外国人を雇用する場合の手続きについて

外国人を雇用する場合の手続きについて

このコラムを読むと分かること(3分で読めます)

特定技能1号制度の対象産業に介護が指定されたことも追い風となり、今後介護事業所でも外国人雇用が進んでいく可能性がある。このコラムでは、外国人を雇用する場合の手続きについて解説する。

コラムの目次

①介護事業所の外国人雇用
②介護事業所等の外国人雇入れ・離職時の届出
③在職中の適切な雇用管理
④まとめ

①介護事業所の外国人雇用

介護事業分野では、深刻化する人手不足に対応するため、外国人材の活用が期待されている。外国人材の受入れルートとしては、現状として以下の4つがある。

(1)EPA(経済連携協定)・・インドネシア・フィリピン・ベトナム
(2)在留資格「介護」・・留学生等
(3)技能実習
(4)特定技能1号

特定技能1号は、H31.4から始まった新しい制度で、一定の専門性・技能を有する外国人を受入れ、最長5年間就労を可能とするもので、介護が対象産業に指定されている。 人手不足対策のため、介護事業所でも一層外国人雇用が進む可能性がある。

②介護事業所等の雇入れ・離職時の届出

外国人材も雇用されている限り、「労働者」であり、原則、労働基準法が適用される。そのため、日本人労働者とおおむね同様の手続きが必要になるが、外国人に特有の手続きもある。

それが外国人雇用状況の届出義務。外国人の雇入れ及び離職の際には、氏名、在留資格などをハローワークに届け出ることが、事業主に義務付けられている。

届出の対象となる外国人の範囲

日本の国籍を有しない方で、在留資格「外交」、「公用」以外の方

※「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人等)の方は、特別の法的地位が与えられており、本邦における活動に制限がない。このため、特別永住者の方は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされている

届出の方法について

外国人雇用状況の届出方法については、届出の対象となる外国人が雇用保険の被保険者となるか否かによって、使用する様式や届出先となるハローワーク、届出の提出期限が異なる

(1)雇用保険の被保険者となる外国人について届け出る場合

《届出事項》
①氏名 ②在留資格 ③在留期間 ④生年月日 ⑤性別 ⑥国籍・地域
⑦資格外活動許可の有無 ⑧雇入れに係る事業所の名称及び所在地など、取得届に記載が必要な事項

※在留資格「特定技能」の場合は分野、「特定活動」の場合は活動類型を含む

《届出方法》
雇用保険被保険者資格取得届の該当箇所に「国籍・地域」や「在留資格」などを記入する欄があるので、そちらに記載してハローワークに提出することによって、外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったことになる。

《届出先》
雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワーク

《 届出期限》
雇用保険被保険者取得届の提出期限と同様、入社日の翌月10日

(2)雇用保険の被保険者とならない外国人について届け出る場合

《届出事項》
①氏名②在留資格③在留期間④生年月日⑤性別⑥国籍・地域
⑦資格外活動許可の有無⑧雇入れ又は離職年月日
⑨雇入れ又は離職に係る事業所の名称、所在地等

※⑦については雇入れ時のみの届出事項

《 届出方法》
外国人雇用状況届出書に、上記①~⑨の届出事項を記載し届出。
届出様式はハローワークの窓口で配布しているほか、厚生労働省ホームページからダウ ンロード可能。

《届出先》
当該外国人が勤務する事業所施設(店舗、工場など)の住所を管轄するハローワーク

《届出期限》
雇入れ、離職の場合ともに翌月の末日まで。

届出事項の確認方法について

外国人雇用状況の届出に際しては、外国人労働者の在留カード又は旅券(パスポート)などの提示を求め 、届出る事項を確認することとされている。

また、「留学」や「家族滞在」などの在留資格の外国人が資格外活動許可を受けて就労する場合は、在留カードや旅券(パスポート )又は資格外活動許可書などにより、資格外活動許可を受けていることを確認する。在留カード等のコピーをハローワークに提出する必要はない。

③在職中の適切な雇用管理

外国人労働者の雇用管理の改善等に関し、事業主が適切に対処するための指針が厚労省より出されている。指針の基本的な考え方としては、以下のとおり。

・労働関係法令及び社会保険関係法令は国籍にかかわらず適用されることから、事業主はこれらを遵守すること 。

・外国人労働者が適切な労働条件及び安全衛生の下、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講ずること

具体的には?

募集・採用時

国籍で差別しない公平な採用選考を行うこと。日本国籍でないこと、外国人であることのみを理由に、求人者が採用面接などへの応募を拒否することは、公平な採用選考の観点から不適切

法令の適用

労働基準法や健康保険法などの労働関係法令及び社会保険関係法令は、国籍を問わず外国人にも適用される。また、労働条件面での国籍による差別も禁止されている。

適正な人事管理

労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について書面等で明示することが必要。その際、母国語等により外国人が理解できる方法で明示するよう努めること。

賃金の支払い、労働時間管理、安全衛生の確保等については、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等に従って適切に対応すること。

人事管理に当たっては、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、評価・賃金決定、配置等の運用の透明性・公正性を確保し、環境の整備に努めること。

解雇等の予防および再就職援助

労働契約法に基づき解雇や雇止めが認められない場合がある。安易な解雇等を行わないようにするほか、やむを得ず解雇等を行う場合には、再就職希望者に対して在留資格に応じた再就職が可能となるよう必要な援助を行うよう努めること。

なお、業務上の負傷や疾病の療養期間中の解雇や、妊娠や出産等を理由とした解雇は禁止されている。

④まとめ

このコラムで解説した介護事業所が外国人を雇用する場合の手続きのポイントは次のようになる。

・人手不足対策のため、介護事業所でも一層外国人雇用が進む可能性がある。
・外国人であっても、雇用する限り「労働者」として労働基準法等の法令が適用される
・介護事業所等は雇入れ・離職時の届出が義務付けられている
・介護事業所等の事業主は、外国人労働者に対する適切な雇用管理をすることが義務付けられている

介護事業における外国人雇用は、人手不足対策のためますます進む可能性がある。今のうちから備えておくことをおすすめしたい。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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