介護保険利用者負担(1割)を扶助する生活保護法の生活扶助。このコラムでは介護サービス事業所と居宅介護支援(ケアマネ)事業所において、最低限知っておきたい生活保護制度の基礎知識を解説する。

【目次】
①生活保護制度を詳しく解説
②用語集
③介護扶助制度
④生活保護予備知識
⑤まとめ

①生活保護制度を詳しく解説

最後のセーフティーネットとしての生活保護制度。保険料や税金の納付要件はなく、生活に困窮している状態にあれば誰でも生活保護を申請することができる(認定を受ける事ができるかどうかは別問題)。生活保護法と日本国憲法の関係は次の通りだ。

【日本国憲法 第25条】
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

これを受けて現行の生活保護法が1950年に制定された。

【生活保護法 第1条】
この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

ここでポイントとなるのは、生活保護法第1条の後段にある、「最低限度の生活保障」と「自立の助長」である。つまり制度として国民平等に最後のセーフティーネットとしての保護を行うとともに、個別のケースに応じた自立の助長を行うという点である。

②用語集

生活保護と介護保険制度を理解するために、最低限理解が必要な用語を列挙する。

【ケースワーカー】
各市町村に設置される福祉事務所で生活保護担当する職員を指す。法的には現業員と呼ばれ、家庭訪問・面接・生活指導などを行う。

 

【社会福祉主事】
福祉事務所に設置される職。任用のためには大学での科目履修または指定養成機関を終了するなどの要件が定められている。ケースワーカーは社会福祉主事であることが法律で定められている。

 

【福祉六法】
生活保護法、身体障害者福祉法、児童福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、母子並びに父子及び寡婦福祉法の総称

 

【ケアマネージャー】
居宅介護支援事業(いわゆるケアマネ事業所)に所属し、介護が必要な人にケアプランの作成や介護サービス事業所との調整を行う資格者。居宅介護事業所には主任ケアマネージャーを設置する義務がある。

 

【介護保険被保険者】
1号被保険者 65歳以上の人
2号被保険者 40歳以上65歳未満の人のうち健康(医療)保険加入者

③介護扶助制度

介護保険の利用に当たっては9割が介護保険から支給され、1割が利用者負担である。生活保護受給者についてはこの1割部分が生活保護から扶助される。これを介護扶助と呼ぶ。

介護扶助の申請のためにはケアマネージャーが作成するケアプランの写しを添えて福祉事務所に提出する必要がある。この際、ケアプランに記載されている介護事業所が生活保護法による指定介護機関でなければならない。

介護扶助の申請を受けた福祉事務所では本人の収入状況を鑑み介護扶助の支給決定を行い、その決定の証として介護券を発行する。介護券には本人の個人情報のほか、利用する介護事業所、介護サービスの種類などが記載される。

介護扶助の決定を受けて初めて訪問介護、訪問看護、通所介護などの介護サービスを利用者負担なしで利用できるようになるのである。

④生活保護予備知識

この項では生活保護についてよく問われる問題点について明らかにする。

・生活保護は原則世帯単位で決定される。民法上の扶養義務者(3親等内)に資力がある場合は、その資力を持ってしても足りない部分が保護の対象となる。

処分可能な財産がある場合は、それを売却して資金を作るべき指導が入ることもある。例えば地価の高い地域に居住しているような場合だ。整理すると次の通りとなる。

不動産:処分価値>利用価値 となる場合処分が必要な場合も
自動車:原則として保有不可(例外あり)
預貯金:必要以上の貯蓄不可

⑤まとめ

介護サービス事業所、居宅介護支援(ケアマネ)事業所にとって、生活保護に対する知識と理解は必要不可欠である。しかし専門分野が異なるため、殆どの場合福祉事務所のケースワーカーに丸投げしていることも多いのではないだろうか。生活保護の申請を検討したほうが良いような利用者を担当する場合、まずは当該介護事業所で最低限の生活保護知識の下、適切な初動を心がけたい。

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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 (電話)06-7739-2538 
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