③障害者総合支援法の成立とその概要

大阪の介護・障害者作業所設立_障害者総合支援法

 

障害者総合支援法成立の背景

1.7年で改正された障害者自立支援法

先のコラムで解説したとおり、平成18年成立の障害者自立支援法には財源問題が付きまといました。

利用者の負担金額については、「応能負担」→「応益負担」→「応能負担」と迷走を繰り返しました。

応能負担・・・「利用者の収入、支払い能力」に応じて費用負担をする制度

応益負担・・・「利用額の*割」を負担する制度

 

また、制度でカバーする利用者(障害者)の範囲についても、課題が残りました。

身体障害者、知的障害者、精神障害者のほかに、「難病等」が支援できない状態にありました。

これらの課題を受けて、平成23年障害者総合支援法が成立します。

「成立」と表現にするには語弊があり、正しくは障害者自立支援法の改正です。

2.「難病等」を支援の対象に追加

支援の対象となる障害者に「難病等」を追加しました。難病とは治療方法が確立していない特殊疾病を指します。

特殊疾病の具体例としては、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」、「潰瘍性大腸炎」、「ギラン・バレ症候群」など130種類あります。

3.障害支援区分の明確化

従来の制度では、「障害の程度の重さ」ではなく「必要な支援の度合い」により支援内容が決まっていました。

そのため1次判定では身体障害者が高く評価され、知的・精神障害者が低く評価される傾向にありました。

そこで障害支援区分を106の評価項目により明確化する手法が導入されました。

 

障害者総合支援法の給付内容

以下の表で障害者総合支援法の福祉サービスの体系を示します。

介護給付 居宅介護(ホームヘルプ) 自宅で、入浴・排泄・食事の介護を行う
重度訪問介護 十度の肢体不自由者で常に介護を必要とする人に、自宅で入浴・排泄・食事の介護、外出時の移動支援を総合的に行う。
同行援護 視覚障害により、移動に著しい困難を要する障害者・障害児に移動に必要な情報提供、移動の援護を行う。
行動援護 自己判断能力が低い障害者・障害児が行動するときに、危険を回避するために必要な支援を行う。
重度障害者等包括支援 介護の必要性が著しく高い障害者・障害児に居宅介護など複数のサービスを包括的に行う。
短期入所(ショートステイ) 自宅で介護する人が病気の場合などに、障害者・障害児に短期間、夜間も含め施設で入浴・排泄・食事の介護などを行う。
療養介護 医療と常時介護を必要とする障害者に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護および日常生活の世話を行う。
生活介護 常に介護を必要とする障害者に昼間、入浴、排泄、食事の介護などを行うとともに、創作的活動または生活活動の機会を提供する。
障害者支援施設での夜間ケアなど(施設入所支援) 施設に入所する障害者に、夜間や休日、入浴、排泄、食事の介護などを行う。
共同生活介護(ケアホーム) 夜間や休日、共同生活を行う住居で、入浴、排泄、食事の介護などを行う。
訓練等給付 自立訓練(機能訓練・生活訓練) 自立した日常生活または社会生活ができるように、一定期間身体機能または生活能力の向上のために必要な訓練を行う。
就労移行支援 一般企業などへの就労を希望する障害者に、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う。
就労継続支援(A雇用型、B非雇用型) 一般企業などでの就労が困難な障害者に働く場を提供するとともに、知識及び能力向上のために必要な訓練を行う。
共同生活援助(グループホーム) 夜間や休日、共同生活を行う住居で、入浴、排泄、食事の介護などを行う。相談や日常生活上の援助を行う。
地域生活支援事業 移動支援 円滑に外出できるように移動を支援する
地域活動支援センター 創作的活動または生産活動の機会の提供、社会の交流などを行う施設を指す。
福祉ホーム 住居を必要としている障害者に、低額な料金で居室などを提供するとともに、日常生活に必要な支援を行なう。

 

労務専門コラム 障害者福祉サービス編

>>①障害者福祉をめぐる福祉六法の成立
>>②支援費制度への移管と問題点 障害者自立支援法
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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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