【常勤換算要件を緩和】育児や介護で短時間勤務制度を利用する場合でも常勤換算1人としてカウント可能|令和3年度介護報酬改定
令和3年度介護報酬改定では、常勤換算方法について大きな法改正がなされました。介護や育児で、短時間勤務しかできない場合でも、週30時間以上勤務することができれば、常勤換算法で1人として計算することができるという仕組みです。これによって、例えば週30時間勤務のサービス提供責任者や管理者の存在が認められることになります。
このコラムの推奨対象者
・介護障害福祉事業の「常勤換算法」について理解したい人
・令和3年度介護報酬改定による「常勤換算法」のルール改正を理解したい人
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和3年7月)現在、介護障害福祉事業の累積設立支援実績が、400社を超えました。日々数多くの開業相談の中で、「常勤換算」についてご相談をお受けしています。法制度に基づいて執筆していますので、どうぞ安心してお読みください。
常勤換算法とは?
介護障害福祉事業では、各業種の新規指定時の基準に「常勤換算法」というキーワードが登場します。まず、「常勤換算法」について詳しくご説明します。
「常勤換算法」を一言で言うと、「複数の短時間労働者の方の労働時間を合計することで、常勤労働者とみなす」というものです。具体例でご説明しましょう。
ある会社の、1週間の所定労働時間が40時間であるとします。この場合、正社員(Aさん)の方は、当然ながら毎週40時間働きます。つまり、常勤換算法で1人としてカウントします。
一方で、次の短時間労働者の方が所属しているとします。
短時間労働者の事例
Bさん:週15時間労働
Cさん:週20時間労働
Dさん:週25時間労働
この場合、3名の労働時間を合計すると「60時間」になります。この会社の週当たりの所定労働時間が40時間であるため、3名合わせると、常勤換算法で「1.5名」に該当します。(60時間÷40時間)
正社員のAさんが常勤換算法で「1名」としてカウントされているため、ここにB~Dさんの「1.5名」を足すことで、2.5名にとなります。
以上によって、例えば訪問介護事業の指定基準である「常勤換算法で2.5名分の訪問介護員」の条件を満たすことになります。
常勤換算法のまとめ
Aさんの「1名」+B~Dさんの「1.5名」=「2.5名」
常勤換算法についてさらに詳しい情報を知りたい方は、こちらのコラムをご参照ください。訪問介護事業を例にとって、ご説明しています。
介護障害福祉事業の労務管理上の問題点
ここまで「常勤換算法」についての一般知識をご説明してきましたが、介護障害福祉事業は労務管理上の大きな問題点を抱えています。列挙すると次の通りです。
介護障害福祉事業の労務管理上の問題点
・職員の退職により、法で定められている「最低人員基準」を下回る危険性が、常に存在する
・従業員自らの家族の介護や、育児によってフルタイム勤務ができない場合も、上記同様の危険性がある
・そもそも、他の業種に比べて、離職率の高い業界である
このような問題点を解決すべく、令和3年度介護報酬改定により「介護職員の職場環境の改善に向けた取り組み」が導入されました。その1つが、このコラムで取り上げるテーマである「常勤換算要件の緩和」です。以下、具体的に説明していきます。
令和3年介護報酬で緩和された【常勤換算要件】
自分の家族の介護で時短勤務化する場合に、常勤換算要件を緩和
令和3年介護報酬改定では、「自分の家族の介護で時短勤務化する場合」に常勤換算要件が緩和されることになりました。これは、育児介護休業法で定められている「介護による短時間勤務制度」との整合性を図るための改正です。例でご説明します。
家族介護のために時短勤務する場合の例
従来フルタイムで勤務していた介護職員が、自分の家族の介護のために、短時間勤務制度を利用。この場合でも、週30時間勤務することで「常勤」として、1名カウントされる。
この制度の導入によって、雇用している介護事業所にとっては、法律で定められている「人員の最低基準割れ」という危険を回避することが出来ます。同時に、労働者本人にとっても「離職」という選択肢を選ばなくても良くなるため、労使双方にとってメリットのある制度であると思います。
また、法律で常勤としての配置が求められる「管理者」、「サービス提供責任者」、「生活相談員」などにもこの規定が適用されるため、事業運営しやすい環境が整ったと言えます。
なお、このコラムでは「家族の介護」を理由とした短時間勤務制度について説明しましたが、「育児」を理由とした短時間勤務制度は令和3年介護報酬改定以前から認められています。
常勤職員の代わりに、臨時的に非常勤職員を配置することが可能に
もう1つのポイントは、自らの産前産後休業や、育児介護休業を余儀なくされる、常勤労働者に対して、複数の非常勤職員の常勤換算で、その代わりを務めることを認める制度です。具体例でご説明します。
常勤職員の代替要員の配置例
ある会社で、常勤のサービス提供責任者Aさん(介護福祉士)が、出産のため約1年間、産前産後&育児休業を取ることに。
この会社ではサービス提供責任者1名の配置義務があり、常勤で勤務できる介護福祉士はAさんだけである。そこで、非常勤の介護福祉士Bさん(週20時間勤務)とCさん(週20時間勤務)の2人の労働時間を合計することで、40時間を達成し、サービス提供責任者Aさんの代わりを務めることになった。
このように、常勤での配置が義務付けられている職種の方が、産前産後休業または育児介護休業で、一時的に会社を離れることに対して、円滑に後任職員を配置することが可能となります。これも、最低の人員基準でやりくりしている介護障害福祉事業者を助ける法改正であると思います。
さらにこの場合、産前産後休業・育児介護休業を取得した社員が「特定事業所加算」、「サービス提供体制強化加算」、「福祉専門職員配置等加算」など一定の常勤職員割合の要件に入っていても、休業の間、常勤職員の割合に含めることが認められるようになりました。
このコラムのまとめ
以上がこのコラムでお伝えしたかった「常勤換算要件の緩和」です。端的にまとめます。
常勤換算要件の緩和のまとめ
「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
人員配置基準や報酬算定において「常勤」での配置が求められる職員が、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合に、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員配置基準を満たすことを認める。
常勤換算法を詳しく理解して、開業に備えたい方は、是非当社の無料相談をご利用ください。
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【この記事の執筆・監修者】
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◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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