このコラムを3分読めば理解できること

・施設通所型の介護・障害福祉事業での建物の要件が理解できる
・都市計画法、建築基準法、消防法の規制内容が理解できる
・建物の事前調査と賃貸(売買)契約のタイミングが理解できる

介護・障害福祉事業のうち、利用者が通所する事業では、都市計画法、建築基準法、消防法の遵守が求められる。このコラムでは施設通所型、介護・障害福祉事業の設立・開業支援の専門家が、介護保険法以外の諸法令について詳しく解説する。

このコラムの目次

①施設通所型の介護・障害福祉事業とは?
②建物の立地が都市計画法上の規制区域でないか
③使用部分の床面積が200㎡を超えないか
④建築確認済証、検査済証が備わっているか
⑤消防法上の基準をクリアすることができるか
⑥どのタイミングで物件の賃貸(売買)契約をすべきか
⑦このコラムのまとめ

①施設通所型の介護・障害福祉事業とは?

このコラムで解説するのは、いわゆる施設通所型の介護・障害福祉事業における、建物の要件だ。施設通所型の例を挙げると次のようになる。

介護保険事業

通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション
短期入所生活介護 など

障害福祉事業

就労移行支援
就労継続支援A型、B型
児童発達支援
放課後等デイサービス
生活介護 など

これらの事業では利用者が自宅に住みながら、施設に通所することになるため、その施設について法令上の安全要件が定められている。具体的には次の6法令だ。

・介護保険法/障害者総合支援法/児童福祉法
・都市計画法
・建築基準法
・消防法

介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法上の建物基準については、当サイトの各事業種別のページに詳細を記載しているのでご参照願いたい。

このコラムでは介護保険法以外の3法令(都市計画法、建築基準法、消防法)について解説する。尚、賃貸物件、中古物件購入、新築のいずれの場合であっても規制条件は同様だが、便宜上賃貸物件を想定して説明する。

②建物の立地が都市計画法上の規制区域でないか

介護・障害福祉事業の設立・開業を検討中のあなたが、候補物件を選定中であるとしよう。まず大前提となるのが、都市計画法上の営業規制区域でないかどうかだ。

都市計画法では、我々が住む街を次の通り区分している。

全域

都市計画区域

〇市街化区域(すでに市街地または10年内に市街化)

×市街化調整区域(市街化を抑制する)

×都市計画区域外(都市計画がなされていない)

市街化調整区域、都市計画区域外では事業を営むことができない

まず原則として、市街化調整区域または都市計画区域外では事業を営むことができないことを理解しよう。例外的に市街化調整区域では、自治体の許可を受ければ事業実施もできなくはないが、極めて困難である。

市街化区域でも事業種別によっては規制がかかる場合も

市街化区域はすでに市街地になっている、または10年以内に市街化を計画している区域のことだ。市街化区域は13の用途地域に分類され、それぞれの地域で建物の用途制限がなされる。

第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
田園住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域

閑静な低層住宅街( 低層住居専用地域) でカラオケボックスやパチンコ店が営業できない、等がその一例だ。一言で介護・障害福祉事業といっても多くの事業種別が存在ため、個別に規制区域の確認が必要となる。

訪問介護、訪問看護

住居専用地域では営業できない

通所介護(デイサービス)、児童発達支援、放課後等デイサービス

低層住居専用地域では営業できない

共同生活援助(グループホーム)

工業専用地域では営業できない

※障害者就労支援事業については、その具体的な作業内容により業種区分が異なるため、注意しよう。

以上を基礎知識として、あなたが開業予定の介護・障害福祉事業が都市計画法上、営業規制にかかっていないかどうかを、市町村の担当部署で確認する必要がある。

相談結果を、実際に営業許可(指定)を受ける行政窓口(介護保険課や障害福祉課など)に提出する必要があるので、必ず相談先の部署と担当官の氏名を記録するようにしよう。

③使用部分の床面積が200㎡を超えないか

次に建築基準法上の規制を確認しよう。建築基準法では、建物の用途を変更して特殊建築物にする場合、用途変更確認申請が必要となる。施設通所型の介護・障害福祉事業においては、すべてが特殊建築物に該当する。

ただし、変更対象部分が200㎡以下または類似用途間の変更の場合は、用途変更確認申請は不要だ。

例えば事務所使用のテナントビルのワンフロアを賃借りし、その床面積が200㎡を超える場合、事務所→介護福祉施設での用途変更確認申請が必要となる。

用途変更確認申請は建築士等の専門家に依頼する必要があるため、余分な費用が生じることを予め理解して物件探しを行おう。

④建築確認済証、検査済証が備わっているか

引き続き建築基準法上の規制を確認する。事業所として使用する建物の建築確認済証、検査済証が提出できるかどうかだ。まずはそれぞれの書類の意味を理解しよう。

建築確認済証:建築基準法に基づく設計であることの証明
検査済証:設計通りの建築であることの証明

所有者がそれぞれの書類の写しを提供してくれる場合は問題ないが、次の場合には一定の対処が必要となるため注意しよう。

所有者が紛失している場合

自治体の建築指導課(名称は各々異なる)に、「建築計画概要書」を請求。建築確認番号、検査済証番号が確認できれば問題ない。

そもそも無い、または建築後建築確認を受けずに増改築をしている場合

1、2級建築士に当該物件の耐震診断を依頼し、診断証明書を作成してもらう必要がある。そのための費用が生じる。

⑤消防法上の基準をクリアすることができるか

最後に消防法上の建物基準について理解しよう。現状は当該建物の消防設備に不備がなくても、あなたの介護・障害福祉事業所がテナント入居することにより、建物全体で備えるべき消防設備が違法状態になる可能性がある。

その問題を未然に防ぐため、営業許可(指定)申請前に、管轄の消防署における事前相談が義務付けられている。

その際、設置すべき消防設備の説明、および防火対象物使用開始届の提出タイミングについての指示を受けよう。

⑥どのタイミングで物件の賃貸(売買)契約をすべきか

まずは都市計画法、建築基準法、消防法の確認を

以上の解説の通り、あなたの介護・障害福祉事業の建物についての賃貸(売買)契約は、少なくとも都市計画法、建築基準法、消防法の建物基準をクリアすることが確定した後に行うべきことがご理解いただけたと思う。

これら3法令の調査確認の前に建物の賃貸(売買)契約をしてしまうと、後戻りできなくなるためだ。

次に指定先自治体での事前協議を

さらに万全を期す方法を説明しよう。

施設通所型の介護・障害福祉事業ではこれら3法令の調査結果に基づき、営業許可(指定)を所管する自治体が事前協議という正式なステップを設けている。

施設通所型の介護・障害福祉事業における事前協議とは、建物自体が3法令に準拠し、かつ業法(介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法)の人員基準、建物基準に合致していることの事前審査を受けるものだ。

事前協議を通すことで、後は必要書類を整備すれば問題なく営業開始できる、との確証を得ることができる。建物の賃貸(売買)契約は、できることなら事前協議終了後に行うよう計画を調整しよう。

⑦このコラムのまとめ

以上が施設通所型の介護・障害福祉事業における建物要件だ。立地や建物の外観、費用だけを見て即決することなく、本コラムで解説した項目を十分に理解した上で賃貸(売買)契約を行おう。

開業計画を進める中で、建物調査が大きなウエイトを占めることになるため、なるべく早めに当事務所へご相談されることをお勧めする。

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