介護障害福祉事業を開業する方向けの法定相続人講座④|代襲相続と同時死亡、欠格・廃除・相続放棄
■資格面から見た代襲相続の問題点
1.ケーススタディ~養子が被相続人より先に死亡している場合
Aには養子Bと実子Cがある。
養子Bには子Dがある。
Bが死亡し、その後Aが死亡した。
2.解説~養子が被相続人より先に死亡している場合
争点となるのは、
「Dがいつ生まれたか」
という点です。
つまりAから見て孫にあたるDが、
「直系卑属(子孫)」
に当たるかどうかです。
民法887条2項(代襲相続人はAの直系卑属に限る)とありますので、
①Dが養子縁組前に生まれている場合 →Dは直系卑属ではない →代襲相続できない
②Dが養子縁組後に生まれている場合 →Dは直系卑属である →代襲相続できる
となるわけです。
3.代襲者のもう一つの条件
実はもう一つ、代襲相続人に条件が課されています。
被相続人との関係で、「相続欠格」・「廃除」となっていない事です。(民法891条)
ポイントは、
「被相続人との関係で」
という点です。
4.ケーススタディ~代襲相続と相続欠格(その1)
Aの法定相続人はBC(ともに子)である。
Bはすでに死亡しており子Dがある。
DはAの遺言作成を妨害した。
Bが先に死亡し、Aが死亡した。
この事例では、DがAとの関係で相続欠格にあたりますので、代襲相続権を失います。
しかし次のケースはどうでしょう。
5.ケーススタディ~代襲相続と相続欠格(その2)
Aの法定相続人はBC(ともに子)である。
Bはすでに死亡しており子Dがある。
Dは「Bの」遺言作成を妨害した。
Bが先に死亡し、Aが死亡した。
Dは「Bの」遺言書作成を妨害したことにより、Bとの関係では相続欠格ですが、Aとの関係では何も問題がありません。
よって、Aの相続に関しては相続権を失わず、Bを代襲することが可能です。
■死亡の先後から見た代襲相続の問題点
1.死亡の先後と代襲相続
最後に非常にいたたまれない事例をご説明します。
ここまで代襲相続を勉強して、ポイントが
①死亡の時期(先後)
②誕生の時期(先後)
であることがお分かり頂けたと思います。
では、被相続人と相続人のどちらが先に死亡したか分からないケースではどう考えるのでしょうか。
2.ケーススタディ~死亡の先後と代襲相続
Aには父B、配偶者C、子Dがある。
AとDが同じ事故に合い、2人とも死亡が確認されたが、
死亡の先後は現在のところ不明である。
3.ケーススタディ~死亡の先後と代襲相続
事例では、AとDの死亡の先後により、父B・配偶者Cの相続権に違いが生じます。
①先にAが死亡している場合
法定相続人は 配偶者C、子D。
次に子Dの死亡により法定相続人はC。
結果、全てCが相続。
②先にDが死亡している場合
Dが幼少である場合Dの相続財産はおそらくなし。
Aの死亡による法定相続人は、父B、配偶者C
4.同時死亡と代襲相続
これらは船や飛行機の事故、自然災害で起こりうる事例です。
民法32条の2によると、
「死亡の先後が分からないときは、同時に死亡したものと推定する」
となっています。
ちなみに「推定する」とは「証拠があれば覆りますよ」という意味です。
そしてそもそも相続は、「被相続人の死亡時点で生きている人」に対して発生しますので、同時死亡のケースでは相続が発生しません。
よって、先の事例では
「Aの死亡による法定相続人は、父B、配偶者C」
となるわけです。
5.ケーススタディ~同時死亡した子に、子がいる場合の代襲相続
Aには父B、配偶者C、子Dがある。
子Dにはさらに子E(Aの孫)がある。
AとDが事故に合い、死亡が確認されたが、その先後は分からない。
6.解説~同時死亡した子に、子がいる場合の代襲相続
この事例では、
「Aの死亡による法定相続人は、配偶者C、Dの子E(Aの孫)」
となります。
EがDを代襲するわけです。
代襲相続を定める民法887条2項では、
「被相続人の子が、相続人の死亡以前に死亡している時」
となっています。
「以前」とは、「その瞬間も含む」=「同時も含む」
という論法が成り立つため、EがDを代襲することが出来るわけです。
結果、
「Aの死亡による法定相続人は、配偶者C、Dの子E(Aの孫)」
となるわけです。
【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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