令和6年介護報酬改定【第3回 】通所介護編|BCP策定未実施減算は?高齢者虐待防止措置未実施減算は?認知症加算の要件変更は?
当サイトでは全5回に分けて、令和6年度介護報酬改定の内容を解説しています。第3回は通所介護編です。通所介護ではBCP策定未実施減算、高齢者虐待防止措置未実施減算、認知症加算の要件変更など多数の報酬改定が行われます。今回のコラムではこれらを踏まえ、令和6年度通所介護の報酬改定について詳しく解説します。
このコラムの推奨対象者
・令和6年介護報酬改正で通所介護の改正部分を理解したい方
・BCP策定未実施減算の内容を整理したい方
・高齢者虐待防止措置未実施減算に不安を感じている方
・認知症加算の要件変更を正しく理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年2月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績675社(北海道~沖縄)、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年介護報酬改定のうち、通所介護に焦点当てて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
BCP(業務継続計画)未実施減算
BCP(業務継続計画)については、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。
BCP作成が未実施の場合、基準違反となり1%の業務継続計画未実施減算が適用されます。ただし感染症対策マニュアルと非常時災害マニュアルを作成している場合には、1年間に限り減算適用が免除されます。
BCP対応がまだの方は、一度当社までご相談ください。
高齢者虐待防止措置未実施減算
高齢者虐待防止措置についても、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。高齢者虐待防止措置が未実施の場合、基準違反となり、1%の高齢者虐待防止措置未実施減算が適用されます。
高齢者虐待防止措置の具体的な要件としては4点あり、
対策検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
虐待防止指針の整備
虐待防止研修の定期実施
虐待防止担当者配置
以上となります。
身体的拘束等の適正化の推進
続いて身体的拘束等の適正化について解説します。
通所介護では身体的拘束について、指定基準への明記がなかったのですが、身体的拘束の必要が生じる可能性がある、との観点から今回の報酬改定で明文化されます。この場合の要件としては2点あり、
・利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限る
・身体的拘束等を行う場合には、理由と実施状況を記録する
という点です。これらは運営基準に明記されるにとどまり、現段階では報酬減算の対象とはなりません。
認知症加算の見直し
通所介護における認知症加算は、認知症行動のある利用者に対して、特別のケア体制を敷く事業所に対する加算です。
現行の認知症加算での1日60単位という単位数を据え置き、従業員に対する技術指導会議を定期的に開催することが算定要件に追加されます。
同時に利用者に占める認知症の方の割合に関する要件が緩和されます。具体的には、前年度又は直近前3カ月間の利用者総数のうち,認知症の方が占める割合が現行20%以上のところ、15%以上に緩和されます。
ADL維持等加算の見直し
通所介護におけるADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)を6カ月評価し、その維持改善の度合いによって算定できる加算です。
現行のADL維持等加算区分Ⅱにおいて、ADL利得の平均が2以上とされているところ、3以上に改められます。
入浴介助加算の見直し
現行の入浴介助加算では、加算区分Ⅰで1日40単位、加算区分Ⅱで1日55単位算定できますが、この単位数は据え置きつつ、算定要件が変更されます。
まず加算区分Ⅰ、Ⅱともに、入浴介助に関する研修等を行うことが要件として追加されます。また加算区分Ⅱでは、一般の介護職員が利用者居宅へ訪問し、浴室状況の確認を行うことが認められます。
具体的には、利用者居宅への訪問は、原則として医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員などの専門職が担当する必要があるところ、これらの専門職の訪問が困難な場合に限り、一般介護職員による代替が認められることになります。
個別機能訓練加算の人員配置要件の緩和
通所介護における個別機能訓練加算は、リハビリテーションの専門家を配置して、利用者ごとの個別機能訓練計画を策定し、実施した場合に算定できる加算です。
現行の加算区分(Ⅰ)-ロでは、専従の理学療法士等を1名以上、サービス提供時間を通じて配置することで85単位算定することができますが、配置時間の定めを撤廃することで要件を緩和するのと同時に、単位数も1日85単位から76単位に変更されます。
気象悪化時の所要時間区分の取扱い
現行の通所介護における所要時間区分の取扱いは、実際に要した時間ではなく、計画に記載された内容の通所介護サービスを行うための標準的な時間とされています。
一方で、実際の通所介護サービスの提供が計画上の所要時間よりも「やむを得ず短くなった場合」には計画上の単位数を算定することができます。
令和6年度の報酬改定では、この「やむを得ず短くなった場合」に、「降雪等の気象状況の悪化のために、通常よりも多くの送迎時間がかかった場合」が含まれることが明記されました。
外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し
EPA介護福祉士候補者や技能実習生については、勤務6カ月未満は日本語能力試験N1、N2の合格者だけを人員基準に算入することができ、その他人材は6カ月以上の勤務が必要です。
令和6年度の改正では、介護スタッフの人員不足解消を目的として、勤務6か月未満であっても、受入施設側の判断によって人員基準に算入することが認められるようになります。ここで言う「受入施設側の判断」とは、具体的には本人の日本語能力や管理者等の指導状況を総合的に判断して、決定して良いという趣旨です。
LIFE(科学的介護推進体制)加算の見直し
LIFEとは科学的介護情報システムのことです。介護サービス利用者の状態や、介護施設・事業所で行っているケアの計画・内容などを一定の様式で入力すると、インターネットを通じて厚生労働省へ送信され、入力内容が分析された後、施設にフィードバックされる情報システムのことを言います。
現状のデータ提出頻度について、サービス開始月から入力が必要な加算もあれば、サービス開始後の計画策定時に入力が必要な加算もあり、同一の利用者であっても算定する加算によって入力のタイミングが異なるという煩雑さがあります。
そこでLIFEへのデータ提出頻度について、「少なくとも6カ月に1回」から「少なくとも3カ月に1回」に見直されます。また初回のデータ提出時期については、他のLIFE関連加算と揃えることも可能となります。
送迎に係る取扱いの明確化
事業所まで、利用者が自ら通所する場合、または利用者の家族等が送迎を行う場合には、片道について47単位減算が生じます。利用者の送迎に関する報酬は、基本報酬に組み込まれている、との考え方に基づくためです。
送迎については、利用者の自宅と事業所間の送迎が原則となりますが、例えば近隣の親戚の家など居住実態がある場所へ送迎する場合や、他の介護事業所や障害福祉事業サービス事業所の利用者と同乗する場合なども対象となるよう、改正されます。
テレワーク(在宅勤務)でも人員基準算定可
人員配置基準で必要人数が定められている職種に関して、個人情報を適切に管理し、利用者対応に支障が生じないことを前提に、テレワーク(在宅勤務)が認められる旨が明文化されます。
これにより、例えば生活相談員に専従する職員が、テレワークで業務対応できる可能性が広がります。
過疎地域への対応
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算とは、例えば離島や中山間地域などサービス提供が困難な地域に居住する利用者へのサービス提供や、事業所自体がその地域にある場合に算定できる加算制度です。
令和6年度の報酬改定では、これらの地域に、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」で規定する「過疎地域」が含まれることが明文化されました。
まとめ
今回のコラムでは通所介護の令和6年度報酬改定について解説しました。通所介護では数多くの加算要件の見直しが行われているため、その対応に十分注意する必要があります。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
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◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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