■1次相続で相続税が発生しないわけ

1.相続財産の大半を占める不動産

相続財産のうち、大半を占めるのは不動産です。

現金預金が数百万円程度、というご家庭でも一戸建てを所有している場合、評価額は高額になります。

遺族の相続税負担、とりわけ残される配偶者(主に妻を想定)の相続税負担を軽減するために、税法では2つの軽減策が取られているのです。

2.配偶者(妻)を相続税負担から守る、贈与税の配偶者控除

婚姻20年以上の夫婦間で居住用の不動産を贈与する場合、2000万円まで非課税で贈与できます。

20年以上経過すると建物の価値は相当低くなっているため、事実上は土地のみの価格です。

平均的な40坪の土地を2000万円贈与で逆算すると、坪単価は50万円。

土地は路線価評価で行うため、0.7で割り戻すと時価相場で71万円。

都心部以外では、売買相場の坪単価が71万円を超えることはありません。

つまり、生前贈与で配偶者へ不動産を移しておけば、相続税の負担は大きく軽減されるわけです。

3.配偶者(妻)を相続税負担から守る、相続税の小規模宅地の特例

先にご説明した、贈与税の配偶者控除をしていなかった場合はどうなるでしょう?

ご心配には及びません。

生前に不動産の名義を配偶者に変えていなかった場合でも、「小規模宅地の特例」の利用が効果的です。

4種類ある小規模宅地の特例を開設します。

①特定居住用宅地

被相続人が居住用として使っていた宅地で、330㎡までの部分を80%減額します。

以下の3つの条件のうち1つを満たすことが必要です。
ア)被相続人の配偶者が相続
イ)被相続人と同居していた親族が相続し、申告期限まで引き続き居住
ウ)同居配偶者、同居親族がいない場合、相続開始3年内に持ち家を所有したことの
ない別居親族が相続し、申告期限まで引き続き所有

②特定事業用宅地

被相続人が事業用地として使っていた宅地で、400㎡までの部分を80%減額します。

以下の2つの条件を共に満たす必要があります。
ア)事業後継者が申告期限まで事業を継続していること
イ)その宅地を申告期限まで所有していること

③特定同族会社事業用宅地

被相続人が自ら株主の会社等(同族会社)に貸していた土地の事です。400㎡までの部分を80%減額します。

以下の2つの条件を共に満たす必要があります。
ア)相続税の申告期限においてその同族会社の役員であること
イ)その宅地を申告期限まで所有していること

④貸付事業用宅地

すでに説明した貸宅地やマンション等の賃貸業を営む場合の貸家建付地については、200㎡までの部分を50%減額します。

だれが不動産賃貸業を営んでいたかによって適用条件が異なります。

○被相続人が不動賃貸業を営んでいた場合(ともに満たす必要があります)
ア)後継者が申告期限まで事業を継続していること
イ)申告期限まで保有していること

○被相続人と同一生計親族が不動産賃貸業を営んでいた場合(ともに満たす必要があります)
ウ)相続開始直前から申告期限まで事業を継続していること
エ)申告期限まで保有していること

■2次相続で相続税負担が発生する理由

1.土地の財産評価

以上の解説をお読みいただければ分かるとおり、1次相続と2次相続の決定的な違いは、「土地評価」にあります。

つまり1次相続では土地を配偶者に生前贈与または相続取得させるための有効な手続きが2つも存在します。

しかし一方で2次相続では、大半の事例でその適用条件に合致しないわけです。

2.基礎控除

2次相続では当然ながら基礎控除(非課税枠)が1人分減ります。

つまり600万円分が減るわけです。

相続財産の総額が3000万円~5000万円のご家庭の場合、基礎控除(非課税枠)600万円の減少は大きなウエイトを占めます。

3.生命保険

1次相続では夫が自分の財産を生命保険として運用しているケースが多いでしょう。

その場合、相続人一人当たり500万円までは非課税として扱われます。

つまり、妻と3人の子が相続人であれば2000万円までの死亡生命保険金は非課税なのです。

それに対して2次相続で妻が生命保険に加入していない場合、上記の非課税枠を受けることができなくなります。

これらの理由で1次相続と2次相続では、相続税の負担が大きく異なるのです。