代表者や役員に対して処遇改善加算を支給することはできますか?

代表者や役員に対して処遇改善加算を支給することはできますか?

代表者や役員に対して処遇改善加算を支給することはできますか?

画一的に判断することが難しく、個別事情を勘案した上での各自治体の判断となります。

このQ&Aは、令和4年1月1日現在の、当社公式見解です。次の予定でお客様にご案内致します。前提として、この問題の背景には、次の2つの重大な論点が絡んでいることをご理解下さい。

背景

①小規模の介護障害福祉事業では、法人代表者・役員が、現場業務を兼務することが多いため、それらの人も処遇改善加算の支給対象にしたい、との希望が働く。

②一方で法人代表者・役員はあくまでも「使用者側」であるため、これらの人に処遇改善加算を支給すると、処遇改善加算制度の根幹である「労働者側」への支給額が減少する。

ご注意ください!

処遇改善加算は、あくまでも介護労働者の待遇向上のための制度であり、原則として代表者・役員は支給対象になりません

万一、代表者や役員に支給された処遇改善加算が指定自治体によって否定された場合、多大な返還義務が生じることから、実施の是非についてはお客様の責任で判断して頂いています。実施される場合には、お客様から自治体へ確認・相談を行って頂くよう、お願い致します。

このQ&Aは、お客様に対する情報提供のために作成しております。この内容によってお客様に損害が生じても、当社では一切の責任を負うことが出来ませんので、予めご了承をお願い致します。

解 説

この問題について、当社が厚生労働省(老健局老人保健課企画法令係)に対して、問合せした際の回答要旨を掲示します。

代表者・役員に対する処遇改善加算についての厚労省回答

役員であるか否か、役員報酬が支給されているか否かなどの外形的な要素ではなく、実際の業務内容を勘案し判断する。

ということで「代表者や役員に対して処遇改善加算を支給することはできますか? 」の問題については、

個々の会社の実情を勘案して、各自治体で判断する

という手法が用いられています(令和3年8月現在の情報です。今後、厚労省から統一見解が出される可能性はあります)。以下、順追って考え方を整理していきましょう。

基本的な考え方

以下の表が考え方の体系図です。(当社作成)

代表者・役員の区分 介護保険 障害福祉
代表者 対象職に従事せず × ×
 〃  従事する
役員 対象職に従事せず × ×
 〃  従事する

表の見方を説明します。

まず横軸は介護保険と障害福祉の区分を示しています。あなたの指定事業が介護保険サービスか、障害者(児)福祉サービスかの区分です。

次に縦軸です。代表者とその他役員を分けて考えます。さらにその人が対象職に従事しているかどうかを区分します。対象職とは例えば次の通りです。

処遇改善加算の主な対象職

・介護職員(訪問介護、通所介護、障害居宅介護、障害重度訪問介護など)
・生活支援員、世話人(共同生活援助など)
・職業指導員、就労支援員(就労移行支援、就労継続支援など)
・児童指導員(放課後等デイサービス、児童発達支援など)

処遇改善加算の支給対象「外」職種

・法人代表者、役員
・管理者
・サービス提供責任者(介護職員を兼ねる場合は○)
・看護師
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
・生活相談員
・サービス管理責任者
・児童発達管理責任者

ポイントは、本来は処遇改善加算の支給対象「外」職種である、法人代表者、役員が、支給対象職種を兼任している場合どうなるかという点です。

確認の方法

厚生労働省が「外形的な要素ではなく、実際の業務内容を勘案し判断する」と言う以上、あなたの疑問が表の①②③④のどれに該当するかを整理した上で、指定先の自治体の関係部局(介護・障害それぞれ)に問い合わせる以外に方法はありません。

注意点

インターネットで調べると、自治体の回答が掲載されている場合があります。しかしここまでお読み頂ければわかる通り、それがどの自治体の公式見解なのか、に着目する必要があるわけです。指定自治体以外の公式見解を鵜呑みにしても、全く意味がないためです。

ご参考までに代表的な回答例をご紹介しましょう。

自治体の回答例

●A市
他の従業者と同じ条件で介護職員として働いた分を、役員報酬と区分して給与として支給していればよい。(代表者も同様)

●B市
他の従業者と同じ条件で介護職員として働いた分を、給与として支給していればよい。その場合役員報酬は0でなければならない。(代表者も同様)

●C市
役員でも介護職員として働いていればよい。ただし、役員報酬があまりにも高額であるにもかかわらず、更に処遇改善加算の恩恵を受けるのは趣旨に反すると考える。(代表者も同様)

●D市
従業員兼務役員として、従業員部分の雇用契約があればよい。ただし、代表者はどのような場合でも対象にならない。

●E市
従業員兼務役員として、従業員部分について雇用契約を締結し、かつ雇用保険の加入が必要である。ただし、代表者はどのような場合でも対象にならない。

※注意点※

A市の回答中、「役員報酬と区分して給与として支給」との考え方があります。これは税法および労働法上の「従業員兼務役員」の考え方に基づくものであると思います。つまり代表者以外の役員に、定期同額の役員報酬とは別に、労働者としての変動給与・賞与を支給するという考え方です。

しかし税法および労働法には、代表者に関する「従業員兼務役員」の考え方はありません。A市の回答からは、税法・労働法とは別の考え方が取られている事が分かります。

この場合、税法・労働法に着目すると代表者に対しては定期同額の役員報酬に加えて、定期同額の従業員給与定期同額の処遇改善手当を支給することになります。この3つの支給を合わせて、代表者に対する定期同額を実現することになります。(下表参照)

  一般労働者 代表者 従業員兼務役員
(雇用保険加入)
役員報酬 20万円
(定期同額)
15万円
(定期同額)
給与 20万円 20万円
(定期同額)
20万円
(変動可)
処遇改善手当 3万円 3万円
(定期同額)
3万円
(変動可)

以上を参考として下さい。

なお、当社で顧問契約を締結しているお客様の場合、このご質問についてご相談に対応することはありますが、仮に代表者や役員に支給された処遇改善加算が指定自治体によって否定された場合、多大な返還義務が生じることから、実施の是非についてはお客様の責任で判断して頂いています。 施される場合には、お客様から自治体へ確認・相談を行って頂くよう、お願い致します。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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