【令和6年度法改正対応】運営基準の一般原則|ケアプランと訪問介護計画、法定代理受領、秘密情報の取扱|訪問介護の開業講座④
タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第4回のテーマは「運営基準の一般原則」です。ケアプランと訪問介護計画の関係、法定代理受領の意味、秘密情報の取り扱いについて詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・ケアプランと訪問介護計画の関係性を理解したい方
・法定代理受領と償還払いの違いを理解したい方
・訪問介護サービス利用者の個人情報(秘密情報)の取り扱いを理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数69名、累積顧客数は北海道から沖縄まで763社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムではケアプランと訪問介護計画の関係、法定代理受領の意味、秘密情報の取り扱いについて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
ケアプランに沿った訪問介護計画
今回のコラムでは、運営基準のうち、訪問介護事業運営の基礎の部分を抜粋しています。基本知識の整理がおぼつかない方は、今回のコラムで確実にマスターして頂く必要がありますが、すでに訪問介護事業運営の基礎知識がある方にとっては初歩的な内容となっているため、パスしてもらっても結構です。
居宅サービス計画と訪問介護計画の関係
まずは居宅サービス計画と訪問介護計画の関係について解説します。以下、居宅サービス計画のことをケアプランと略称で呼びます。
訪問介護事業所がサービスを提供する際、前提となるのはケアマネジャーが作成するケアプランです。このケアプランに沿って、訪問介護事業所のサービス提供責任者が、訪問介護計画を作成します。訪問介護計画には、利用者ごとに援助の方向性、訪問介護員の氏名、提供するサービス、所要時間、日程など具体的項目を記載します。
訪問介護員は、訪問介護計画に従って、実際の訪問介護サービスを提供し、サービス提供記録を作成するわけです。
運営指導(実地指導)時の確認事項
運営指導(旧称実地指導)の際には、ケアプラン、訪問介護計画、サービス提供記録の整合性を確認します。つまり、ケアプランに記載のない訪問介護サービスを提供している場合、そのサービス提供は認められず、報酬の返還対象となります。またケアプランに記載されている訪問介護サービスが提供されていない場合にも、指導対象となるため注意が必要です。(16条、24条 以下括弧書きの条文番号は運営基準を指します。)
利用者に対する援助
ここからは訪問介護サービスを提供する上での、利用者援助の視点から運営基準を確認していきます。
要介護認定申請の援助
まずは要介護認定申請の援助です。
訪問介護事業者は、訪問介護サービスの提供開始の際、利用者の介護保険被保険者証によって、被保険者資格、要介護認定の有無、有効期間を確認する義務を負います。(11条)
仮に利用者が未だに要介護認定の申請をしていない場合には、申請を援助する必要があります。
またケアマネジャーが付いていない、いわゆるセルフプランの利用者の場合には、要介護認定の有効期間の30日前までに、更新申請が行われるよう援助する必要があります。(12条)
法定代理受領手続きの援助
続いて法定代理受領の援助です。法定代理受領とは、訪問介護サービス費が利用者に代わり、訪問介護サービス事業者に直接支払われることを言います。
この法定代理受領のための届出手続きができておらず、償還払いとなっている場合、訪問介護サービス費がいったん利用者に支払われ、その後に利用者自らが訪問介護サービス事業者に支払うという煩雑さが生じます。
そのため、訪問介護事業者には利用者が法定代理受領サービスとして訪問介護サービスの提供を受けることができるよう、援助する義務が定められています。(15条)
サービス提供証明書の発行
続いてやむを得ず法定代理受領となっておらず、償還払いとなっている利用者に対する援助です。
償還払いとなる場合の具体例として、ケアプランが作成されていない場合、要介護認定前にサービスを利用した場合、保険料滞納がある場合等が挙げられます。このような場合には、訪問介護事業者は、訪問介護の内容、費用の額などを記載したサービス提供証明書を、利用者に対して交付する義務を負います。
その証明書に基づき、利用者が保険者つまり市町村に対して訪問介護サービス費を請求し、利用者に訪問介護サービス費が支払われた後に、利用者自らが訪問介護サービス事業者に支払う流れとなります。(21条)
このように、訪問介護事業者には、利用者が介護保険制度を適切に利用できる様、手続き上の様々な援助を行う義務が定められているわけです。
訪問介護サービス提供中の利用者の状況把握
続いて、訪問介護サービス提供中の利用者の状況把握について確認して行きます。
サービス担当者会議を通じて状況把握
訪問介護事業者は、ケアマネジャーが開催するサービス担当者会議等を通じて、利用者の心身の状況、生活環境、他の保健医療サービスや福祉サービスの利用状況等の把握に努める義務を負います。(13条)
これらの過程で、利用者がケアプランの変更を希望する場合、または訪問介護サービス事業者がケアプランの変更の必要性があると判断する場合には、ケアマネジャーへの連絡等の援助を行う義務を負います。(17条)
利用者がサービスを拒否または不正があるとき
一方で、利用者が正当な理由がないにもかかわらず、訪問介護の利用に関する指示に従わず、要介護状態が悪化する場合や、利用者自らに不正行為がある場合には、訪問介護事業者はその状況を市町村に対して通知する義務を負います。(26条)
このように、利用者の日々の生活に密接に関わる訪問介護事業者には、利用者の状況を把握し、関係機関に情報連携する義務が定められているわけです。
秘密保持義務と情報連携
ここでは、訪問介護事業者に課せられる秘密保持義務と情報連携について解説します。
訪問介護事業者は、サービス提供するに当たり、利用者および家族に関する相当量の個人情報に接することになります。そのため、事業者は従業員の在籍中はもとより、退職後も秘密を保持させる義務を負います。
設備基準においては、秘密情報保護の観点から鍵付きキャビネットの設置や、相談室の設置に一定の条件が定められています。訪問介護事業所の事務所要件についてはこちらのコラムを併せてご参照下さい。
秘密保持義務を負う一方で、前の項で解説した通り、利用者の状況変化についてケアマネジャーへ連絡し、サービス担当者会議で関係者と共有する必要もあります。そのため、必要な範囲で個人情報を用いることについて、利用者および家族から同意を得ておく必要があります。(33条)
この同意を得ることを前提に、訪問介護事業者はケアマネジャー、医療機関、その他福祉サービス機関と密接な連携関係を構築していくことになります。くれぐれも秘密情報の管理には注意して対応しましょう。(14条、27条)
まとめ
「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第4回では「運営基準の一般原則l」について解説しました。ケアプランと訪問介護計画の関係、法定代理受領の意義、秘密情報の取り扱いについてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
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