担額を増大させるとともに、低額所得者に対して軽減措置をはかることで、保険料負担額を減少させる措置を行っています。基準表で言う第1段階から第3段階までの( )内の数値が軽減措置前の乗率です。
また、この基準表は市町村が条例によって、13段階を超えて細分化したり、対象者の条件、乗率を独自に設定することも可能です。例えば横浜市では19段階、大阪市では15段階となっています。
このように、市町村が独自の条例による基準表を定めることで、地域の介護保険状況に応じた保険料負担制度を作ることができるわけです。
参考までに、令和6年度の月額介護保険料を、基準値で比較すると、全国1700を超える市町村のうち、トップ3はいずれも大阪府の大阪市、守口市、門真市が占めています。
月額介護保険料の低い東京都小笠原村、北海道音威子府村(おといねっぷむら)、群馬県草津町などと比較すると、3倍近い差が生じていることが分かります。
介護保険サービスの本人負担割合
本編の最後に、介護保険サービスを利用する際の本人負担割合について解説します。介護保険サービス利用時の本人負担割合は、被保険者の種類、本人の合計所得、世帯構成等によって1割負担、2割負担、3割負担に分類されます。
まず2号被保険者、つまり40歳以上65歳未満の医療保険加入者については、無条件に1割負担となります。
1号被保険者の方のうち、本人の合計所得が160万円未満の方、市町村民税非課税、生活保護受給者についても1割負担です。これ以外の方の負担割合を見ていきましょう。
本人の合計所得が220万円以上の場合、単身世帯か複数人世帯かに分類します。単身世帯の場合、年金収入とその他の合計所得の金額に応じて、340万円以上の場合3割負担、280万円以上の場合2割負担、280万円未満の場合1割負担となります。また、複数人世帯の場合は、単身世帯の場合に比べて条件金額が上がります。
同様に、本人の合計所得が160万円以上220万円未満の場合も、単身世帯と複数人世帯に分類し、それぞれの所得額に応じて負担割合が設定されています。
介護保険制度がスタートした平成12年当時は、全ての利用者負担割合が1割でしたが、少子高齢化と要介護認定者の増加に伴い、2割負担、3割負担の枠組みを作り、同時にその対象者を増やすことで、財源の確保につなげているわけです。
まとめ
介護事業起業者のための開業講座、第6回では「介護保険制度の財源、保険料、本人負担割合の決め方」について詳しく解説しました。介護保険制度の全体像と財源についてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
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◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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