令和6年介護報酬改定【第4回 】訪問看護編|リハ職による訪問看護時の減算、専門管理加算、BCP未実施減算は?

令和6年介護報酬改定【第4回 】訪問看護編|リハ職による訪問看護時の減算、専門管理加算、BCP未実施減算は?
井ノ上剛(社労士・行政書士)

当サイトでは全5回に分けて、令和6年度介護報酬改定の内容を解説しています。
第4回は訪問看護編です。訪問看護では専門性の高い事業所への加算が拡大する反面、リハ職中心の事業所に減算が適用される等、多数の改定が行われます。今回はこれら訪問看護の報酬改定について詳しく解説します。なお改定は診療報酬に合わせて6月となります。

このコラムの推奨対象者

・リハ職の訪問看護時の減算について不安を感じている方
・専門管理加算やターミナルケア加算の単位数アップなど、新しい加算制度の詳細について知りたい方
・高齢者虐待防止措置や業務継続計画(BCP)に関する基準の変更について正しく理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年2月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績677社(北海道~沖縄)、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年介護報酬改定のうち、訪問看護に焦点当てて詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

リハ職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)による訪問看護時の減算

リハ職中心の訪問看護ステーションへの報酬減額措置が講じられることになりました。ここでは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のことを「リハ職」と総称して呼ぶことにします。

訪問看護ではすでに看護師による訪問とリハ職による訪問で、基本報酬に差が設けられています。令和6年度報酬改定では、本来の訪問看護に求められるサービス提供に立ち返り、一定の条件の下でリハ職による訪問看護の実施に新たな減算が適用されます。

具体的な条件を表で確認しましょう。

リハ職による訪問看護時の減算

上段が訪問看護、下段が介護予防訪問看護です。上段の訪問看護から解説します。

まず事業所の評価を縦軸、横軸の2つの観点から行います。縦軸が前年度の訪問回数で、看護職員がリハ職以上となるか、リハ職未満か、横軸が緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算のいずれかの算定有無です。

緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算の個別説明はここでは省略しますが、いずれも専門性やサービス提供体制が充実している訪問看護事業所で適用できる加算制度です。以下、これら3つの加算を総称して「評価対象の加算」と呼ぶことにします。

看護職員の訪問回数がリハ職以上で、かつ評価対象の加算のいずれかを算定している場合には減算が生じませんが、評価対象の加算を全く算定していない場合には8単位減算が生じます。また看護職員の訪問回数がリハ職未満である場合には、評価対象の加算の有無にかかわらず、8単位減算が生じます。

続いて下段の介護予防訪問看護です。介護予防訪問看護ではすでに、12カ月を超えてリハ職が訪問する場合に5単位減算が生じていますが、この減算区分はそのままに、先に説明した通常の訪問看護と同様の8単位減算が新たに適用されます。この8単位減算を受けつつ、12カ月を超えてリハ職が訪問する場合に、さらに15単位の減算が適用されることになります。

このようにリハ職が中心となる訪問看護事業所には、厳しい報酬改定内容となっているため、人員配置の見直しを迫られることになります。

専門管理加算の新設

緩和ケア、褥瘡ケアまたは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアの専門研修を受けた看護師又は特定行為研修を修了した看護師が、計画的な管理を行った場合には、新たに専門管理加算として1カ月あたり250単位の加算を算定することができます。要件を詳しく見ていきましょう。

訪問看護の専門管理加算の新設

前段の緩和ケア等の対象利用者としては、

・悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法を行っている利用者
・真皮を越える褥瘡の状態にある利用者
・人工肛門又は人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者

となります。

後段は、診療報酬における手順書加算を算定する利用者が対象となり、特定行為研修としては、気管カニューレの交換、胃ろうカテーテルの交換等が対象となります。

退院当日訪問時の初回加算(Ⅰ)の新設

訪問看護の退院当日初回加算Ⅰの新設

現行の初回加算を、退院当日訪問の加算区分(Ⅰ)と翌日以降訪問の加算区分(Ⅱ)に分類し、単位数に差を設ける改定が行われます。具体的な単位数は初回加算(Ⅰ)で350単位、(Ⅱ)で現行通り300単位です。

なお、初回加算を算定する場合には、退院時共同指導加算を算定することはできません。なお退院時共同指導加算においては、これまで文書提供が義務付けられていたところ、令和6年度報酬改定で文書要件が撤廃されました。

ターミナルケア加算の単位数アップ

介護保険制度と医療保険制度は、その根本的な目的が異なりますが、在宅でのターミナルケアに焦点を当てると、共通項目が多数認められます。

具体的には、症状管理、精神的サポート、生活支援、医療的ケア、看取りなどです。そのため、訪問看護事業所におけるターミナルケアの実施を評価するとの観点から、死亡月におけるターミナルケア加算を現行の2000単位から2500単位に増額する改定が行われます。

口腔連携強化加算の新設

事業所職員から歯科医療機関及び介護支援専門員へ、利用者の口腔状況を連携する場合に、1回50単位、1カ月に1回に限り、口腔連携強化加算が新設されます。

口腔連携強化加算の適用のためには、利用者の個人情報の連携が伴う事から、利用者本人の同意が必要となる点に注意しましょう。

緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の新設

緊急時訪問看護加算Ⅰの新設

現行の緊急時訪問看護加算を「利用者又はその家族等からの電話相談に常時対応できる体制にあること」と位置づけ、加算区分を緊急時訪問看護加算(Ⅱ)として1カ月574単位を据え置き、新たに緊急時訪問看護加算(Ⅰ)を600単位で設け、「緊急対応業務の負担軽減について十分な管理体制が敷かれていること」を要件とします。ここで言う「管理体制」とは、例えば、

・各看護師のシフト・休憩・休日を適切に管理すること
・情報共有システムの導入で利用者の情報を即時に把握できること
・緊急対応時のマニュアルを整備し、看護師個人の負担を軽減すること
・看護師のメンタルヘルスの適切なサポート体制を敷くこと

以上が想定されます。また次の全ての要件に合致する場合、看護師等以外の職員も24時間体制での連絡相談を受けることができるよう、通知が改正されます。具体的には

ア)対応マニュアルの整備
イ)保健師・看護師との連絡体制の構築
ウ)保健師・看護師による記録
エ)管理者による勤務状況の管理
オ)ア~エについて利用者とその家族の同意
カ)都道府県知事への届出

以上となります。

BCP(業務継続計画)未実施減算

BCP(業務継続計画)については、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。BCP作成が未実施の場合、基準違反となり、さらに1年の経過措置期間を経て令和7年4月からは1%の減算が適用されます。

BCP対応がまだの方は、一度当社までご相談ください。

高齢者虐待防止措置未実施減算

高齢者虐待防止措置についても、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。高齢者虐待防止措置が未実施の場合、基準違反となり、1%の減算が適用されます。高齢者虐待防止措置の具体的な要件としては4点あり、

対策検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
虐待防止指針の整備
虐待防止研修の定期実施
虐待防止担当者配置

以上となります。

身体的拘束等の適正化の推進

訪問看護は利用者の生活空間でのサービス提供であることから、身体的拘束を行うという状況が想定されず、指定基準にも明記されていなかったのですが、身体的拘束を行う必要が生じる可能性がある、との観点から今回の報酬改定で明文化されます。この場合の要件としては2点あり、

・利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限る
・身体的拘束等を行う場合には、理由と実施状況を記録する

という点です。これらは運営基準に明記されるにとどまり、現段階では報酬減算の対象とはなりません。

テレワークの取扱い

人員配置基準で必要人数が定められている職種に関して、個人情報を適切に管理し、利用者対応に支障が生じないことを前提に、テレワーク(在宅勤務)が認められる旨が明文化されます。

これにより、例えば管理者に専従する看護師が、テレワークで業務対応できる可能性が広がります。

過疎地域への対応

特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算とは、例えば離島や中山間地域などサービス提供が困難な地域に居住する利用者へのサービス提供や、事業所自体がその地域にある場合に算定できる加算制度です。

令和6年度の報酬改定では、これらの地域に、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」で規定する「過疎地域」が含まれることが明文化されました。

まとめ

今回のコラムでは令和6年度、訪問看護報酬改定について解説しました。このコラムの内容を端的にまとめると、以下の通りとなります。

・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護に新たな減算が適用されることになり、人員配置の見直しが必要となります。
・専門管理加算の新設や退院当日訪問時の初回加算(Ⅰ)の新設など、特定の看護サービス提供に対する報酬が見直されます。
・ターミナルケア加算の単位数がアップし、末期患者への看護サービスの評価が高まります。
・高齢者虐待防止措置未実施減算や業務継続計画(BCP)未実施減算など、事業所の運営基準の遵守がより厳しく求められるようになります。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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