共同生活援助(障害者グループホーム)特定従業者数換算方式とは?令和6年度基本報酬改定と人員配置体制加算を分かりやすく解説
共同生活援助(障害者グループホーム)の令和6年度報酬改定では、基本報酬区分の見直しと特定従業者数換算方式による人員配置体制加算が新設されます。現在、所定労働時間40時間未満で加算区分ⅠまたはⅡを算定している事業所の場合、報酬額が下がる可能性があります。今回は共同生活援助の基本報酬改定と人員配置体制加算について解説します。
このコラムの推奨対象者
・共同生活援助の令和6年度報酬改定を正しく理解したい方
・人員配置体制加算の新設に関する知識を整理したい方
・事業収支への影響について関心のある方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年2月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績684社(北海道~沖縄)、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年度障害福祉サービス費報酬改定のうち、共同生活援助の基本報酬改定と人員配置体制加算に焦点当てて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
共同生活援助(障害者グループホーム)令和6年度基本報酬改定の概要
共同生活援助(障害グループホーム)の令和6年度報酬改定では、現行の基本報酬区分のうち上の2つの区分がなくなります。それを補う要素として人員配置体制加算が新設されます。この人員配置体制加算算定のためには、最低基準を超える人員配置が必要となります。具体的に見ていきましょう。
共同生活援助の運営状況
共同生活援助は通称障害者グループホームと呼ばれ、世話人が住居内で家事サービスを提供し、生活支援員が介護サービスを提供する障害福祉サービスです。
共同生活援助の種類は3種類あり、事業所の生活支援員が主に夜間に介護サービスを提供する介護サービス包括型、日中を含めて常時介護サービスを提供する日中サービス支援型、外部の居宅介護事業所が介護サービスを提供する外部サービス利用型に分かれます。
介護サービス包括型 | 日中サービス支援型 | 外部サービス利用型 | |
介護サービス | 生活支援員が主に夜間 | 生活支援員が常時 | 外部居宅介護事業所 |
事業所数 | 10,631 | 809 | 12,33 |
事業所割合 | 83.9% | 6.4% | 9.7% |
利用者数 | 146,402 | 11,586 | 14,913 |
利用者割合 | 84.7% | 6.7% | 8.6% |
令和5年度統計では、介護サービス包括型が10,631事業所、日中サービス支援型が809事業所、外部サービス利用型が1,233事業所となります。利用者数も介護サービス包括型が最も多く146,402人となっており、事業所数、利用者数ともに8割以上を占めています。ここでは介護サービス包括型を中心に説明します。
共同生活援助の基本報酬区分の考え方
令和5年度以前の共同生活援助の報酬区分には、利用者に対する世話人の比率に応じて報酬区分に差が設けられていました。区分Ⅰは利用者:世話人が4:1、区分Ⅱは5:1、区分Ⅲは6:1となります。区分Ⅳは体験利用の場合の報酬区分です。令和6年度報酬改定では、区分1(4:1)と区分Ⅱ(5:1)がなくなります。この過程を見ていきます。
共同生活援助の世話人と生活支援員の配置数は常勤換算法で考えます。常勤換算法とは「その事業所の常勤職員の週所定労働時間分勤務することで1人」とする換算方法です。
例えば4:1の事業所で利用者が12人の場合、12人を4で割って常勤換算法で世話人3人が必要となります。常勤換算法で3人というのは、常勤職員の所定労働時間が40時間の場合、120時間分の勤務を指します。これが5:1の場合2.4人で96時間、6:1の場合2名で80時間となります。
週所定労働時間は法定労働時間の上限40時間以内で、事業所が独自に設定することができます。ただしあまりに短い設定だと短時間労働の世話人によっても必要配置数が満たされてしまい、事業運営に支障をきたす恐れがあるため、介護障害福祉サービスでの下限は32時間と定められています。
仮に先ほどの表で週所定労働時間が32時間の場合、4:1の事業所で世話人3人は96時間を指し、5:1の場合2.4人で76.8時間、6:1の場合2人で64時間となります。
ここで区分Ⅱ(5:1)と、区分Ⅲ(6:1)を比較します。区分Ⅱの方が世話人の必要配置人数が多いため、報酬単位も高く設定されていますが、例えば区分Ⅱで週所定労働時間が32時間の場合76.8時間、区分Ⅲで週所定労働時間が40時間の場合80時間配置となります。
つまり報酬単位が高い区分Ⅱの方が区分Ⅲよりも世話人の配置時間が短くて済む、という不合理なケースが発生し得るわけです。制度上の欠陥であると言えますが、このようなケースを是正するために考えられたのが区分Ⅰ、Ⅱの廃止と、特定従業者数換算方式による人員配置体制加算なのです。
区分Ⅰ、Ⅱの廃止と特定従業者数換算方式による人員配置体制加算
区分Ⅰ、Ⅱが廃止され区分Ⅲが新区分Ⅰに改められました。結果として世話人の必要配置人数は運営基準上の最低ラインである6:1に一本化されます。旧区分Ⅰ(4:1)、旧区分Ⅱ(5:1)で人員を配置していた事業所にとっては重大な改定であると言えます。報酬改定により余剰労働時間が発生するためです。
そこでそれらの事業所への評価を正しく行うために導入されたのが、特定従業者数換算方式による人員配置体制加算です。
基本報酬部分から確認します。利用者が12人の場合、世話人の必要配置人数は6:1であるため12人÷6で2人となります。生活支援員の必要配置数は障害支援区分によって異なりますが、仮に必要配置人数が1.8人であるとします。
ここで言う必要配置人数については、引き続き事業所独自の週所定労働時間で常勤換算することが認められるため、週所定労働時間が32時間の事業所の場合、世話人は2人×32時間で64時間、生活支援員は1.8人×32時間で57.6時間となります。両方合わせると3.8人で121.6時間となります。
この時間を超過して世話人または生活支援員を余剰配置する場合に、新たに設けられる人員配置体制加算の算定可能性が生じます。加算Ⅰでは利用者を12で割った人数、つまり1人の余剰配置が必要となり、加算Ⅱでは30で割った人数、つまり0.4人の余剰配置が必要となります。
ここで重要となるのが、今計算した余剰配置人数を労働時間に置き換える計算式です。所定労働時間が32時間である事業所の場合、余剰1人の配置は週32時間分労働であるように思えますが、人員配置体制加算では事業所の所定労働時間に関わらず、週40時間で計算します。これが特定従業者数換算方式です。つまり加算Ⅰで計算した余剰1人を40時間であるとし、加算Ⅱで計算した0.4人を16時間であるとして計算するわけです。
なお介護サービス包括型で設けられる人員配置体制加算Ⅰは、障害支援区分4以上で83単位、区分3以下で77単位、加算Ⅱは障害支援区分4以上で33単位、区分3以下で31単位です。
実際の事業収支への影響は?
最後に令和6年度、共同生活援助の基本報酬改定と特定従業者数換算方式による人員配置体制加算の影響について、旧報酬区分ごとにコメントしたいと思います。
旧報酬区分Ⅰ(4:1)とⅡ(5:1)がなくなり、6:1に置き換わるということは、4:1または5:1で人員配置していた事業所で、余剰労働時間が生じることになります。この余剰労働時間の吸収先が新たに設けられる人員配置体制加算となるわけです。
旧報酬区分 | 6:1に置き換わる 場合の余剰労働時間 |
コメント |
Ⅰ(4:1) | 大 | 基本報酬の減少が多額である一方、余剰労働時間によって人員配置体制加算Ⅰを算定できる可能性が高いと言えますが、それでも旧区分Ⅰの報酬単位には戻らず、また活用しきれない余剰労働時間が残るため収益に影響を与えることが予測されます。 |
Ⅱ(5:1) | 小 | 基本報酬の減少が生じるものの、余剰労働時間または追加人員の配置により人員配置体制加算Ⅰが算定できれば、収益が改善する可能性があります。 |
Ⅲ(6:1) | 変動なし | 基本報酬の減少はほとんどなく、追加人員の配置により人員配置体制加算Ⅰを算定することで、収益が改善する可能性があります。 |
まとめ
今回は共同生活援助(障害グループホーム)の令和6年度報酬改定のうち、基本報酬区分の見直しと特定従業者数換算方式による人員配置体制加算について解説しました。
基本報酬区分の見直しと特定従業者数換算方式による人員配置体制加算の新設による影響は、事業所ごとに以下の変動要素を勘案してシミュレーションすることになります。
・現状算定している基本報酬区分
・現状の障害支援区分ごとの利用者数
・現状の週所定労働時間
・現状の人員配置の余裕上状況
報酬改定の内容を正しく理解し、事業所の人員体制の再整備を行いましょう。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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