■当人固有の権利(一身専属権)とは?

1.民法の条文で見る一身専属権

読んで字のごとく、「その人にしか価値・意味を持たない権利」です。

民法の条文では、相続以外の規定の中で個別に明文化されています。

①代理権は代理人の死亡により消滅する。(民法111条)
→本人が代理人を信用して任命しているからです。

②使用貸借(無償で借りること)は借主の死亡により終了する。(民法599条)
→貸主と借主の個人的な信頼関係によって使用貸借(無償)が成立しているからです。

③労働者は使用者の承諾を得なければ代理を働かせることはできない(民法625条)
→労働者の個人能力が雇用契約の基になっているからです。

いずれも「本人が亡くなったので、私が代りに・・・」という権利(相続)を認めていません。契約の相手方を保護するためです。

2.その他の一身専属権

民法では規定されていませんが、その他にも一身専属権として次のようなものがあります。

①本人が亡くなったので、代わりに私を扶養してください(扶養請求権)
②本人が亡くなったので、代わりに私に生活保護を下さい(生活保護受給権)
(参考判例 最大判昭和42.5.24)

いずれも死亡した本人の生活環境に基づいての権利ですので、人が変われば意味をなさなくなるわけです。

■慰謝料請求権は相続されるか?

1.ケーススタディ~慰謝料請求権と相続

ケーススタディ

Aには相続人B(子)のみがある。
Aが不慮の事故で死亡した。

2.解説~慰謝料請求権と相続

このケースでBに

「Aの損害賠償請求権が相続されるかどうか」

が問題となります。

この問題では、2つの損害賠償請求権を別々に考える必要があります。

①B自身の損害賠償(慰謝料)請求権
②A固有の損害賠償(慰謝料)請求権

3.民法で見る慰謝料請求権と相続

①については条文で次のように規定されています。

民法711条
「被害者の近親者は、自分の財産が侵害されない場合でも、慰謝料を請求できる」

では②の場合はどうでしょう。

判例では次のように示されています。

「不法行為による、本人の慰謝料請求権は相続対象となる」(最大判昭和42.11.1)

つまり、①と②はそれぞれ別個のものであり、相続の対象となるわけです。