サービス管理責任者(サビ管)・児童発達支援管理責任者(児発管)とは?令和元年研修制度改正も詳しく解説

介護保険事業の指定前研修

このコラムを読むと理解できること

・令和元年のサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者研修の制度変更が理解できる
・サービス管理責任者(サビ管)の要件が理解できる
・児童発達支援管理責任者(児発管)の要件が理解できる
・サビ管研修、児発管研修の仕組みが理解できる。

令和元年、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者研修に大改正が行われた。サービス管理責任者(サビ管)・児童発達支援管理責任者(児発管)は、就労移行支援、就労継続支援(A型、B型)、就労定着支援、、共同生活援助(障害者グループホーム)、生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービス事業を開業するための必須職種だ。このコラムでは福祉事業開業の専門家が、サビ管、児発管の制度について詳しく解説する。

令和元年度 サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者研修の見直し

令和元年、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者研修に大改正が行われた。この背景には増加する障害福祉事業所の品質の確保、不正防止などの観点があるものと思われる。実際に新研修制度には、一部条件緩和がみられるものの、概要としては厳格化の傾向にある。

見直しの概要(厳格化)

それでは実際にサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者研修がどのように厳格化されたのか、詳しく確認していこう。新研修制度の下では、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者となるためには、次の4つのハードルをクリアすることが定められた。

相談支援従事者 初任者研修の一部受講を義務化

障害者が保健、医療、福祉、就労、教育サービスを利用するための、援助スキルを習得するための初任者研修を受講することが定められた。

サービス管理責任者等研修を一本化

従来は介護、地域生活(身体、知的・精神)、就労、児童分野に分けられていたが、統一された。その結果、事業所の指定種別に応じた研修を選択する必要がなくなった。つまりサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者の区別なく、統一の研修内容となった。

OJT(実地業務)2年を義務化

相談支援従事者初任者研修、サービス管理責任者等研修(この2つを基礎研修と呼ぶ)終了後、2年間のOJT(実地業務)が義務化された。

実践研修を義務化

2年間のOJT後、実践研修が義務化された。この修了をもって、晴れてサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者として配置、勤務が可能となる。

経過措置

先に述べた通り、4つのハードルをクリアして初めてサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者としての配置、勤務が可能となる。さらにいうと、この4つのハードルの前には、実務要件(後述)が定められているため、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者として正式に配置、勤務することは相当にハードルが高くなったと言えよう。

しかし急激な制度変更を防ぐために、一定の経過措置が設けられている。ここではサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者研修の制度変更に関する経過措置について詳しく確認しよう。

統一カリキュラムに関する経過措置

従来は介護、地域生活(身体、知的・精神)、就労、児童分野に分けられていたサービス管理責任者等研修が、一本に統一されたことは先に述べた。しかし制度変更前の平成30年度以前(平成31年3月31日以前)にいずれかの分野の受講が完了していれば、統一研修を受講したものとみなされる

例えば、平成31年3月31日以前に、介護分野の受講のみを終えている場合であっても、地域生活(身体、知的・精神)、就労、児童分野等の各研修を終えているとみなされるのである。

制度急変に関する経過措置

平成18年4月1日~平成31年3月31日までにサービス管理責任者等研修を受講している場合、令和6年3月31日まで引き続きサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者として勤務することができる。この場合、令和6年3月31日までに更新研修を受講する必要がある。

2年間のOJTおよび実践研修義務化に関する経過措置

新研修制度では、基礎研修(相談支援従事者初任者研修、サービス管理責任者等研修)終了後2年間のOJTと実践研修が義務付けられているが、平成31年4月1日~令和4年3月31日までに基礎研修を終える受講者のうち実務要件を満たす者は、3年間に限りサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者としての要件を満たしているとみなされる。

つまり、2年間のOJTと実践研修の完了が3年間免除されるという意味だ。

【留意点】
サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者は、配置・勤務に必要な実務要件が異なる。そのため変更なく引き続きサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者として勤務することは可能だが、変更(例:サービス管理責任者→児童発達支援管理責任者)の場合には実務要件が不足する場合があるため注意しよう。

2年間のOJTに関する経過措置

同じく2年間のOJT義務化により、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者として必要とされる実務経験年数よりも2年短い段階から、基礎研修(相談支援従事者初任者研修、サービス管理責任者等研修)を受講することが出来るようになった。

ここで短縮される2年間は、基礎研修終了後の2年間のOJTによりカバーするという趣旨だ。

サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者の配置義務

ここではサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者の配置義務について解説する。サービス管理責任者(サビ管)、児童発達支援管理責任者(児発管)は、それぞれ次の福祉サービス事業所で、提供サービスの主軸を担う職種だ。一覧表で確認しよう。

種別 配置が必要な指定種別
サービス管理責任者(サビ管) 就労移行支援
就労継続支援(A型、B型)
就労定着支援
自立訓練(生活・機能)
共同生活援助(障害者グループホーム)
生活介護 等
児童発達支援管理責任者(児発管) 児童発達支援
放課後等デイサービス

このうち、共同生活援助を除くすべての指定種別で常勤雇用が義務付けられている。共同生活援助のみ非常勤勤務が可能だ。

サビ管、児発管が担当する主な業務

サビ管、児発管が担う最も大きな仕事は、個別支援計画の作成だ。個別支援計画が作成されずにサービス提供をしてしまうと、報酬に一定の減算がかかるので注意しよう。

個別支援計画作成を含め、サビ管、児発管が担当する主な業務は次の通りである。

サビ管・児発管の主な担当業務

・個別支援計画の作成
・面接によるアセスメント(保護者、障害児の希望する生活、課題の把握)
・自社の提供サービス以外に必要な福祉サービスの把握
・個別支援計画のモニタリング(計画が適切に実行されていることの確認)
・障害児、家族に対する相談援助
・支援員はじめ、他の従業員に対する技術指導と助言

サビ管、児発管が福祉サービスの主軸を担う職種であることを理解しよう。

サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者の実務要件

サービス管理責任者(サビ管)、児童発達支援管理責任者(児発管)は、公的な資格試験を合格することで認定される職種ではない。よく「サビ管(児発管)を資格を持っている」との表現を聞くことがあるが、正確には「サビ管(児発管)の要件を満たしている」となる。

ここではサビ管、児発管の要件を満たすための要件の一つである、実務要件について確認しよう。サビ管、児発管になるための実務年数要件は、大枠で考えると次の表の通りとなる。

業務

必要年数

相談支援業務

5年

直接支援業務

8年

資格Aによる直接支援業務

5年

資格Bによる相談&直接支援業務

3年

以下それぞれの詳細について解説する。

相談支援業務とは?

サビ管、児発管になるために必要な相談支援業務とは、障害者(障害児)の自立相談に応じ、助言、指導、支援を行うことを指す。

具体的には地域生活支援事業、障害児相談支援事業などが該当する。

直接支援業務とは?

サビ管、児発管になるために必要な直接支援業務とは、障害者(障害児)に対して、入浴・排泄・食事その他の介護を行うこと、または要介護者、介護スタッフに対して指導を行うことを指す。

資格Aによる直接支援業務とは?

ここで言う資格Aとは次の通り。

資格A

・社会福祉主事任用資格者
・訪問介護員2級(初任者研修)以上
・保育士
・児童指導員任用資格
・精神障害者社会復帰指導員

これらの資格を有しつつ、障害者・障害児に対する直接支援業務を行った期間が対象となる。よって次のような期間は対象とならない点に注意しよう。

直接支援業務の対象にならない例

・訪問介護員2級以上の者による、老人介護
・保育士による、一般保育所による保育士業務

要するに障害者・障害児に対する業務ではない期間は算定されないのだ。

資格Bによる相談&直接支援業務

ここで言う資格Bとは次の通り。

資格B

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士又は精神保健福祉士

これらの資格業務に関する必要年数は次の通りだ。

資格Bに関する必要年数

・サビ管実務要件の場合は3年
・児発管実務要件の場合は5年

以上を満たした上で、さらに相談支援+直接支援の合計期間が3年必要となる。つまり単に資格Bとしての従事期間だけでは、サビ管・児発管の実務要件期間を満たさない点に注意しよう。

サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者になるための研修

サビ管研修、児発管研修を受講することの難しさ

次に、基礎研修(相談支援従事者初任者研修、サービス管理責任者等研修)について確認しよう。

サビ管、児発管になるためには実務要件だけでは足りない。実務要件を満たした状態で、各都道府県が実施する基礎研修(相談支援従事者初任者研修、サービス管理責任者等研修)を受ける必要がある。

このサビ管研修、児発管研修が相当高いハードルとなるのだ。理由は次の通りだ。

・年に2~3回しか実施されない
・申し込めば必ず受講できるというわけではない

近年、障害福祉事業者数が増加傾向にあるため、各地でサビ管、児発管が不足している。実務経験年数を満たしたサビ管、児発管候補者の研修申し込みが殺到しているのである。

そこで各都道府県の研修実施機関では、まず現職場でサビ管、児発管として就任する必要性のある人から優先的に受講を認めている。

よって、開業計画中の事業所でサビ管、児発管に就任予定の人が、サビ管、児発管研修を申し込んでも、相当の倍率を勝ち抜かなければ研修を実施することが出来ない。

著者情報(制度上の確証なし)

・現職場からの推薦状がない人は抽選となるらしい
・新規開業の場合、先に法人を設立して自己推薦する方法もあるらしい

サビ管研修、児発管研修の種類と所要時間

サビ管研修、児発管研修の種類と所要時間は次の通りだ。

研修の所要時間

・相談支援従事者初任者研修 11時間
・基礎研修 15時間
・実践研修(令和3年度から実施)14時間30分

研修受講のための実務要件を満たしている場合は、直ちに都道府県のサビ管研修、児発管研修の日程を調査し、申込期日に遅れないように準備しよう。

このコラムのまとめ

以上がサービス管理責任者(サビ管)・児童発達支援管理責任者(児発管)の実務要件と研修要件だ。

就労移行支援、就労継続支援(A型、B型)、就労定着支援、生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービス事業所を開業するためには、サビ管または児発管が欠かせない。

代表者になるあなた自身がサビ管、児発管の要件を満たしていることが最も望ましい。サビ管、児発管を雇用して事業を始めると、常に退職リスクを背負いながらの事業運営を余儀なくされるからだ。

サビ管、児発管の人選の目途が立ったら、次は具体的な開業計画の立案だ。是非早い段階で、介護・福祉専門の社労士・行政書士のタスクマン合同法務事務所にご相談を。

 

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