【令和6年度法改正対応】訪問介護事業者マニュアル整備《運営指導対策》高齢者虐待防止とBCPは減算|訪問介護の開業講座⑨
タスクマン合同法務事務所がお送りする福祉起業塾です。近い将来、訪問介護の立ち上げを考えておられる方に向けて「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」をお届けします。第9回のテーマは「訪問介護事業者のマニュアル整備」です。高齢者虐待防止指針、BCP、感染症・苦情・緊急時・事故対応マニュアルについて詳しく解説します。
このコラム推奨対象者
・訪問介護事業者が整備しなければならない各種マニュアルについて理解したい方
・各種マニュアルの整備ができていない場合の減算適用について理解したい方
・各種マニュアルに記載する具体的項目について理解したい方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は社労士・行政書士・司法書士・税理士が合同し、介護保険事業・障害福祉事業に専門特化してご対応しています。このコラムの執筆日時点、職員数72名、累積顧客数は北海道から沖縄まで790社、本社を含め8つの営業拠点で運営しています。コラムでは訪問介護事業所の高齢者虐待防止指針、BCP、感染症・苦情・緊急時・事故対応マニュアルについて詳しく解説します。
同じ内容を動画でも解説しています。
高齢者虐待防止指針
初めに減算が生じる重大な項目から解説します。訪問介護事業所の高齢者虐待防止指針です。
介護保険法の本旨となる、利用者の尊厳を守る観点から、虐待防止措置に関する厳格なルールが導入されました。訪問介護事業者は従業員による利用者虐待が発生しない様、事業所内で指針を作成する義務があります。この指針を運営基準では「高齢者虐待防止指針」と言い、8項目の記載事項が定められています。具体的に確認しましょう。
基本的考え方
1点目に事業所における虐待防止に関する基本的考え方です。指針を作成するにあたり、根底となる基本理念を記載します。
虐待防止検討委員会に関する事項
2点目に虐待防止検討委員会に関する事項です。高齢者虐待防止に取り組む組織構成について記載します。
従業員に対する虐待防止研修に関する事項
3点目に従業員に対する虐待防止研修に関する事項です。年間の研修日程や研修テーマなどを記載します。
実際に虐待が発覚した場合の対応方法
4点目に実際に虐待が発覚した場合の対応方法です。被害者および加害者への具体的な対応方法を記載します。
実際に虐待が発覚した場合の相談・報告体制
5点目に同じく実際に虐待が発覚した場合の相談・報告体制です。事業所内外への相談・報告のフローを記載します。
成年後見制度の利用支援に関する事項
6点目に成年後見制度の利用支援に関する事項です。2種類ある成年後見制度のうち、法定後見・任意後見それぞれの利用を支援する取組を記載します。
虐待等に関する苦情解決方法
7点目に虐待等に関する苦情解決方法です。利用者・家族、または職員からの内部通報の受付先、受付後の対応ルールについて記載します。
作成した「高齢者虐待防止指針」の閲覧方法
最後に8点目、作成した「高齢者虐待防止指針」の閲覧方法です。実際にこの指針を利用者・家族に閲覧してもらう方法について記載します。
以上8項目の内容を備えた「高齢者虐待防止指針」を作成した上で、さらに以下の対応が必要となります。
・虐待防止対策検討委員会の定期開催
・委員会検討結果に関する職員周知
・年1回以上の虐待防止研修の実施
・虐待防止担当者配置が必要となります。
これらの条件のうち1つでも欠く場合1%の減算が生じます。令和6年4月1日以降この減算制度が適用されており、現実的には運営指導で不備を把握した月の翌月から利用者全員に対して減算適用となります。実際に高齢者虐待が生じているか否かは問いません。
減算の開始と終了について解説します。
行政機関から高齢者虐待防止措置の不備が指摘された日を4月15日とします。指摘後、速やかに改善計画書を提出します。この場合4月が指摘月、5月が減算開始月となります。
4月起算点とし3カ月後の7月に改善状況を報告します。この改善報告の内容が7月に認められた場合、減算が終了します。つまり、改善報告の提出が遅れた場合や内容に不備がある場合、減算は継続することになります。
業務継続計画(BCP)
続いて訪問介護事業所の業務継続計画について解説します。業務継続計画は、感染症拡大や大規模災害が発生しても可能な限り業務を継続するための計画のことを言い、Business Continuity Planningの頭文字から、BCPと略称で呼ばれます。ここでもBCPと略称で呼んで解説します
BCPについては、令和6年3月以前は努力義務、4月から完全義務化となります。BCP作成が未実施の場合、基準違反となり、さらに1年の経過措置期間を経て令和7年4月からは1%の減算が適用されます。
BCPの作成方法についてはこちらをご参照下さい。
災害版BCP(業務継続計画)の作成方法を分かりやすく解説_令和6年4月作成義務化
BCPについては策定に併せて、訪問介護員への内容の周知、研修、訓練、定期的な見直しが義務付けられていますが、減算の対象となるのはBCP自体が未策定の場合のみであり、内容の周知、研修、訓練、定期的な見直しがないことは減算対象にはなりません。
しかし、先に解説した「高齢者虐待防止措置未実施減算」と異なり、BCPを策定していない場合、令和7年4月1日に遡って1%の減算がかかるため、注意が必要です。
つまり、仮に訪問介護事業所で令和8年4月の運営指導で、BCPの未策定が判明した場合、1年前の令和7年4月1日から、実際にBCPを策定できた月まで減算がかかるという意味です。
BCPの策定ができていない訪問介護事業所様は、是非当社までご相談下さい。
感染症・苦情・緊急時・事故対応マニュアル
本編の最後に、減算対象とはならないものの運営基準に明記されている、または運営指導時の標準確認文書に指定されているマニュアル類について解説します。
感染症予防及びまん延防止マニュアル
1点目が感染症予防及びまん延防止マニュアルです。新型コロナウイルスの感染拡大の反省から、訪問介護事業所にも平常時および発生時の対応マニュアルの策定義務が定められています。具体的な記載事項としては、事業所内の衛生管理、手洗いなどの感染対策、発生時の状況把握、拡大防止、関係機関への情報連携などが挙げられます。
苦情対応マニュアル
2点目が苦情対応マニュアルです。訪問介護サービスの利用者または家族から寄せられる苦情に備えて、苦情処理窓口、連絡方法、苦情対応方法等を記載します。苦情対応マニュアルは運営規程と重要事項説明書に記載する必要があります。
緊急時対応マニュアル、事故対応マニュアル
続いて緊急時対応マニュアル、事故対応マニュアルをセットで解説します。訪問介護サービスの提供中に、利用者に病状の急変が生じた場合や事故が発生した場合、速やかに主治医・管理者・ケアマネジャー・家族等へ連絡する方法等を記載します。なお緊急時対応および事故対応マニュアルも運営規程と重要事項説明書にも記載しておく必要があります。
まとめ
「令和6年度法改正対応、訪問介護の開業講座」、第9回は「訪問介護事業者のマニュアル整備」について解説しました。高齢者虐待防止指針、BCP、感染症・苦情・緊急時・事故対応マニュアルについてご理解頂けたかと思います。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
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