【指定申請までのスケジュール】訪問介護・訪問看護・デイサービス・障害者福祉施設の開業計画時に注意すべきポイント

新規介護事業の立ち上げ~起案・申請前・開設後で注意すべきポイント~

井ノ上剛(社労士・行政書士)

訪問介護・訪問看護・デイサービス・障害者福祉施設の指定申請スケジュール計画でお困りではありませんか?計画から指定申請までには、法人設立、事業所の賃貸借契約、職員との雇用契約、事業所内部の整備、指定申請などのスケジュール管理が大切です。いつ何に着手すればよいのか、スケジュール計画をしっかり立てて、開業に臨みましょう。

☑コラムの推奨対象者

〇訪問介護・訪問看護・デイサービス・障害者福祉施設の開業スケジュールを立案中の方
〇計画段階から開業までのスケジュール感を知りたい方
〇各スケジュールの中で「いつ何を」すべきか困っている方

☑コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は介護・障害福祉事業の開業支援に特化した合同法務事務所です。行政書士・司法書士・社会保険労務士・税理士で運営しています。令和3年4月時点で、累積400社の介護・障害福祉事業の開業支援を達成。コラムでは訪問介護・訪問看護・デイサービス・障害者福祉施設の開業スケジュールを詳しく解説します。執筆者のプロフィールは末尾に記載しています。

スケジュール①開業市域と指定種別の決定

介護・障害福祉事業の開業スケジュール①は、開業市域と指定種別の決定です。この先に説明する指定申請まで視野に入れたとき、開業市域×指定種別によって、申請先が異なります。結果として申請先ごとのスケジュール締め切りなどに影響するためです。

この場合、メインとなる指定種別を決定するのと同時に、この段階で次の項目を検討しましょう。

〇訪問介護 → 居宅介護支援、1号訪問事業、障害居宅介護、重度訪問介護を併設するか
〇訪問看護 → 居宅介護支援、居宅療養管理指導を併設するか
〇通所介護 → 居宅介護支援を併設するか、また通常型か地域密着型か
〇障害者就労支援 → 就労移行支援、就労継続支援A型、B型それぞれの多機能型とするか
〇放課後等デイサービス → 児童発達支援との多機能型とするか
〇障害者生活介護 → 就労継続支援B型等との多機能型とするか

指定種別が決定したら、市域を決定して、申請先の自治体ごとに定まっている指定申請の提出期限を確認してスケジュール計画を立てます。多くの自治体では指定日(開業日のことです)の約45日前に1回目の提出期限を設定しています。

最終的な補正期限は、指定日の前月10日ごろで定めているところが多いですが、自治体によって異なりますので、詳細まで確認しておきましょう。指定申請の提出スケジュールについては、コラムの中で解説します。

なお、このコラムでは在宅型事業施設型事業に分けてスケジュールを説明します。在宅型事業と通所施設型事業の分類は次の通りです。

在宅型事業 → 訪問介護、訪問看護、居宅介護支援、障害居宅介護、重度訪問介護など
施設型事業 → 通所介護、就労移行支援、就労継続支援、放課後等デイサービス、生活介護、共同生活援助など

☑ここがポイント

指定種別×指定市域を決定して、申請先自治体の申請期限を確認しましょう。

スケジュール②人員確保

介護・障害福祉事業の開業スケジュール②は、人員確保です。指定種別ごとに、必要となる資格者と人数が決まっているので、この時点で人員要件を確認します。実際の雇用契約の締結はまだ先で大丈夫です。

介護職員(初任者研修やヘルパー2級)の候補人材は比較的多いと思いますが、ケアマネージャー、看護師、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者は人材確保が難しいため、確保計画が整わない状態で次のスケジュールへ進むのは危険です。必ずこの段階で人材確保スケジュールの目途を付けましょう。

特に事業の主軸を担う人材とは積極的にコミュニケーションを取り、以後のスケジュール計画を共有しましょう。

☑ここがポイント

特に確保の難しい職種、資格者はあらかじめ雇用内定が必要です。

スケジュール③事業所選び

介護・障害福祉事業の開業スケジュール③は、事業所選びです。実際の賃貸借契約の締結はまだ先で大丈夫です。指定種別ごとに事業所の要件は大きく異なります。また同じ指定種別であても、自治体ごとに要件に多少の違いがあります。

管轄の自治体で事業所の要件を確認し、事業所選びを開始します。この段階では法人設立もしていないので、あくまでも候補になりそうな物件を探すだけでOKです。

この段階、つまり事業所選定の開始日を、在宅型事業と施設型事業に分けてスケジュール感をお示しすると、概ね次の通りとなります。

在宅型事業→指定(開業)の120日前
施設型事業→指定(開業)の150日前

在宅型事業と施設型事業では、スケジュール⑤「事業所物件の調査と事前協議」の手続きの有無で、スケジュール感に約30日の差が生じます。詳細は後ほどご説明します。

☑ここがポイント

なるべく早めに、候補物件に当たりを付けておきましょう。

スケジュール④法人設立

よさそうな事業所物件が見つかったら、次はスケジュール④法人設立に進みます。法人設立のタイミングは次の通りです。

在宅型事業→指定(開業)の110日前
施設型事業→指定(開業)の140日前

この段階で法人印も発注しておきましょう。ネット通販では3本セットで販売している業者さんが多数あります。はんこプレミアムさんが運営する【Inkans.com】等は、即日発送で法人設立印のバリエーションも豊富でお勧めです。

☑印鑑作成のお勧めはこちら



介護・障害福祉事業を開業する場合、一般的には株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人から選択します。それぞれの法人種別の特徴については、別コラムで解説していますので、合わせてご参照ください。
>>4種類の法人比較はこちら

法人設立を当社のような専門家に依頼する場合、1~2週間で完了しますが、自分で設立書類を作成する場合はさらに時間がかかるため、スケジュール管理には万全を期しましょう。

在宅型事業の場合、次のスケジュール⑤の手続きは不要となりますので、事業所の住所を法人の本店所在地として設立登記してよいか、不動産会社に確認すると良いでしょう。詳細は別コラムで解説しています。
>>法人の本店所在地を決める

☑ここがポイント

すぐに法人設立作業を進められるように、登記項目を事前に検討しておきましょう。

スケジュール⑤事業所物件の調査と事前協議

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑤は、事業所物件の調査と事前協議です。在宅型事業の場合、ほとんどの自治体でこのステップは不要ですので、スケジュール⑤は施設型事業に特有の手続きです。事業所物件の調査と事前協議のタイミングは次の通りです。

在宅型事業 → 不要
施設型事業 → 指定(開業)の120日~90日前

このスケジュールのために、約30日必要となります。具体的には管轄自治体の都市計画課、建築指導課、消防署などで物件の適合性を調べるとともに、指定申請を受け付ける部局で事前協議を行います。

これらの手続きは別コラムで解説していますので、ご参照ください。非常に重要な手続きです。
>>事業所物件の調査と事前協議

☑ここがポイント

施設型事業で最も重要となる手続きです。制度を十分に理解しましょう。

スケジュール⑥事業所の賃貸借契約

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑥は、事業所の賃貸借契約です。賃貸借契約のタイミングは次の通りです。ここから先は在宅型事業、施設型事業共通のスケジュールです。

在宅型事業、施設型事業ともに → 指定(開業)の80日前

介護・障害福祉事業指定要件に「事業所の使用権限があるか」が定められているため、法人の名義で賃貸借契約書に記名捺印する必要があります。

そのため、賃貸借契約の前に法人を設立したわけですが、法人設立後スムースに賃貸借契約書に記名捺印できるよう、あらかじめ物件の内覧を済ませ、審査も終えておくようなスケジュール感で臨むことをお勧めします。

➡賃貸借契約の開始時期は?

ここで賃貸借契約の開始日についてのポイントをご助言します。指定申請では、当然ながら指定日(営業開始日)を含むそれ以前の日に、賃貸借契約が開始していることが求められます。

例えば4月1日指定(営業開始)を目指す場合、賃貸借契約日は4月1日以前に開始する必要があります。(理論上、4月1日開始でもOKです)

しかし、実際には鍵を預かり、後半で説明する備品設備の納品スケジュールを進める必要があるため、指定日の約60日前には入居できないと間に合いません。

この場合、営業開始までカラ家賃を支払い続けねばならないため、開業者にとっては大きな費用負担となります。この事態を避けるために、大家さんまたは不動産会社と十分に話し合い、「営業開始まで家賃の支払いを猶予してほしい」と相談しましょう。1~2か月分の家賃猶予をお願いするくらいは、ビジネスマナーに反しないと思います。

☑ここがポイント

契約は必ず法人名義で。また家賃発生のタイミングも交渉しましょう。

スケジュール⑦職員との雇用契約

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑦は職員との雇用契約の締結です。雇用契約締結のタイミングは次の通りです。

在宅型事業、施設型事業ともに→指定(開業)の75日前

もちろん雇用契約の締結日はこのタイミングであっても、雇用契約の開始日指定日(営業開始日)で問題ありません。雇用契約書は人員の確保ができていることの証明となるため、指定申請書への添付を義務付けている自治体もあります。

契約内容は各種労働関連法に準拠している必要があるため、雇用契約締結時には専門家に相談することをお勧めします。

☑ここがポイント

雇用契約は労働関連法に沿う内容でないといけません。是非専門家のアドバイスを得て下さい。

スケジュール⑧事業所内の整備

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑧は事業所内の整備です。事業所内の整備のタイミングは次の通りです。

在宅型事業、施設型事業ともに → 指定(開業)の80日~50日前

ほとんどの指定種別で、次の備品・設備は共通基準として定められています。

〇トイレ
〇手指洗浄設備
〇鍵付き書庫
〇机・椅子
〇電話・FAX
〇相談スペース

指定種別ごとに事業所内に備え付けるべき備品などに基準が設けられています。また自治体によっても多少の違いがあるため、事前に確認して備品購入、搬入スケジュール計画を立てましょう。

このほかパソコン、プリンターなどのオフィス用品の発注もこのタイミングで行います。開業時期ですので、コスト重視で購入計画を立てましょう。

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事業所内部の整備が完了したら、その結果を写真に撮影し、スケジュール⑨指定申請書に添付します。

☑ここがポイント

すぐに購入・納入ができるように、あらかじめ購入リストを作っておきましょう。

スケジュール⑨指定申請書の作成・提出

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑨はいよいよ指定申請書類の作成と提出です。指定申請書類の作成と提出タイミングは、自治体によって異なるため、必ずその期限を確認しておきましょう。概ね次の通り設定されています。

在宅型事業、施設型事業ともに → 指定(開業)の45日~40日前

指定申請に必要な書類は申請先の都道府県または市町村のホームページから各様式をダウンロードして作成します。訪問介護事業の一例を挙げておきます。

指定申請書
付表(営業時間や曜日等を記入)
定款、寄付行為等
登記事項証明書
従業者の勤務体制及び勤務敬愛一覧表
組織体制図
管理者経歴書
事業所の平面図
運営規程
利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
当該申請に係る事業の資産の状況
事故発生時の対応
誓約書及び役員等
介護給付費に係る体制届
資格証(介護福祉士や看護師等)

これだけの膨大な書類を作成し、また添付書類を整備するのには相当の時間がかかるため、指定申請書の作成着手はこれまでのスケジュールと並行して行いましょう。

申請書類が整ったら、管轄の自治体に提出します。自治体によっては郵送で受け付けたり、事前に予約した上での来庁を義務付けたりする場合があるため、この点も事前確認をして、スケジュール計画を立てましょう。

☑ここがポイント

添付書類の収集がスムースに進むよう、あらかじめ必要一覧を確認しておきましょう。

スケジュール⑩申請内容の補正

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑩は申請内容の補正です。スケジュール⑨で説明した、申請書類の提出期限とは別に、申請内容の補正期限を設けている自治体が多いです。申請内容の補正タイミングは概ね次の通りです。

在宅型事業、施設型事業ともに → 指定(開業)の30日~20日前

補正とはつまり、申請書の訂正のことです。我々のような専門会社の場合、当然補正なしを目指すわけですが、場合によっては、申請書類提出の際に、資格証明書など一部の添付書類が間に合わない場合があります。

このような不足書類の提出、または書き損じ等の不備の訂正期限として、補正期限が設けられています。

補正期限までに申請書類が完全な状態にならない場合、申請自体を取り下げ次月以降に回される可能性があるため、くれぐれも補正スケジュールの確認は怠らないようにしましょう。

☑ここがポイント

補正期限には絶対に遅れないこと。これまでの努力が無駄になります。

スケジュール⑪指定通知書の交付

介護・障害福祉事業の開業スケジュール⑪は指定通知書の交付です。このタイミングで管轄自治体に、手数料の納付が必要となる場合があります。(自治体によっては申請書類の提出時に納付することもあります)

一般的な手数料額は3万円程度です。障害福祉事業の指定の場合は手数料なしが一般的かと思います。

指定通知書の交付タイミングも自治体によって異なりますが、概ね次の通りです。

在宅型事業、施設型事業ともに → 指定(開業)の10日~5日前

この時点で、晴れて指定事業者として決定され、指定通知書の交付が行われます。指定通知書の記載内容は以下の通りです。

〇事業者(法人)の名称
〇事業者(法人)の所在地
〇事業所の名称
〇事業所の所在地
〇事業の種類
〇指定期間(概ね6年間)
〇事業所番号

指定通知書に記載されている日(有効期間)に営業を開始することができます。この場合の「営業」とは実際のサービス提供と、いわゆるPR活動を指します。

つまり指定通知書を得たとしても、指定日まではPR活動を行うことはできませんので、くれぐれもご注意ください。(指定日までは近い関係の方々に挨拶回りをする程度は許容されるでしょうが、チラシ配布などはNGです)

☑ここがポイント

指定日前に大々的なPR活動を行うことは法律違反です。注意しましょう。

このコラムのまとめ

以上が介護・障害福祉事業の開業スケジュールです。もう一度全体像を整理しておきます。

スケジュール① 開業市域と指定種別の決定
スケジュール② 人員確保
スケジュール③ 事業所選び
スケジュール④ 法人設立
スケジュール⑤ 事業所物件の調査と事前協議
スケジュール⑥ 事業所の賃貸借契約
スケジュール⑦ 職員との雇用契約
スケジュール⑧ 事業所内の整備
スケジュール⑨ 指定申請書の作成・提出
スケジュール⑩ 申請内容の補正
スケジュール⑪ 指定通知書の交付

着手から指定(営業開始)まで、うまく行けば、

在宅型事業 → 120日
施設型事業 → 150日

でスケジュール進行させることができます。綿密なスケジュール管理を行って、介護・障害福祉事業の開業計画を成功させましょう。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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 (電話)0120-60-60-60 
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