【令和6年度法改正対応】訪問介護報酬の算定構造|基本報酬と加算減算の計算実務をサービスコード表から|訪問介護の開業講座⑪
タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第11回のテーマは「訪問介護報酬の算定構造」です。基本報酬と加算減算の計算方法を、サービスコード表に基づき、実務的な観点から詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・訪問介護報酬の算定構造の全体像を理解したい方
・加算と減算の計算順序を理解したい方
・サービスコードの意味を理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数76名、累積顧客数は北海道から沖縄まで806社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは基本報酬と加算減算の計算方法を、サービスコード表に基づき、実務的な観点から詳しく解説します。
訪問介護報酬の算定構造
今回のコラムでは、訪問介護報酬の算定構造の全体像について解説しています。個別の加算・減算の算定ルールについては別のコラムで解説しますので、併せてご覧ください。
さて、訪問介護報酬を勉強している方は、次のような表をご覧になったことがあるかと思います。これは厚生労働省が「介護報酬の算定構造のイメージ」として全体像を図示したものです。分かりやすく色付けしたものに置き換えて解説を続けます。
基本部分
初めに訪問介護報酬の「基本部分」について解説します。
身体介護は利用者の身体に直接触れて行う入浴、排せつ、食事などの介助です。また生活援助は、調理、洗濯、掃除などの日常生活の家事援助です。通院等乗降介助は利用者が通院する場合に、事業者が運転する車両への乗降介助です。
身体介護と生活援助については、サービス提供時間に応じて報酬が区分されます。
その他色付けされている箇所が、一般的に加算・減算と呼ばれる項目です。訪問介護報酬の加算と減算を理解するために、水色・緑・ピンク・黄色の4色で色分けしています。以降、これら4種類の加算・減算の位置づけについて、詳しく見ていきます。
サービスコードで基本部分に統合される加算・減算(水色)
ここではサービスコードで基本部分に統合される水色の加算・減算について解説します。
先にサービスコードから解説します。サービスコードとは「介護給付費単位数等サービスコード表」で示されるコードです。介護報酬の請求事務を行う際、提供したサービス内容を明確にするために、数字とアルファベット6桁の組み合わせでコード化したものです。
例えば身体介護で30分以上1時間未満のサービスを提供した場合、「111211」というコードを用いることで訪問介護報酬387単位を請求することができます。サービス内容略称は「身体介護2」として表されます。
文字入力で請求を行うと誤りが生じる可能性が高いため、このようなコードを用いて正確性を期しているわけです。
話を水色の加算・減算に戻します。水色の加算・減算は「サービスコードで基本部分に統合される」ものであるとご説明しました。
この意味を具体的に解説します。例えば次のような訪問介護サービスを利用者に提供したとします。(単位数は令和6年6月改定のもの)
単位数は令和6年6月改定のもの
・身体介護30分以上1時間未満(387単位)
・高齢者虐待防止措置は未実施(1%の減算)
・身体介護に続いて生活援助を20分(65単位)
・2人の訪問介護員でサービス提供(100%加算)
・深夜にサービス提供(50%加算)
・特定事業所加算はⅡ(10%加算)
これらを1つの訪問介護サービスと考えるわけですが、単位数を毎回計算するには大変な煩雑さが生じます。そこでこれらの内容をひとまとめにするサービスコードを「11A534」、報酬を予め1478単位と設定し、報酬請求作業の効率化を図っているわけです。このケースでのサービス内容略称は「身2・虐防・生1・2人・深・Ⅱ」と表します。
また、水色の加算・減算は、それぞれ対象となる基本部分に違いがあります。例えば2人訪問介護は、身体介護と生活援助のみが対象となり、通院等乗降介助は対象にならない、ということを図示しています。
ここまでの解説でお分かりの通り、サービスの組み合わせごとに設定されるサービスコードは膨大な数に上ります。3年に一度の報酬改定により多少の上下はありますが、令和6年時点でも訪問介護だけで4000前後のサービスコードが設定されています。
手作業でサービスコードを探すのは大変な労力が伴うため、介護報酬請求ソフトの利用をお勧めします。当社では介護報酬請求ソフトの導入案内も行っていますので、是非一度ご相談ください。
サービスコードで基本部分に統合されない加算・減算(緑)
続いてサービスコードで基本部分に統合されない緑の加算・減算について解説します。これらの加算・減算は基本部分と水色の加算・減算を統合したサービスコードに対して、さらに加算・減算を行うことを意味します。
具体的には、先のサービスコード「11A534」、1478単位のサービスに対して、さらに加算・減算を行います。
これらの加算・減算には単独のサービスコードが設定されており、例えば同一建物減算にはその態様により、10%減算を示す「114114」、15%減算を示す「114115」、12%減算を示す「114116」があります。
またそれぞれ対象となる基本部分に違いがあり、例えば緊急時訪問介護加算は身体介護だけが対象となることを図示しています。
基本部分の種類を問わず計算される加算・減算(ピンク)
続いて基本部分の種類を問わず計算される、ピンクの加算・減算について解説します。これらの加算・減算は、基本部分の種類や水色・緑の加算・減算の計算結果に関わらず、単独で加算・減算が生じることを図示しています。
ピンクの加算・減算にも単独のサービスコードが設定されており、例えば初回加算では「1140001」、200単位加算となります。
全体に対して最後に計算される介護職員等処遇改善加算(黄色)
最後に黄色の部分が、全体に対して最後に計算される介護職員等処遇改善加算です。介護職員等処遇改善加算は介護職員の賃上げのために設けられている加算であり、ここまで解説したサービス報酬全体の計算結果に対して、率を掛けて最終の加算を行います。
介護職員等処遇改善加算にも単独のサービスコードが設定されており、例えば加算Ⅰでは「116275」、24.5%加算となります。
報酬基準内の表現の違い
余談ながら、報酬基準内で用いられる表現の違いにより、どのような計算を行うのかを解説しておきます。報酬基準で加算・減算を規定する表現は、大きく分けると4種類あります。
①所定単位数の〇分の□に相当する単位数を所定単位数に加算(から減算)する
②所定単位数の〇分の□に相当する単位数を算定する
これらの表現が使われる場合の「所定単位数」とは「対象として定める単位数」を指します。
例えばサービスコード「11A534」、「身2・虐防・生1・2人・深・Ⅱ」それぞれの報酬基準では①②の表現が用いられていますが、これは基本報酬を土台に加算・減算を繰り返した結果として、1478単位が導き出されるという意味です。
その他の例では、同一建物減算12%を計算する場合は、例におけるサービスコード「11A534」1478単位の1カ月合計を計算対象とし、中山間地域居住者加算5%を計算する場合は、同一建物減算を行った後の単位数を計算対象とします。
③1回(月)につき所定単位数を加算(減算)する
④1回(月)につき〇単位を加算(減算)する
これらの表現が使われる場合の「所定単位数」とは「報酬基準で明記されている単位数」を指します。例えば緊急時訪問介護加算では1回100単位加算、初回加算は1カ月200単位加算との考え方です。
報酬基準内で用いられる表現の違いにより、どのような計算を行うのか正しく理解しておきましょう。
まとめ
「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第11回は「訪問介護報酬の算定構造」について解説しました。基本報酬と加算減算の計算実務、サービスコード表についてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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