令和6年介護報酬改定【第1回 】改定概要をどこよりも分かりやすく!|基本報酬と処遇改善加算率のアップ一本化
令和6年度介護報酬改定について1月22日、介護給付費分科会は「改正を了承する」との報告を行いました。これにより全ての介護事業所は4月以降の対応に迫られます。福祉起業塾では全5回に分けて、令和6年度介護報酬改定の内容を解説していきます。第1回のテーマは居宅4事業の基本報酬改定と処遇改善加算率のアップおよび一本化です。
このコラムの推奨対象者
・令和6年度 介護報酬改定について関心のある方
・訪問介護、通所介護、訪問看護、居宅介護支援の基本報酬の変更を正しく理解したい方
・処遇改善加算の改定と影響の詳細について知りたい方
・事業所の対応とアクションの具体的情報を集めている方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年1月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績670社(北海道~沖縄)、本社を含め7つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年度介護報酬改定の概要について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
基本報酬の改定
冒頭にお詫びいたします。介護報酬改定の範囲は全事業で多岐に渡るため、どうしても網羅的に解説することが出来ません。そこで今回から全5回のコラムで取り上げるのは訪問介護、訪問看護、通所介護、居宅介護支援の4事業とさせて頂きます。
その他施設系の事業に従事されている方には申し訳ありませんが、予めご了承をお願い致します。それでは最初に基本報酬の改定について、4事業を横断的に見ていきたいと思います。
訪問介護は基本報酬ダウン
まずは訪問介護からです。訪問介護の基本報酬は身体介護、生活援助、通院等乗降介助ともにダウンします。
訪問介護の基本報酬がダウンする原因は、令和5年度の概況実態調査にあります。
令和3年度収支率 (4年度調査) |
令和4年度収支率 (5年度調査) |
増減 | |
訪問介護 | 5.8% | 7.8% | +2.0% |
通所介護 | 0.7% | 1.5% | +0.8% |
訪問看護 | 7.2% | 5.9% | ▲1.3% |
居宅介護支援 | 3.7% | 4.9% | +1.2% |
通所介護、訪問看護、居宅介護支援に比べて、訪問介護はご覧のとおり前年対比で収支がある程度改善しているとの調査結果が出たためです。
このように、訪問介護では概況実態調査結果のために基本報酬がダウンするという憂き目にあったわけですが、納得しがたい経営者の方が多数おられると思います。
この点は厚生労働省も危惧しているようで、訪問介護の基本報酬説明箇所の欄外に、「処遇改善加算の方で高い加算率で改定しましたよ」とのコメントを添えています。処遇改善加算についてはこのコラムの後半でご説明します。
通所介護は基本報酬アップ
続いて通所介護です。
通所介護では全ての事業所規模で基本報酬がアップします。これは地域密着型通所介護でも同様です。ご覧の一覧は通常規模型の7時間以上8時間未満の場合の利用1回あたりの基本報酬ですが、その他の利用時間区分においても基本報酬はアップします。
訪問看護は基本報酬アップするもほぼ据え置き
続いて訪問看護です。
訪問看護の基本報酬も、通所介護同様に全ての時間区分でアップしますが、そのアップ幅は極めて小さく、据え置きに近いと言ってもよいでしょう。なお今回ご説明する4事業のうち、訪問看護だけが令和6年4月ではなく6月改定となる点にご注意ください。診療報酬改定時期に合わせるためです。
居宅介護支援は基本報酬アップ
最後に居宅介護支援、ケアプランセンターです。
居宅介護支援の基本報酬は取り扱い件数に応じて区分が設けられていますが、全ての件数区分でアップします。また居宅介護支援費はⅠとⅡに区分されていますが、いずれも基本報酬はアップします。
居宅介護支援費Ⅱというのは、令和3年度の報酬改定で設けられた区分です。基本報酬はケアプランの取扱件数の増加に応じて逓減していく仕組みですが、IT機器の導入により、その逓減度合いを緩和するという措置が講じられています。
処遇改善加算率のアップと一本化
ここからは処遇改善加算について解説していきます。訪問看護、居宅介護支援は処遇改善加算の対象外ですので、訪問介護と通所介護に限定して解説していきます。
結論から申しますと、現行の処遇改善加算率に比べて、訪問介護で2.1%アップ、通所介護で1%アップとなります。「訪問介護では基本報酬のダウンがあった分、処遇改善加算の方で高い改定率になった」と先に申し上げました。今後は人件費とその他諸経費の支出管理を、より一層シビアに見ていく必要があります。もう少し詳しく見ていきましょう。
現行の処遇改善加算は3種類で構成されています。処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算です。処遇改善加算は加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、特定処遇改善加算は加算Ⅰ、Ⅱ、またはなし、ベースアップ加算はありかなし、となり組み合わせは3×3×2で18通りとなります。
一方、6月から始まる新加算制度ではこれらが4通りに集約されます。現行18通りある処遇改善加算の取得パターンを4通りに集約することで、加算率が下がる事業所が発生します。そのような事業所を救済する必要があるため、加算率が下がっても令和7年3月31日までは現行加算率を維持することができます。
新旧の加算区分の対応を確認します。
新加算Ⅰ:現行の処遇Ⅰ、特定Ⅰ、ベア加算
新加算Ⅱ:現行の処遇Ⅰ、特定Ⅱ、ベア加算
新加算Ⅲ:現行の処遇Ⅰとベア加算
新加算Ⅳ:現行の処遇Ⅱとベア加算
この4つの区分を現行の加算制度と比較した場合に、ご覧の通り、訪問介護で2.1%、通所介護で1%アップするというわけです。障害福祉サービスについては内容決定があり次第、別のコラムで情報提供致します。
事業所のアクション
最後に介護報酬改定情報を踏まえて、訪問介護事業所、通所介護事業所が令和6年1月、2月にどのようなアクションを起こせばよいのかご提案をしたいと思います。
今回のコラムでご説明した通り、令和6年6月の処遇改善加算一本化タイミングで、訪問介護で2.1%、通所介護で1%加算率がアップします。
それに先立ち、令和6年2月から5月は臨時措置として補助金が支給されます。補助金の交付率は訪問介護で1.2%、通所介護で0.7%です。
補助金はベア加算の取得が必須要件となりますが、4月1日にベア加算を取得する事業所も対象となります。
これらの情報を総合してご提案しますと、
補助金の月間受給金額をシミュレーションし、令和6年2月に賃上げを実施。
ベア加算を未取得の場合は必ず4月1日付で取得できる様に準備を進める。
ということになります。
ここで賃上げした部分をそのまま継続しても、6月の加算率アップで十分にカバーすることができます。
短期間のうちに就業規則・賃金規程の見直しを数度実施することになりますが、このような緊急対応は当社が最も得意としている業務ですので、お困りの際は是非当社までお問い合わせ下さい。
まとめ
今回のコラムでは令和6年介護報酬改定と処遇改善加算率のアップについて解説しました。このコラムの内容を端的にまとめると、以下の通りとなります。
ポイント
1.概況実態調査の結果を踏まえて、訪問介護では基本報酬がダウンし、通所介護、訪問看護、居宅介護支援では基本報酬がアップします。
2.処遇改善加算は訪問介護で2.1%アップ、通所介護で1%アップします。また新たな処遇改善加算が6月から開始されます。
3.2月~5月の補助金を活用することで、従業員の賃上げ時期を早めることができます。
処遇改善加算の制度設計については、当社でも通常業務としてご対応しております。処遇改善加算の制度設計について、業務の依頼先をご検討中の方は、ご遠慮なくこちらからお問合せ下さい。最後までお読み頂き、まことにありがとうございます。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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