■遺言の開封と家庭裁判所での検認手続き

1.公正証書遺言だけ、検認手続きが不要

この章で題材に使うのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言です。

なぜ公正証書遺言は発見時の手続きを気にしなくてよいか?

それは公正証書遺言が、

「偽造の可能性が極めて低い」

からです。

2.公正証書遺言は作成過程が厳格だから

つまり公正証書遺言は、遺言作成に証人2名と公証人が関わっており、また作成時の遺言書が公証人役場に保管されているため、後日偽造の余地がないからです。

(しかし、公正証書遺言の作成過程に問題があったとして、公正証書遺言が無効となった最高裁の判例があります。最判昭和51.1.16)

3.自筆証書遺言と秘密証書遺言の検認手続き

それに対して、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、

遺言書発見 → 利害関係者全員の確認

の間に偽造される可能性があります。

それを防ぐために、「家庭裁判所の検認」という手続きが必要となります。

民法1004条では

「遺言書を見つけたら、封を開けずに家庭裁判所へ提出してください」

となっています。

これに違反した人には、過料が科せられますのでご注意を。(50,000円)

■遺言の検認手続き

1.相続人による遺言検認の申し立て

検認の申立は原則相続人が行います。申立先は「遺言者の最終住所地の家庭裁判所」です。

2.遺言検認日の通知

家庭裁判所から申立人および全ての相続人に対して検認日の通知が送られます。

「○月○日に検認しますから集まってください」、という意味です。
参加不参加は当人の自由です。不参加でもペナルティーはありません。

3.遺言内容の確認

検認日に、全ての関係者の立会いの下、家庭裁判所で遺言書が確認されます。
封入されていたものは開封されます。

4.遺言検認調書の作成

「検認調書」が作られます。検認調書には以下の事が記されます。

・遺言書が書かれていた紙の状況
・遺言書の枚数
・封がされていたかどうか
・記載内容の訂正の状況
・遺言書が書かれた日付
・署名、押印の状況

5.遺言検認済証明書

最後にこの調書内容が「検認済証明書」として作成されて終わりです。

検認申立から1~2か月かかるケースがありますので、時間に余裕をもって手続きをする必要があります。

■遺言検認が済めば遺言は有効?

1.押してくれない「遺言有効」の証明

検認に同席した相続人が、次のようにおっしゃる事があります。

「この検認済証明書で遺言が有効だと認められたので一安心ですね。」

実は違うのです。

この「検認」という手続きはあくまでも、

「遺言が・・・・の状態で発見された」

ことの証明にすぎません。

2.押してくれない「遺言無効」の証明

また、仮に誰かが不注意で(知らずに)開封してしまった場合でも、家庭裁判所は

「その遺言は無効である」

という判断もしません。

判例でも、民法1004条の「検認」について

「検認自体は、遺言が遺言者の本心か否か、また有効か無効かを判定するものではない」
(大決大正5.6.1)

「検認手続きを経なくても遺言の効力には何の影響もない」(大判3.2.22)

とあります。

3.遺言の検認とはそもそも何をしてくるのか?

「そんな無責任な・・・」

という感が否めませんが、そもそも裁判官でもその遺言が、遺言者(被相続人)本人のものかどうか、また本心かどうかなど分かるはずもないわけです。

だから検認手続きはあくまで、

「相続人の皆さん、遺言が・・・・の状態で発見されました。後はよろしく」

となるわけです。

検認の意味を取り違えないよう、注意しましょう。