災害版BCP(業務継続計画)の作成方法を分かりやすく解説_令和6年4月作成義務化
災害版BCP(業務継続計画)の作成方法について解説します。厚生労働省のガイドラインだけではBCP(業務継続計画)の作成方法が分からない方必見の内容です。令和6年4月から作成が義務化されるBCPは感染症版と災害版の2種類を作成する必要があります。このコラムで取り上げるのは災害版BCP業務継続計画です。
このコラムの推奨対象者
・災害版BCP業務継続計画の作成方法が知りたい
・厚生労働省のガイドラインだけではBCPの作成方法が分からない
・感染症版と災害版、統合できるところは統合して効率化したい
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年5月)現在、介護障害福祉事業の累積支援実績562社。当社顧問先の事業所様からも令和6年4月に義務化されるBCP(業務継続計画)について多数お問い合わせ頂き、日々ご対応しています。
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災害版BCPと感染症版BCPの共通項目
初めに災害版BCPと感染症版BCPの共通項目について解説します。「感染症版BCPの作成方法」で取り上げた5つの重要項目、つまり「連絡先」、「備蓄品リスト」、「社内体制」、「初動対応」、「業務分類」のうち「初動対応」を除く4項目は災害版BCPと感染症版BCPで考え方の方針は同じです。微調整を加えつつ2つのBCPを統合することで作成を効率化することが可能です。
以下の説明では災害版BCP作成の特有の項目を中心に解説を進めてまいります。
想定される被災状況(ハザードマップ)
ここでは想定される被災状況について検討します。まずは事業所が位置する自治体のホームページなどでハザードマップの確認を行いましょう。ハザードマップは通常、地震版と水害版がそれぞれ準備されています。また原因となる活断層や河川ごとに数種類が作成されているケースが多いと思います。これらのハザードマップを確認した上で、最も甚大な被災想定となるものをBCPに差し込みましょう。
以下、当社の例をご紹介します。当社の本社は大阪市中央区に位置します。
地震版ハザードマップ(大阪市)
ハザードマップでは上町活断層地震で最大震度7が想定されていることが分かります。
また水害については、近隣の河川の氾濫や津波高潮が発生しても、本社ビルの位置までは到達しないことが分かります。
水害版ハザードマップ(大阪市)
施設建物自体の安全対策
ここでは施設建物自体の安全対策について検討します。建築基準法が改正され新耐震基準が適用された1981年(昭和56年)以前に建築された建物は、現行法の耐震基準を満たさない場合があります。自社所有の建物の場合、直ちに専門家による耐震診断を受けるなど対策を講じましょう。賃貸物件の場合は所有者や不動産管理会社に、耐震性能を確認する等必要な措置を講じましょう。
また事業所内に設置する設備や什器備品の転倒・転落防止についても検討が必要です。市販されている補強材等を活用して対策を講じましょう。
地域との連携
感染症発生の場合は、その対象が特定の1施設に限定される場合がありますが、災害発生の場合は、地域全体が一度に被災することになります。そのため災害発生に備えて、近隣の事業所との連携体制を事前に整えておくことが重要となります。
特にサービス提供の継続に向けた、近隣事業所との福祉職員の協力体制、および利用者の相互受け入れ態勢の事前確保が重要です。感染症版BCPでも検討した「連絡先の整理」の作業に付随して、相互の事業所で被災時の連携体制が取れるよう、日ごろからのネットワークを大切にしましょう。
災害発生時の対応拠点
感染症版BCPで検討した「社内体制の構築」に付随して、ここでは実際の対応拠点について検討を行います。「社内体制の構築」ではBCP特別チームを組織する旨をご説明しました。感染症発生時には施設建物自体には影響がないため、従来の事業拠点での指揮命令系統の維持が可能ですが、災害発生時にはそうはいきません。施設建物自体が損壊する可能性があるためです。
よってBCP特別チーム自体の活動拠点を予め明確にしておく必要があります。倒壊や浸水の危険性の低い場所を複数リストアップし、対応拠点を優先付けしておく必要があります。場合によっては屋外に対応拠点を設ける必要があることから、その場合に備えてテント等を確保することも視野に入れましょう。
安否確認と避難
ここでは安否確認と避難について解説します。サービス提供時間内に災害が発生した場合、まずは自身と利用者の安全確保を最優先するようBCPに記載します。また水害の場合に備えて垂直避難ルートも検討しておきます。垂直避難とは、今いる建物や近隣の建物の上層階へ緊急避難することです。
また即座に職員と利用者の安否確認が取れるよう、日ごろから勤務表や利用者リストをリアルタイムで共有できる仕組み作りが必要となります。
職員の参集基準
ここでは職員の参集基準について解説します。災害時には職員との電話等の通信手段が遮断される可能性があるため、予めどのような条件で事業所へ参集するかの基準を定めておきます。
災害時には職員本人の勤務時間外や公休日にも、特段の指示を行わなくても自発的に参集出来るよう、BCPはもとより就業規則や労使協定に記載しておくことが望ましいと言えます。
参集条件の例
①自身および家族の無事が確実であること
②被災地点から事業所まで概ね3km以内の距離にいること
③参集は徒歩とし、途中道路の陥没や橋梁落下の場合は無理せず引き返すこと
以上のようなルールを予めBCPに盛り込んでおきます。
研修と訓練の実施
最後にBCPに関する研修と訓練の実施について解説します。感染症と異なり、災害は一瞬かつ地域全体に被害が及ぶため、災害が発生しても慌てず冷静に行動できることがポイントとなります。そのために欠かせないのが日ごろの研修と訓練です。定期的な座学研修はもとより、災害時を想定した避難訓練については、避難場所の確認や実際の避難行動など、定期的な訓練を心掛けましょう。
まとめ
以上、災害版BCPの作成について解説しました。ここまで作成できたらBCPの8割は完成したと言えます。残り2割は厚生労働省のひな型を参考に、完成させていきましょう。
関連コラムも併せてご覧頂けると幸いです。
BCP業務継続計画を策定支援
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参考(厚労省WEBサイト)
【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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