事後重症|障害認定日に障害等級に該当しなかったが後に該当した場合

事後重症|障害認定日に障害等級に該当しなかったが後に該当した場合

このコラムを読むと分かること

・障害認定日に障害状態になくても受け取れる障害年金のことが分かる
・障害年金のさかのぼり受給のことが分かる
・事後重症の障害年金を使った、意外な請求方法が分かる

初診日の前日時点で保険料納付に問題ない。初診日に国民年金の被保険者だったことにも問題ない。しかし初診日から1年半経過した障害認定日に障害等級に該当しない。このコラムではそのようケースで知っておきたい事後重症について解説する。

【コラムの目次】

①障害年金における事後重症とは
②もう一つの手段としての事後重症
③事後重症まとめ

①障害年金における事後重症とは

障害年金における受給3要件をおさらいしよう。

ア)初診日に被保険者だったこと(被保険者要件)
イ)初診日の前日時点で、保険料をキチンと納めていること(保険料納付要件)
ウ)障害認定日(初診日から1年半)に障害等級に該当すること(障害認定日要件)

この3要件のうち、残念ながらウ)障害認定日要件だけを満たさなかった場合。このような場合であっても障害年金の受給可能性が0ではない。

障害認定日に障害等級に該当しなくても、その後に傷病が悪化して障害等級に該当した場合を「事後重症」と呼び、請求を行うことで以後の障害年金を受給することができるのだ。

通常の障害年金と異なり、「請求月の翌月から」つまり将来に向かっての請求となる。さかのぼり受給が出来ない点に注意しよう。

②もう一つの手段としての事後重症

この「事後重症」の障害年金受給を、障害年金請求のための意外な手段として用いることができる。つまりこのようなケースだ。

ある人が傷病のため障害年金を請求しようとしている。

ア)初診日被保険者要件
イ)保険料納付要件

ともに満たしている。本人の認識では、障害認定日においても障害状態にあったことは間違いない。しかし初診日、障害認定日共に10年以上前のことで、さすがに当時の医師が10年前の障害認定日に、障害状態であったことを証明することができないというケース。

医師の診断書を求めることも、それを年金機構に提出して審査を通すことも困難だと仮定しよう。

仮に審査を通すことが出来た場合は5年間を限度にさかのぼり支給される。しかしその審査結果にこだわるよりも、現に今障害状態にあることには変わりないのであるから、まずは「事後重症」による障害年金の受給を求め将来に向かっての障害年金受給を確保する。

その後に、障害認定日の障害状態を争い、さかのぼりの支給を求めるという方法だ。障害認定日にこだわるあまり、現に受給できる権利を行使しないという無駄を防ぐことが出来るだろう。

③事後重症まとめ

以上が障害年金における事後重症の仕組みである。もう一度言おう。障害年金の事後重症請求には、

ア)初診日被保険者要件
イ)保険料納付要件

を満たしておく必要がある。特にイ)保険料納付要件は、事後重症になった時ではなく、初診日の前日で判定するということに注意が必要だ。

【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538