■私的自治の原則

1.遺産分割協議はどのように成立する?

遺産分割協議(調停も含む)は、

「相続人全員の合意」

で成立します。

実際の協議書には、相続人全員の実印の押印と印鑑証明書の添付を行います。

民法成立の背景には、

「私的自治の原則」

つまり、「法律行為に国家が介入することはない」という考え方があります。

相続人全員で合意しているならば、基本的に遺産分割協議は成立するわけです。

2.遺産分割協議に対立するものは?

「遺産分割は相続人の自由」

という考え方に対立する制度があります。

①「遺言」・・・○○に××を相続させる。または○○の相続分を1/3とする等。
②「法定相続分」・・・相続人の組み合わせにより、相続分が決められている。
③「分割基準」・・・誰が何を相続するかの基準(民法906条)
④「遺留分」・・・遺言があっても、最低守られるべき相続人の権利。

これら「私的自治」に対立する項目があったとしても、

「相続人全員が合意しているならそれでよい」

というのが民法の考え方です。つまり①~④に反する遺産分割協議も有効なのです。

ですので遺産分割協議は非常に重要で、それに参加する人たちの知識・情報量を最低限そろえた状態で決定していくのが理想なのです。

■遺産分割協議に唯一優先するもの

唯一「相続人全員の合意」でも対抗できないものが民法に規定されています。

それが「遺言による分割の禁止」(民法907条)です。

遺言者は相続人間の争いを防ぐ目的で、遺産分割の禁止期間を設定することができます。

最大期間は5年です。

5年あればクールダウンして落ち着いた環境で分割協議に臨めるだろうという考え方です。

この「遺言による分割禁止期間」だけは、いかに民法の私的自治の考え方があろうとも、逆らうことができないのです。

故人の暖かい考えを保護しよう、と言う趣旨です。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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