介護事業所の【指定】とは?都道府県、政令市、中核市、一般市町村の指定権限の違いは?介護事業起業者のための開業講座④
近い将来、介護保険事業の立ち上げを考えておられる方に向けて「介護事業起業者のための開業講座」と題して、連載企画をお届けします。第4回のテーマは「介護事業所の指定」です。「指定」の意味と都道府県、政令市、中核市、一般市町村の指定権限の違いについて詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・「指定」の意味を理解したい方
・「指定」と「許可」「認可」の違いを理解したい方
・介護事業所の指定権限を理解したい方
・事業種類、市町村種類による指定権限の違いを理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数68名、累積顧客数は北海道から沖縄まで748社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは「指定」の意味と都道府県、政令市、中核市、一般市町村の指定権限の違いについて詳しく解説します。
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介護事業所の「指定」とは?
初めに介護事業の開業に必要となる「指定」の意味について解説します。
起業される方が、「訪問介護の認可を取る」や「通所介護の開業許可が下りる」等の表現を使われることがしばしばありますが、それらは間違った表現であり、正しくは「指定を受ける」です。今後、経営者として事業を運営されるわけですから、この際正しい表現を理解しておきましょう。
「指定」とは「ある行為をするために、行政庁から資格を得ること」を言います。訪問介護事業の場合、「ある行為」とは「保険給付の対象となる訪問介護サービスを利用者に提供し、市町村などの保険者に対して保険請求を行う」ことを指します。
これら一連の行為を行う資格が認められることを「指定」と呼びます。
仮に行政庁から指定を受けずに訪問介護サービス等を提供した場合、保険給付の対象とはなりませんが、介護サービスとしては成立するため、利用者との契約に基づき、取り決めた代金を徴収すること自体は可能です。要するに100%自費負担ということです。この場合、指定を受けずに介護サービスを提供したからと言って、罰則の対象にはなりません。
さらに別の観点で考えると、介護業界には「保険適用外のサービス」を提供している事業者も多数存在します。具体例としては、マッサージやアロマセラピーなどです。
これらの「保険適用外サービス」は、そもそも「指定」の対象にならないため、利用者との契約に基づき自由に実施することができます。ただし、保険適用外サービスの提供が「メイン」で、保険適用サービスが「サブ」となるような契約は、法令違反となる場合があるため注意しましょう。
指定と許可・認可の違い
続いて指定と許可・認可の違いについて解説します。
指定が「ある行為をするために、行政庁から資格を得ること」であるのに対して、許可は「本来禁止されている行為を、一定条件の下で例外的に許すこと」を言い、認可は「ある事業や組織が有効に成立したことを認めること」を言います。
「許可」の具体例として人材紹介事業(正式名称:有料職業紹介事業)を挙げることができます。人材紹介事業を無許可で営業した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。本来禁止されている人材紹介事業を実施するためには、行政庁から許可を得る必要があるわけです。
「認可」の具体例としては、私立学校設置を挙げることができます。そもそも認可を得ていない段階では、その私立学校自体が有効に成立していないわけです。
介護事業の指定権限・管轄
最後に介護事業の指定権限について解説します。介護事業所に指定を出す権限を持つ行政庁のことです。介護事業の指定権限については、2つの観点から考える必要があります。
1つめは「事業の種類」です。具体的には予防を含む地域密着型サービス、居宅介護支援に該当するか、またはその他に該当するかです。その他とは、例えば訪問介護、通所介護、訪問看護などを指します。
2つめは事業所を設置する「市町村の種類」です。具体的には政令市、中核市、東京23区に該当するか、その他一般市町村に該当するかです。政令市とは人口50万人以上の都市のことを言い、令和6年7月時点、日本全国1700を超える市町村のうち、20市が該当します。また中核市とは人口20万人以上の都市のことを言い、62市が該当します。以下、市町村と呼ぶ場合、東京23区も含むものとご理解ください。
それでは具体的に見ていきましょう。
事業の種類による指定権限の違い
まず「事業の種類」による指定権限の違いからです。「事業の種類」が予防を含む地域密着型サービス、居宅介護支援に該当する場合、事業所の開設先の市町村の種類に関係なく、指定権限は市町村となります。
地域密着型サービスは読んで字のごとく、地域の実情に応じた介護サービス、居宅介護支援はケアプランを作成する事業所のことですので、利用者により近い市町村が指定権限を持つと理解しましょう。
地域によっては、指定権限を持つ複数の市町村が、共同で事務窓口を設置する場合があります。それぞれの市町村が小規模であり、単独で事業者指定事務を担うことが困難な場合等に、指定事務を共同で行うのが目的です。この場合であっても、指定権限はあくまでも個々の市町村となります。
事業所を設置する市町村の種類による指定権限の違い
次に事業所を設置する「市町村の種類」による指定権限の違いです。
その他の介護サービスの場合、事業所を設置する「市町村の種類」によって指定権限が異なります。
事業所の開設先が政令市、中核市、東京23区の場合、都道府県からそれらの市または区に指定権限が移譲されているケースが大半です。ここで「大半」という言葉を用いたのは、指定権限の移譲が現在進行形で進んでいるためです。
一方、事業所の開設先が、その他一般市町村の場合、都道府県が指定権限を持ちます。
都道府県の面積が広大な場合、事業者の利便性を考慮して、都道府県の出先機関が設けられる場合があります。具体的には県内各地の保健所が管轄する場合などです。この場合も、指定権限はあくまでも都道府県にあり、保健所は「都道府県の出先機関」の位置付けとなります。
まとめ
介護事業起業者のための開業講座、第4回では「指定」の意味と都道府県、政令市、中核市、一般市町村の指定権限の違いについて詳しく解説しました。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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