令和6年介護報酬改定【第2回 】訪問介護編|特定事業所加算は?同一建物等居住者減算は?BCP未実施減算は?
当サイトでは全5回に分けて、令和6年度介護報酬改定の内容を解説していきます。第2回のテーマは訪問介護編です。訪問介護では特に特定事業所加算、同一建物等居住者減算、BCP未実施減算などに大きな改定があるため、この部分に力点をおきます。
このコラムの推奨対象者
・令和6年介護報酬改正で訪問介護の改正部分を理解したい方
・特定事業所加算の適用区分の変更点を整理したい方
・同一建物等居住者減算の適用に不安を感じている方
・BCPをまだ作成していない方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、社労士、税理士、行政書士、司法書士が合同し、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和6年1月)現在、職員数56名、介護障害福祉事業の累積支援実績671社(北海道~沖縄)、本社を含め7つの営業拠点で運営しています。コラムでは令和6年介護報酬改定のうち、訪問介護に焦点当てて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
特定事業所加算の見直し
最初に特定事業所加算について解説します。特定事業所加算は利用者に対するサービス提供体制が充実している事業所を評価する加算制度です。現行の加算区分はⅠからVですが、このうち、Ⅳが廃止され、現行のⅤをⅣに繰り上げ、新たにⅤを追加します。
先に加算ⅠからⅤまでを図示して説明しておきます。ご覧の通り、加算の算定に必要となる要件は大きく3グループに分かれています。具体的には体制要件、人材要件、重度者等対応要件です。
体制要件(1)から(5)が全ての加算区分に共通の要件、つまり土台となります。(6)は、加算区分ⅠとⅢで、(14)を選択した場合に限り適用され、(7)と(8)は加算区分Ⅴに限り適用されます。
この土台の上に加算区分ごとに、人材要件と重度者等対応要件が乗るイメージです。加算区分ⅠからⅣの間では、併算定ができませんが、加算区分Ⅴに限り併算定が可能となります。例えば加算ⅠとⅤを同時に算定することで、加算率は20%+3%で23%となります。
具体的な要件を詳しく見ていきましょう。まずは体制要件からです。
現行加算区分Ⅳの廃止に伴い、サービス提供責任者ごとに必要であった研修体制を、表で言う(1)に統合します。このことにより、全ての加算区分で「訪問介護員、サ責ごとに計画された研修実施」が要件となります。また新たに3つの体制要件が追加されます。
(6)では、「医療機関・訪問看護ステーションとの24時間連携による訪問体制の整備、看取り期の対応方針の策定と職員研修」が要件となります。後程説明しますが、加算区分ⅠとⅢで、仮に(14)を選択した場合に限り、(6)が必須要件となります。
(7)では、「通常の事業の実施地域内であって中山間地域等に居住する者に対して、継続的にサービスを提供していること」が要件となりますが、これは新たに設けられる加算区分Ⅴのみに適用されます。
(8)では、「サ責が起点となり随時介護支援専門員、医療関係職種等と共同し、訪問介護計画の見直しを行っていること」が要件となります。これも新たに設けられる加算区分Ⅴのみに適用されます。
体制要件の変更点は以上です。続いて人材要件の変更点について見ていきます。
(9)(10)には内容の変更はなく、(11)「サービス提供責任者を常勤により配置し、かつ基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置」の要件と、(12)「訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上」の要件が、新たに加算区分ⅢとⅣで選択適用されます。
人材要件の変更点は以上です。最後に重度者等対応要件の変更点について見ていきます。
旧(12)は、旧加算区分Ⅳの廃止に伴ってなくなり、(13)の利用者要件が、要介護度4から5に、利用者割合が20%以上に変更されます。
また新たに(14)、「看取り期の利用者への対応実績が1人以上」という要件が設けられます。
加算区分ⅠとⅢにおいて、(13)と(14)が選択式ですが、仮に(14)を選択した場合に、(6)「医療機関・訪問看護ステーションとの24時間連携による訪問体制の整備、看取り期の対応方針の策定と職員研修」が必須要件となります。
同一建物等居住者減算の適用範囲の拡大
続いて、同一建物等居住者減算について解説します。同一建物等居住者減算では、現行の3種類の減算区分に加えて、第4の減算区分が新たに設けられます。
「同一建物等」と呼ぶ場合、事業所と同一の建物や同一敷地内、道路を挟んだ隣接敷地の建物などを指します。これらの建物に住む利用者へ訪問介護サービスを提供する場合、移動時間などが短くて済むため、報酬減算が適用されているわけです。
現状、3種類の同一建物等居住者減算が適用されていますが、それぞれ具体的にみていきましょう。
事業所と同一建物等に居住する利用者の場合、49人まで10%の同一建物等居住者減算が適用され、これが50人以上になると減算率は15%となります。また、事業所とは離れた場所にある建物であっても、そこに20人以上が居住する場合、10%の同一建物等居住者減算が適用されます。
これらはいずれも利用者の人数に応じて報酬減算が適用されていますが、これに加えて事業所の利用者の比率によって減算を行う区分が新設されるわけです。
具体的には前6月間訪問介護サービスの提供総数のうち、同一建物等に居住する者が90%以上の場合、12%の報酬減算が適用されることになります。
つまり全利用者が10人の場合で、事業所と同一建物等に居住する利用者が9人の場合、比率が90%となるため、12%の減算が適用されるわけです。高齢者住宅内または隣接敷地に訪問介護事業所を設置している場合に注意が必要となります。
BCP(業務継続計画)未実施減算
BCP(業務継続計画)については、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。BCP作成が未実施の場合、基準違反となり、さらに1年の経過措置期間を経て令和7年4月からは1%の業務継続計画未実施減算が適用されます。
BCP対応がまだの方は、一度当社までご相談ください。
高齢者虐待防止措置未実施減算
高齢者虐待防止措置についても、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。高齢者虐待防止措置が未実施の場合、基準違反となり、1%の高齢者虐待防止措置未実施減算が適用されます。高齢者虐待防止措置の具体的な要件としては4点あり、
対策検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
虐待防止指針の整備
虐待防止研修の定期実施
虐待防止担当者配置
以上となります。
身体的拘束等の適正化の推進
続いて身体的拘束等の適正化について解説します。
訪問介護は利用者の生活空間でのサービス提供であることから、身体的拘束を行うという状況が想定されず、指定基準にも明記されていなかったのですが、身体的拘束を行う必要が生じる可能性がある、との観点から今回の報酬改定で明文化されます。この場合の要件としては2点あり、
・利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限る
・身体的拘束等を行う場合には、理由と実施状況を記録する
という点です。これらは運営基準に明記されるにとどまり、現段階では報酬減算の対象とはなりません。
認知症専門ケア加算の利用者要件見直し
現状の認知症専門ケア加算は加算区分(Ⅰ)で1日3単位、加算区分(Ⅱ)で1日4単位算定できますが、この単位数はそのままに、利用者の要件が見直されます。
具体的には、加算区分(Ⅰ)で「日常生活自立度Ⅱ以上」と改め、加算区分(Ⅱ)で「日常生活自立度Ⅲ以上の利用者が20%以上」との要件が設けられます。
口腔連携強化加算の新設
利用者の口腔状況について、事業所職員から歯科医療機関及び介護支援専門員へ連携する場合に、1回50単位、1カ月に1回に限り、口腔連携強化加算が新設されます。
口腔連携強化加算の適用のためには、利用者の個人情報の連携が伴う事から、利用者本人の同意が必要となる点に注意しましょう。
テレワーク(在宅勤務)でも人員基準算定可
人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種に関して、個人情報を適切に管理し、利用者対応に支障が生じないことを前提に、テレワーク(在宅勤務)が認められる旨が明文化されます。
これにより、例えばサービス提供責任者に専従する職員が、テレワークにより業務対応できる可能性があります。
過疎地域への対応
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算を端的に説明すると、離島や中山間地域などサービス提供が困難な地域に居住する利用者へのサービス提供や、事業所自体がその地域にある場合に算定できる加算制度です。
令和6年度の報酬改定では、これらの地域に、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」で規定する「過疎地域」が含まれることが明文化されました。
まとめ
今回のコラムでは訪問介護の令和6年度報酬改定について解説しました。また特に前半では特定事業所加算の見直しについて焦点を当てました。改正内容を端的にまとめると、以下の通りとなります。
令和6年度訪問介護の主要改定
・特定事業所加算で、区分と適用要件の見直しが行われます。
・同一建物等居住者減算では、新たに事業所の利用者比率による減算適用が行われます。
・BCP未実施減算、高齢者虐待防止措置未実施減算が新たに設けられます。
特定事業所加算やBCP対応については、当社でも通常業務としてご対応しております。業務の依頼先をご検討中の方は、ご遠慮なくこちらからお問合せ下さい。最後までお読み頂き、まことにありがとうございます。
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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