介護障害福祉事業を開業する方向けの相続税講座⑩|基礎から分かる贈与契約

基礎から分かる贈与契約

平成27年1月1日から相続税法が改正され、基礎控除額が以前の6割に減少しました。もはや、相続税は一部のお金持ちだけが払う税金ではなく、一般サラリーマンも対象となる大衆税へと変化しつつあります。

「相続税を少しでも安くしたい!」もしくは、「1円たりとて払いたくない!」といった人たちはたくさんいることでしょう。

そこで、今注目されている相続税対策が「贈与」です。

相続税対策の手法は、さまざまですが、贈与は、王道と言える手法です。誰でも手軽に行える点がメリットですが、思わぬ落とし穴もあります。

以下では、贈与の本質を解説いたします。

■契約の成立条件

1.贈与は、実は契約です!

贈与とは、簡単に言えば、プレゼント、つまり、タダで何かをあげることです。みなさんも、誰かにクリスマスプレゼントやお年玉をあげたり、もらったりしたことがありますよね。

このように、贈与は、ごく普通の日常生活上の行為のひとつです。

しかし、実は、法律的に言うと、贈与は立派な契約(法律行為)の一種なのです。民法の第549条~第554条に贈与に関するルールが規定されています。

したがって、単純に他人に何かをタダであげれば、必ず贈与契約が成立するとは限りません。民法で定められた有効な契約として成立しているかどうかがポイントになります。

では、そもそも契約とはどのようにすれば有効に成立するのでしょうか。

2.契約の成立条件とは?

契約は、一般的に「申込みの意思表示」と「承諾の意思表示」が合致することが最低条件です。

このように書くと、難しく感じるかもしれませんが、とても簡単なことです。

物を売ったり、買ったりする行為は、法律上は売買契約といいます。

ある人がおにぎりを売るために「このおにぎりを買ってくれませんか?」と申し出たとします。

それに対して「このおにぎりを買います!」と言えば、常識的に商談が成立したと思うはずです。

上記の「このおにぎりを買ってくれませんか?」という意思表示を法律用語では「申込みの意思表示」と呼んでいます。

一方、「このおにぎりを買います!」という意思表示を「承諾の意思表示」と呼んでいるにすぎないのです。

そして、お互いが納得しあって約束が成立している状態を「申込みの意思表示」と「承諾の意思表示」が合致していると呼ぶのです。

■贈与契約の特徴

1.贈与が有効に成立するためには?

では、具体的に贈与が法律的に有効に成立するためにはどのような状態が実現していればよいのでしょうか。

民法では、贈与とは以下のように規定されています。

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。(第549条)

要は、「これタダであげる!」という申込みの意思表示と「ありがとう、もらいます!」という承諾の意思表示が合致したときに贈与は契約として成立するのです。

2.口約束でもいいの!?

一般的にほとんどの契約は「申込みの意思表示」と「承諾の意思表示」が合致すれば成立します。つまり、口約束も法律的には立派に契約として有効な状態です。

したがって、贈与も契約である以上口約束で立派に契約として有効に成立します。

しかし、贈与はタダで金品を他人に渡す行為です。

後になって、「やっぱり、やめておこう」ということは、ありがちですし、後々トラブルになりやすい行為です。

したがって、民法は、書面によらない贈与は、履行の終わった部分を除いて、撤回することができることも定めています。

実務上も、不動産や高額の金銭を贈与する場合は、贈与契約書を作成することが通常です。高額な金品の贈与をお考えの方は、専門家にご相談されることを強くお勧めします。

3.へそくりは贈与か!?

最後に、具体例を一つあげましょう。

夫に黙って、妻が300万円のへそくりをしていたとしましょう。このへそくりは夫からの贈与にあたるのでしょうか。

上記の贈与の成立条件を考えて自分なりの答えを出してください。

答えは、「一般的に贈与には該当しません。」

夫には、妻に「このお金をタダであげる!」という意思表示が存在しないからです。

このように、贈与は本質を理解していないと思わぬ落とし穴がたくさんあります。

贈与は相続税対策の基本です。贈与について詳しくなっておいて損はありませんよ!

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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