【令和6年度法改正対応】訪問介護の事務所要件|自宅兼事務所でも開業できる?事務室・相談室の設備基準|訪問介護の開業講座③
タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第3回のテーマは「訪問介護の事務所要件」です。法令上の設備基準の原則を解説した上で、「自宅兼事務所でも開業できるのか?」との問いにもご回答します。
このコラム推奨対象者
・訪問介護事業所の事務所要件を理解したい方
・訪問介護事業所の複数の指定事業を同時運営する場合の事務所要件を理解したい方
・訪問介護事業所の自宅兼事務所で開業する場合の事務所要件を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数69名、累積顧客数は北海道から沖縄まで759社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは訪問介護の事務所要件、自宅兼事務所で開業する場合の注意点について詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
訪問介護の事務所要件
初めに、訪問介護の事務所要件を、指定基準第7条と解釈通知に基づいて解説します。
事務室
まずは事務室です。事務室には広さの条件はありません。業務用の机と椅子が3セット程度、収まる広さがあれば問題ないでしょう。多くの自治体では、秘密情報保護の観点から、鍵付きキャビネットの設置を条件としています。
相談室(相談スペース)
続いて相談室です。相談室については、利用者やその家族が事業所を訪れて相談する際に、プライバシーを確保できるよう配慮する必要があります。具体的には、相談室として専用の1室を確保するか、または事務室の一角をパーテション等によって区切り、相談スペースを確保する方法が考えられます。
この場合、自治体の条例(ローカルルール)により、パーテションの高さに基準を設けている場合があるため、事前確認が必要となります。なお相談室の広さに条件はないため、応接用の机と椅子が収まる程度の広さがあれば問題ないでしょう。
手指洗浄設備(洗面設備)
続いて手指洗浄設備です。手指洗浄設備とは、感染症予防のために手を洗うための水道のことです。一般的には洗面設備のことを指します。
トイレ
最後にトイレです。トイレについては指定基準と解釈通知には明確な記載はありませんが、指定基準で言う「事業所運営のために必要な設備」に該当するため、確保する必要があります。
テナントビル(共用設備)
なお、テナントビルに入居する場合には、ここで取り上げた各設備を、他の事業所と共用することもできます。
1つの事業所で複数の指定事業を同時に運営する場合
続いて、1つの事業所で複数の指定事業を同時に運営する場合の、事務所の要件について解説します。
原則(それぞれの指定基準を満たす)
複数の指定を受けて事業を運営する場合、原則として、それぞれの事業の指定基準に定められた事務所の要件を満たす必要があります。
例外(訪問介護 & 1号訪問 & 障害居宅介護等)
ただし例外的に、1つの指定事業の事務所要件を満たすことにより、他の指定事業の要件をクリアしたものとみなされる場合があります。
具体的には、要介護者に対する訪問介護、要支援者に対する1号訪問事業、障害者に対する居宅介護・重度訪問介護等を一体的に運営する場合です。この場合、訪問介護の事務所要件を満たすだけで足ります。
訪問介護 & 訪問看護 & ケアプランセンターの場合
一方、訪問介護と訪問看護や居宅介護支援(ケアプランセンター)の兼業の場合は、別の考え方となります。この場合はパーテション等の間仕切りによって、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援それぞれの区画を区分する必要があります。
ただし、業務に支障がない場合は、パーテションによる区分を行わず、事務スペースの区画を明確にするだけで足ります。要するに、事業ごとにデスクをひと固まりの「島」とすることで、区画を明確にするという意味です。コスト面で考えると、「島」による区画の特定が有利であると言えるでしょう。
自宅で訪問介護を開業する場合
本編の最後に、自宅で訪問介護を開業する場合、つまり自宅兼事務所とする場合の要件について解説します。小規模な訪問介護事業所の開業を計画されている方から、よくお寄せ頂くご相談です。
結論から言いますと、自宅兼事務所として開業することは可能です。そもそも指定基準や解釈通知には「自宅で開業する場合」という項目自体が存在しないため、ここまで解説した設備基準を満たすことができれば、自宅兼事務所として開業することは可能です。
しかし自宅兼事務所の場合、要件を満たすためには、超えなければならないハードルが多数あるため、当社の過去の経験則に基づき解説したいと思います。
玄関から事務室への導線
まずは玄関から事務室へ入室する際の「導線」の問題です。
「導線」とは人の動きの線のことです。事業所へ来訪する利用者や家族が、プライバシーが保たれた状態で事務室へ入室できる導線を確保する必要があります。具体的には玄関から事務室まで、リビングなどの生活空間を通らずに入室できる「導線」となっているか、という意味です。この「導線」が確保できない場合は、自宅兼事務所として申請することは難しいでしょう。
事務室の独立区画
続いて事務室の区画の問題です。事務室は独立した区画を確保する必要があるため、自宅の1室を事業専用で使う必要があります。つまり生活空間であるリビング等の片隅を事務スペースとして使うことはできない、と言う意味です。
施錠(鍵)
また事務室の施錠問題も検討する必要があります。テナント賃貸の場合は当然のことと言えますが、自宅兼事務所の場合にも、秘密情報保護の観点から事務室に「鍵」を設置する必要があります。そのような意味では、事務室を区分する入り口が和室の襖(ふすま)等の場合、一定規模のリフォームが必要となるでしょう。
相談室・トイレ・手指洗浄設備
続いて相談室の問題です。専用の1室を確保するか、または事務室の一角をパーテション等によって区切り、相談スペースを確保する必要があります。最後にトイレと手指洗浄設備です。これらは解釈通知によって「共用」の考え方を取ることができるため、例えば廊下を通ってトイレと手指洗浄設備に到達できれば、基準を満たす可能性があります。
逆に言うと、リビングなどを経由しなければ到達できない場合は、自宅兼事務所として申請することは難しいでしょう。
このように、自宅兼事務所として訪問介護を開業するためには、個々の住宅の間取り図に基づく検討を行う必要があります。また各自治体のいわゆるローカルルールによっても検討する観点が異なります。当社ではご依頼頂いた後、担当者が図面の確認とご助言を行っています。
まとめ
「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第3回では「訪問介護の事務所要件」について解説しました。併せて自宅兼事務所として訪問介護を開業する場合の注意点もご理解頂けたのではないかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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