令和9年度介護報酬改定の方向性|報酬改定主要4テーマ、令和6年度改定までの動向、令和6年度改定と指摘事項・令和8年度改定

【令和9年度介護報酬改定】Vol 01 4つの方向性_コラムサムネ
井ノ上剛(社労士・行政書士)

タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。このシリーズでは令和9年度介護報酬改定を複数回に分けて深掘りしていきます。今回取り上げるテーマは【令和9年度介護報酬改定の方向性】です。報酬改定主要4テーマ、令和6年度改定までの動向、令和6年度改定と指摘事項・令和8年度改定について詳しく解説します。

このコラム推奨対象者

・会社経営者の方
・事業所の管理者の方
・報酬改定主要4テーマについて理解したい方
・令和6年度改定までの動向について理解したい方
・令和6年度改定と指摘事項・令和8年度改定について理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数86名、累積顧客数は北海道から沖縄まで993社、本社を含め12の営業拠点で運営しています。今回の福祉起業塾では【令和9年度介護報酬改定の方向性】をテーマに取り上げ、報酬改定主要4テーマ、令和6年度改定までの動向、令和6年度改定と指摘事項・令和8年度改定について詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

令和9年度介護報酬改定 主要4テーマ

はじめに、令和9年度介護報酬改定、主要4テーマについて解説します。出発点は、令和7年12月25日に取りまとめられた、介護保険部会の意見書です。

この意見書では、2040年に向けた介護保険制度の在り方を、次の4点に整理しています。

令和9年度介護報酬改定 主要4テーマ

①人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築

②地域包括ケアシステムの深化

③介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上・経営改善支援

④多様なニーズに対応した介護基盤の整備・制度の持続可能性の確保

併せて、テーマごとに2040年を見据えた制度改正、基準改正、報酬改定の方向性を全体として示しています。

介護保険制度は、2000年の創設から25年が経過し、第1号被保険者は2,165万人から3,589万人へと約1.7倍、サービス利用者数は149万人から546万人へと約3.6倍、介護費用の総額は3.6兆円から14.3兆円へと約4.0倍にまで拡大しました。

01介護保険制度創設からのデータ比較

2040年には介護と医療の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増加に加え、認知症高齢者や独居高齢者等の増加が見込まれます。

介護保険部会の意見書が制度全体の設計図であるのに対し、介護給付費分科会は、報酬や基準で対応すべき事項を具体化する場です。

02介護保険部会と介護給付費分科会の論点整理

令和8年4月27日の介護給付費分科会では、4つのテーマの3点目を「介護人材確保に向けた処遇改善等と職場環境改善やケアの質の向上に向けた生産性向上等」に、4点目を「制度の安定性・持続可能性を確保する報酬の在り方」に再編しています。

令和6年度改定までの動向

ここからは、令和6年度改定までの動向について簡単に振り返ります。過去の報酬改定はそれぞれ独立したものではなく、課題を次回に引き継ぐ、連続したものだからです。

平成18年度改定

平成18年度改定では、各市町村が、それぞれの実情に応じたサービス提供体制を整えることを目的に、地域包括支援センターと地域密着型サービスが創設されました。

平成21年度改定

平成21年度改定では、行政庁による運営指導の原型が出来上がりました。

平成24年度改定

平成24年度改定では、他業界と介護業界の賃金格差を継続的に是正することを目的に、それまでの処遇改善交付金が処遇改善加算として報酬体系に組み込まれました。

平成27年度改定

平成27年度改定では、特養入居者を要介護3以上とする基準が設けられ、また訪問介護、通所介護の予防給付が全国一律の介護保険から、市町村による総合事業に移行しました。いずれも、介護保険財政の持続可能性を見据えた見直しです。

平成30年度改定

平成30年度改定では、介護医療院の創設、利用者に3割負担を求める見直しが行われました。いずれも財政上の理由によるものですが、介護医療院創設の背景には、 慢性期の患者を医療制度から介護制度へ移すことで、医療・介護全体の財政健全化を図る狙いがあります。

令和3年度改定

令和3年度改定では、BCP(業務継続計画)の策定、感染症対策、災害対策が義務化されました。その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる豪雨災害への備えがあります。また、多死社会の到来を見据えて、看取り対応を軸とした医療介護連携も報酬制度に組み込まれました。

このような状況が令和6年度介護報酬改定に繋がっていったわけです。

令和6年度介護報酬改定と指摘事項、令和8年度改定

最後に、令和6年度介護報酬改定と、その審議報告における指摘事項、そして令和8年度の期中改定について解説します。

令和6年度改定は、診療報酬との同時改定であることを踏まえ、4つのテーマに基づき実施されました。この4テーマは、令和9年度改定にも引き継がれています。

報酬改定

報酬改定では、2025年問題に備え、医療介護の連携により、高齢者を地域で支える地域包括ケアシステムを強化することを軸として、報酬制度が整備されました。具体的には居宅介護支援における入院時情報連携加算、通院時情報連携加算の拡充、訪問看護における退院当日の初回加算、ターミナルケア加算の拡充、訪問介護における口腔(こうくう)連携強化加算の新設などが挙げられます。

その一方で、同一建物減算の適用範囲拡大、BCP未実施減算、高齢者虐待防止措置未実施減算など、報酬制度の適正化が組み込まれました。

同時に報告された審議報告(今後の課題)

同時に報告された審議報告では、「今後の課題」が数多く指摘されました。令和9年度改定にも引き継がれる、令和6年度改定の4つのテーマと関連付けて、指摘事項を再確認しておきましょう。

「地域包括ケアシステムの深化・推進」関連の課題

看取り期の訪問看護と他サービスの連携、入所系サービスと医療機関との連携など、医療介護連携の強化が指摘されています。また、訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスの創設については、継続的検討課題とされています。

「自立支援・重度化防止に向けた対応」関連の課題

リハビリ、口腔衛生、LIFEの活用による日常生活動作(いわゆるADL)の改善によるアウトカム評価の検証が指摘されています。またLIFEについては、訪問系サービスへの対象拡大も継続的検討課題とされています。

「働きやすい職場づくり」関連の課題

介護ロボットやICTツールの活用促進が指摘されています。訪問介護、訪問看護、居宅介護支援における人材確保についても、継続的検討課題とされています。

「制度の安定性・持続可能性の確保」関連の課題

報酬体系のさらなる簡素化が指摘されています。この背景には介護保険制度創設から25年を経て、加算種類が急増したことが挙げられます。

03訪問介護と通所介護の加算数

例として訪問介護では、平成12年当時3種類であった加算が、令和6年時点で24種類、通所介護では5種類から37種類など高度に複雑化している反面、全体で見ると、算定実績がない、又は算定事業所の割合が1%未満の加算が、延べ359種類に上るなど、実効性に疑問があるためです。

令和8年度期中改定

令和8年度には、令和9年度改定を待たずに期中改定が実施されました。改定率は+2.03%で、内訳は処遇改善加算が+1.95%と大半を占めます。あわせて、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等が、新たに処遇改善加算の対象に加わりました。

このような大きな流れを踏まえることで、令和9年度介護報酬改定、ひいては2040年に向けた制度の行方を見通すことができます。このシリーズでは引き続き、令和9年度介護報酬改定を深追いしていきます。

まとめ

今回のコラムでは令和9年度介護報酬改定の方向性について解説しました。報酬改定主要4テーマ、令和6年度改定までの動向、令和6年度改定と指摘事項・令和8年度改定についてご理解いただけたかと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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