令和6年介護報酬改定【第5回 】居宅介護支援編|特定事業所加算、ケアマネ1人当たり件数の変更、同一建物ケアマネジメント減算は?

令和6年介護報酬改定【第5回 】居宅介護支援編|特定事業所加算、ケアマネ1人当たり件数の変更、同一建物ケアマネジメント減算は?
井ノ上剛(社労士・行政書士)

当サイトでは全5回に分けて、令和6年度介護報酬改定の内容を解説しています。第5回は居宅介護支援編です。居宅介護支援(ケアプラン事業所)では特定事業所加算、ケアマネジャー1人当たり件数の変更、同一建物ケアマネジメント減算等、多数の改定が行われます。今回はこれら居宅介護支援の報酬改定について詳しく解説します。

このコラムの推奨対象者

・居宅介護支援の令和6年度報酬改定のうち特定事業所加算について情報整理したい方
・居宅介護支援のケアマネ1人当たり件数の変更点を理解したい方
・居宅介護支援の同一建物ケアマネジメント減算について不安がある方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年2月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績677社(北海道~沖縄)、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年介護報酬改定のうち、居宅介護支援に焦点当てて詳しく解説します。

同じ内容を動画でも解説しています。

特定事業所加算の見直し

多様化する現代社会の中で、介護支援専門員には介護保険以外の領域、具体的にはヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等にも知識を深めることが求められています。これらの社会問題の一部は、令和6年4月以降の法定研修にも盛り込まれます。

そこで、これらの課題に積極的に取り組み、質の高いケアマネジメントを実施している事業所を評価するために、特定事業所加算の見直しが行われます。算定要件のうち、変更のある部分を抜粋して解説します。

居宅介護支援の特定事業所加算の見直し

表の(1)主任介護支援専門員、(2)介護支援専門員の常勤要件を据え置きつつ、他職種兼務が認められます。

続いて(8)が先ほど説明した通り、ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、介護保険以外の領域の研修への参加です。

括弧(9)では、特定事業所加算の算定要件から、運営基準減算が除外されます。運営基準減算とは、例えばケアプラン作成時に利用者面接を行っていない場合や、モニタリングの記録がない場合など、8項目のいずれかに該当する場合に50%の報酬減算が行われる制度です。運営基準減算が生じている場合、特定事業所加算の算定ができなかったところ、その制限が除外されます。

また(10)では、ケアマネジャー1人当たりのケアプラン取扱件数の変更に伴い、対象人数がそれぞれ5名増加します。

これらの算定要件の変更に伴い、全ての特定事業所加算区分で、14単位増加する報酬改定が行われます。

介護支援専門員1人当たりの取扱件数の見直し

介護支援専門員1人当たりの取扱件数の見直し

介護支援専門員1人当たりの取扱件数の見直しが行われます。現行の運営基準では介護支援専門員1人あたり35件とされていますが、報酬告示の方では報酬逓減制の適用が原則40件から、ICT機器の活用または事務職員を配置している場合は居宅介護支援費(Ⅱ)による逓減緩和措置の適用により逓減開始が45件からとされています。

つまり36件から39件までは運営基準には反するものの、報酬逓減が行われないという不整合があります。

そこで運営基準と報酬告示の一致を図ることを目的として、居宅介護支援専門員1人当たりの取扱件数が44件に改められ、報酬逓減制の適用が45件から、居宅介護支援費(Ⅱ)による逓減緩和措置の適用により50件からに変更されます。

同時に2つの変更点があるため、併せて解説します。

1点目は居宅介護支援費(Ⅱ)の算定要件です。現行の算定要件は「ICT機器の活用または事務職員の配置」とされているところ、「ケアプランデータ連携システムの活用及び事務職員の配置」に変更されます。つまり事務職員の配置が必須になるわけです。

2点目は介護予防支援の利用者の人数換算方法の変更です。現状、介護予防支援の利用者の人数換算は2分の1、つまり2名で1人として計算しているところ、3分の1換算、つまり3名で1人に変更されます。

この背景には令和6年4月以降、事業所が市町村から直接介護予防支援事業者として指定を受ける制度が開始し、介護予防支援の利用者数の増加が見込まれる点が挙げられます。

ケアプランの中の各介護サービス割合、同一事業者のサービス提供割合の説明

ケアプランの中の各介護サービス割合、同一事業者のサービス提供割合の説明義務が緩和されます。

ケアマネジメント公正中立性を確保するため、居宅介護支援事業所には、前6か月間に作成したケアプラン中の各介護サービス割合と、同一事業者のサービス提供割合の説明義務が課せられています。

この説明のための事務負担が重く、また説明することで逆にサービス提供割合の高い事業者が選ばれるといった、マイナスの影響を指摘する声が挙がっていました。そこで、この説明義務を「説明努力義務」に留めるよう基準改正が行われます。

同一建物ケアマネジメント減算

訪問介護における同一建物減算に近い減算制度が、居宅介護支援にも適用されます。具体的な適用要件を見ていきましょう。

居宅介護支援の同一建物ケアマネジメント減算

減算の対象となる建物は2種類あり、

1点目が利用者が居宅介護支援事業所と同一建物、同一敷地の建物、隣接敷地の建物に入居している場合です。この区分は人数に関係なく減算が生じます。2点目が距離は離れていても、20人以上の利用者が居住する建物です。

これらに該当する場合、5%の同一建物ケアマネジメント減算が生じます。

以下、参考までに関連制度をご説明しておきます。

訪問介護事業では令和6年度報酬改定で、同一建物減算が強化され、現行の3種類の減算区分に加えて、第4の減算区分が新たに設けられます。

訪問介護の同一建物居住者減算

具体的には前6月間訪問介護サービスの提供総数のうち、同一建物等に居住する者が90%以上の場合、12%の報酬減算が適用されることになります。

また居宅介護支援では、2006年度から特定事業所集中減算制度が設けられています。特定事業所集中減算とは、居宅介護支援事業所が作成するケアプランで、同一の介護サービス事業者の割合が80%以上に集中している場合に、200単位の減算が適用されるというものです。2015年以前は集中度合いが90%以上とされていたところ、2015年以降80%以上に対象が広がりました。

令和6年度、居宅介護支援における同一建物ケアマネジメント減算も含めて考えると、サ高住をはじめとする高齢者住宅の居住者に対して、限られた居宅介護支援事業所、訪問介護事業所が集中的にサービスを提供するケースの増加に伴い、年度を追うごとに新たな減算制度が適用され続けている、という図式になります。これは、介護報酬が業務に要する手間・コストを評価するものであることに起因するものです。

同一建物に集中的にサービス提供している事業所は、今回の改正点を踏まえて業務バランスの再検討が必要となりそうです。

入院時情報連携加算の見直し

入院時情報連携加算について、入院時の迅速な情報連携をさらに促進する観点から、情報連携期限を短縮化するとともに、加算単位数がアップします。

居宅介護支援の入院時情報連携加算の見直し


現行の入院時情報連携加算では、医療機関に対する利用者情報の提供期限が、加算区分(Ⅰ)で入院後3日以内200単位、加算区分(Ⅱ)で7日以内100単位とされています。

令和6年度の報酬改定では、加算区分(Ⅰ)で入院当日250単位、加算区分(Ⅱ)で3日以内200単位に短縮化されます。

なお、入院時刻が居宅介護支援事業所の営業時間終了後であった場合、情報提供期限はそれぞれの加算区分で1日延長される改正もあわせて行われます。

通院時情報連携加算の見直し

現行、利用者が医療機関の医師の診察を受ける際に、介護支援専門員が同席することで、50単位の通院時情報連携加算が算定されるところ、この対象に歯科医療機関の歯科医師による診察時の同席も含まれるよう算定要件が改正されます。利用者の口腔衛生状況の適正管理を目的とするものです。

ターミナルケアマネジメント加算等の見直し

ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患を末期の悪性腫瘍に限定せず、医師による医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断した者も対象に含める見直しが行われます。算定単位数は400単位に据え置きです。

居宅介護支援のターミナルケアマネジメント加算と特定事業所医療介護連携加算の見直し

ターミナルケアマネジメント加算の対象拡大にともない、特定事業所医療介護連携加算の算定対象のハードルが上がります。

具体的には、特定事業所医療介護連携加算の算定要件は現行、前々年度の3月から前年度の2月までのターミナルケアマネジメント加算を5回以上算定することが要件であるところ、15回以上に拡大されます。

BCP(業務継続計画)未実施減算

BCP(業務継続計画)については、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。BCP作成が未実施の場合、基準違反となり、さらに1年の経過措置期間を経て令和7年4月からは1%の業務継続計画未実施減算が適用されます。

BCP対応がまだのお客様は、一度当社までご相談ください。

高齢者虐待防止措置未実施減算

高齢者虐待防止措置についても、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。高齢者虐待防止措置が未実施の場合、基準違反となり、1%の減算が適用されます。高齢者虐待防止措置の具体的な要件としては4点あり、

対策検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
虐待防止指針の整備
虐待防止研修の定期実施
虐待防止担当者配置

以上となります。

身体的拘束等の適正化の推進

居宅介護支援では利用者の身体的拘束を行うという状況が想定されず、指定基準にも明記されていなかったのですが、身体的拘束を行う必要が生じる可能性がある、との観点から今回の報酬改定で明文化されます。この場合の要件としては2点あり、

・利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限る
・身体的拘束等を行う場合には、理由と実施状況を記録する

という点です。これらは運営基準に明記されるにとどまり、現段階では報酬減算の対象とはなりません。

ケアプラン作成に係る「主治医」の明確化

訪問リハ、通所リハをケアプランに組み入れる場合、主治医の指示を確認する必要があります。

令和6年度の報酬改正では、退院後早期に訪問リハ、通所リハを開始するために、「主治医」に「入院中の医療機関の医師」を含むことが明確化されます。

オンラインモニタリングの取り扱い

利用者とのモニタリングについては、運営基準で「利用者及びその家族、介護サービス事業者等との連絡を継続的に行い、少なくとも1カ月に1回利用者の居宅を訪問して面接すること、また少なくとも1カ月に1回、モニタリングの結果を記録すること」が定められています。

令和6年度報酬改定では、モニタリング方法にオンライン会議が追加されます。ただしオンライン会議を用いる場合には、サービス担当者会議での合意と、利用者が家族のサポートでオンライン会議の利用ができる旨の合意を得た上で、少なくとも2カ月に1回は利用者の居宅を訪問して面接する必要があります。

テレワークの取扱い

個人情報を適切に管理し、利用者対応に支障が生じないことを前提に、テレワーク(在宅勤務)が認められる旨が明文化されます。

これにより、居宅介護支援員がテレワークにより業務対応できる可能性が広がります。

過過疎地域への対応

特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算とは、例えば離島や中山間地域などサービス提供が困難な地域に居住する利用者へのサービス提供や、事業所自体がその地域にある場合に算定できる加算制度です。

令和6年度の報酬改定では、これらの地域に、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」で規定する「過疎地域」が含まれることが明文化されました。

まとめ

今回のコラムでは令和6年度、訪問看護報酬改定について解説しました。このコラムの内容を端的にまとめると、以下の通りとなります。

・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護に新たな減算が適用されることになり、人員配置の見直しが必要となります。
・専門管理加算の新設や退院当日訪問時の初回加算(Ⅰ)の新設など、特定の看護サービス提供に対する報酬が見直されます。
・ターミナルケア加算の単位数がアップし、末期患者への看護サービスの評価が高まります。
・高齢者虐待防止措置未実施減算や業務継続計画(BCP)未実施減算など、事業所の運営基準の遵守がより厳しく求められるようになります。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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