訪問看護ステーションを設立・開業するために必要な人員基準と要件|看護師・保健師・准看護師の違いは?2.5名の計算法は?
訪問看護ステーションの設立・開業のために必要な人員基準について説明します。2.5名の常勤換算の考え方、算定できる有資格者の種類、管理者の要件、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの取り扱いについて。このコラムの内容をしっかり理解したうえで、スタッフの採用計画を立てましょう。
このコラムの推奨対象者
・訪問看護の設立・開業に必要な常勤換算2.5名の意味を理解したい人
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の訪問看護における位置づけを理解したい人
・訪問看護ステーションにおける管理者の役割を理解したい人
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に特化しています。このコラムのリライト(更新)時である、令和3年7月、これまでの累積支援実績が400社を超えました。日々訪問看護の人員基準のご質問対応を行っていますので、どうぞ安心してコラムをお読み下さい。
必要人員2.5名に算定できる資格者、指揮命令関係
常勤換算法とは?
新たに訪問看護事業所を立ち上げる場合、看護師数は常勤換算法で2.5名以上必要となることはご存知のことと思います。
ここで言う常勤換算法とは、例えばパート勤務など短時間勤務の看護師がいる場合に、全看護師の勤務時間合計を、事業所の所定労働時間で割った数を、看護師の人数として計算してよい、という仕組みでです。
常勤換算の例
短時間勤務者を含む看護師の1週労働時間合計100時間
この事業所の1週当たり所定労働時間が40時間
勤務時間合計(100時間)÷ 事業所の所定労働時間(40時間)=2.5名
なお1週当たり所定労働時間は、一般的には40時間ですが、訪問看護事業所が独自に定めることができます。所定労働時間が少ないほど、上記の計算例で言う「勤務時間合計」が少なく2.5名を達成することができますが、所定労働時間の下限は32時間とされています。
逆算すると、2.5名の常勤換算を満たすための最低ラインの勤務時間は次の通り計算することができるわけです。
常勤換算法の例(最低ライン)
事業所の所定労働時間(32時間)× 2.5名 = 勤務時間合計(80時間)
尚、看護師のうち、少なくとも1名以上は常勤としなければなりませんので、注意しましょう。
常勤換算法に算入できる資格者は?
ここで常勤換算2.5名に算入できる資格者について確認しておきましょう。看護師以外に常勤換算2.5名に算入できるのは次の資格者です。
保健師
保健指導、健康管理を主に担当。受験のためには看護師資格を得ている必要があります。
准看護師
医師、看護師の指示のもとで診療補助を行います。国家資格である看護師と異なり、准看護師では都道府県認定の資格ですが、活動は当道府県を超えて行うことができます。ただし訪問看護報酬は10%減算されます。
出来高払いの勤務看護師の取り扱い
時給制で勤務する看護師と異なり、1件ごとの訪問実績に応じて給与が決まる看護師のことを、仮に「出来高払い制」と名付けることにします。
時給制と異なり出来高払い制の場合、勤務時間を固定化することが困難です。そのため、出来高払い制の看護師を雇用する場合の常勤加算法は、次の通りとなります。
〇過去に事業所で出来高払い制の雇用実績がある場合
出来高払い制の看護師の週当たり平均稼働時間によって、常勤換算を計算する。
〇過去に事業所で出来高払い制の雇用実績がない場合(つまり新規指定)
確実に稼働できるものとして、勤務表に明記されている時間。当然ながら、勤務表と実態が乖離している場合は、指導対象となるので注意。
理学療法士等の配置について
訪問看護ステーションには看護師以外の次の資格者を配置し、訪問看護サービスを提供させることができます。ただし、人員基準2.5名には算入できません。
理学療法士(PT)
運動機能回復のためのリハビリテーションの専門資格
作業療法士(OT)
日常生活動作に関するリハビリテーションの専門資格
言語聴覚士(ST)
咀嚼、言語機能に関するリハビリテーションの専門家
訪問看護ステーション設立・開業のために最低限必要な2.5名は保健師、看護師、准看護師の3資格だけで計算するため、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は何名配置しても必要人員の計算には参入することができません。
従って、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士については、法令上「実情に応じた適当数」を配置すれば足りるとされています。(もちろん配置しなくても問題ありません。)
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問看護業務に従事する際、報酬単価は低めに設定されています。詳しくはこちらのコラムをご参照ください。
また、近年は理学療法士等に対する報酬は減額傾向にあり、今後制度変更の可能性が十分にあります。詳細はこちらのコラムをご参照下さい。
訪問看護のリハ職報酬減額 令和3年度介護報酬改定
訪問看護ステーションの管理者
管理者の要件
訪問看護ステーションには、管理者を配置しなければなりません。管理者の要件は次の全てを満たす者とされています。
訪問看護 管理者の要件
・常勤であること
・保健師または看護師であること
・医療機関における看護または訪問看護に従事した経験があること
管理者の責務
訪問看護ステーション管理者は、「従業員・サービス提供契約の締結・サービスの実施状況」、以上3点について一元的に管理する責任を負っています。
管理者の兼務
訪問看護ステーションの管理者は、管理業務に専従する必要があるため、原則として常勤換算法2.5名の人員に算入することはできません。しかし、訪問看護の管理業務に支障がない場合は兼務が認められます。
コラムのまとめ
以上が訪問看護ステーションの設立・開業に必要な人員基準についての概要です。常勤の管理者が訪問看護師業務を兼ねる場合、2.5名の看護師等により、訪問看護ステーションを開業することができます。
常勤換算法を正しく理解しておかないと、無駄な人員配置に繋がる可能性があります。訪問看護事業の開業を計画される際は、是非当社の無料相談を利用されることをお勧めします。
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訪問看護のリハ職報酬減額 令和3年度介護報酬改定
【この記事の執筆・監修者】
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ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
06-7739-2538
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