訪問看護の介護保険報酬(加算)|看護体制強化加算、サービス提供体制強化加算を中心に

訪問看護の介護保険報酬② 加算を中心に
井ノ上剛(社労士・行政書士)

訪問看護事業の報酬加算について解説します。利用者の個別事情に対応する場合や、事業所の人員配置を工夫することで各種の報酬加算を算定することができます。訪問看護の基本報酬を理解してから、続けてこちらの報酬加算を理解されることをお勧めします。訪問看護の事業計画のために、必見のコラムです。

このコラムの推奨対象者

・訪問看護ステーションの報酬加算の詳細を理解したい人
・利用者の個別事情に対応する場合の加算 を理解したい人
・人員配置に関する加算 を理解したい人

このコラムの信頼性

タスクマン合同法事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援を専門的に取り扱う合同法務事務所です。このコラムのリライト(更新)時の令和3年8月時点で、介護障害福祉事業の累積設立支援実績が400社を超えました。訪問看護の加算相談にも日常的にご対応していますので、安心してお読み下さい。

訪問看護サービスの初回加算

訪問看護サービスにおける初回加算とは、新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、初回訪問看護月に算定することが出来る加算です。300単位を算定することができます。

ここで言う「新規に」とは暦月で過去2カ月間、訪問看護サービスを利用していない利用者のことを指します。

利用者の個別事情に応じて特別な訪問看護サービスを提供する場合の加算

次に利用者の個別事情に応じて特別な訪問看護サービスを提供する場合の加算について確認します。

複数名訪問加算

訪問看護サービスにおける複数名訪問加算とは、2名以上の看護職員がサービス提供する場合の加算です。複数名訪問加算を算定するためには、次のいずれかに該当する必要があります。

・利用者の身体的理由(体重が重い)
・利用者に暴力行為、迷惑行為がある(看護職員保護のため)
・その他必要性が認められる場合

複数名訪問加算は、訪問する看護職員に応じて、次の4種類があります。

加算種別 内容 単位数
1-1 複数名の看護師 30分未満 254
1-2 複数名の看護師 30分以上 402
2-1 看護師&補助者 30分未満 201
2-2 看護師&補助者 30分以上 317

ここで言う「補助者」とは看護師の指導の下で、食事、排泄などの世話を行いつつ、看護補助を行う者を指します。看護師資格の有無は問いませんが、訪問看護事業所に雇用されている必要がある点に注意しましょう。

長時間(1時間30分以上)訪問看護加算

原則的な訪問看護サービスは、1訪問当たり1時間30分未満とされています。

訪問看護サービスにおける1時間30分を超えるサービス提供は、利用者が厚労大臣の定める特に重い要看護状態(利用者告示六)にある場合に算定できる加算です。1回あたり300単位を算定することができます。

夜間・早朝、深夜加算

訪問看護サービスにおける夜間、早朝、深夜加算とはサービス提供の開始時刻が次の時間帯にある場合に算定できる加算です。

呼称 時間帯 加算
夜間 18時~22時 25%増
早朝 6時~8時 25%増
深夜 22時~翌6時 50%増

なお、サービス提供開始が上記の時間帯にあったとしても、全体のサービス提供時間に占める割合がごくわずかな場合は、夜間・早朝、深夜加算は算定できない点に注意しましょう。

緊急時訪問看護加算

訪問看護サービスにおける緊急時訪問看護加算は、次の2つの条件を満たすことにより、574単位算定することが出来る加算です。

・利用者またはその家族から24時間相談を受けることができる体制
・計画訪問以外の緊急訪問を行うことが出来る体制

緊急時訪問看護加算を算定しつつ、実際に緊急訪問を行った場合、月のうち1回目は、夜間・早朝、深夜加算は算定できませんが、月のうち2回目以降は、夜間・早朝、深夜加算も算定できるようになる点を理解しておきましょう。

特別管理加算

訪問看護サービスにおける特別管理加算とは、利用者が厚労大臣の定める特に重い要看護状態(利用者告示七)にある場合に算定できる加算です。

要看護状態に応じて、2種類ありそれぞれ1か月あたり500単位、250単位を加算することができます。

退院時共同指導加算

訪問看護サービスにおける退院時共同指導加算とは、利用者が病院、介護施設を退院(退所)するにあたり、共同指導を行うときに算定できる加算です。

退院(退所)1回につき600単位を算定することが出来ます。共同指導とは次の表に示す通りです。

だれが指導する? だれに指導する?
訪問看護ステーションの看護師と主治医(または他の従業者)の共同 利用者本人またはその看護者(家族)

ターミナルケア加算

訪問看護ステーションにおけるターミナルケア加算とは、次の全てを満たして事前に届出をしている事業所が、利用者の死亡前14日以内に2日以上ターミナルケア(終末期ケア)を行った場合に算定できる加算です。死亡月に2000単位を加算することができます。

ターミナルケア加算を算定するために満たすべき3条件

・当利用者に対し24時間連絡体制をとり、現に24時間訪問できる
・主治医と連携し実施計画を策定、利用者及び家族に同意を得ている
・ターミナルケア実施について、適切な記録を取る

なお、利用者が厚労大臣の定める特に重い要看護状態(利用者告示八)にある場合には、死亡前14日以内に1日のターミナルケア実施で算定することができる点を理解しておきましょう。

質の高い人員配置を行う訪問看護ステーションに対する加算

次に質の高い人員配置を行う訪問看護ステーションに対する加算について確認しましょう。

看護体制強化加算

訪問看護サービスにおける看護体制強化加算とは、特別な訪問看護の体制が整っているとして届出を行うことで算定できる加算です。具体的には次の表の通りです。

加算種別 要件(全て満たすこと) 加算単位
加算Ⅰ ①前6カ月に緊急時訪問看護加算算定者が50%以上
②前6カ月に特別管理加算算定者が20%以上
③前12カ月にターミナルケア算定者が5名以上
550単位
加算Ⅱ ①前6カ月に緊急時訪問看護加算算定者が50%以上
②前6カ月に特別管理加算算定者が20%以上
③前12カ月にターミナルケア算定者が1名以上
200単位

 

サービス提供体制強化加算

訪問看護サービスにおけるサービス提供強化加算とは、ステーションに所属する看護師の質が高いとして届出を行うことで算定できる加算だ。具体的には次の4つの条件を満たす必要があります。

加算種別 要件 加算単位
(イ) ・看護師ごとに研修計画を策定し実施
・利用者情報会議または技術指導会議を定期開催
・全看護師に対して定期健康診断を実施
・全看護師のうち勤続7年以上の締める割合が30%以上※
6単位(回)
(ロ) ・看護師ごとに研修計画を策定し実施
・利用者情報会議または技術指導会議を定期開催
・全看護師に対して定期健康診断を実施
・全看護師のうち勤続3年以上の締める割合が30%以上※
3単位(回)

・看護師ごとに研修計画を策定し実施
・利用者情報会議または技術指導会議を定期開催
・全看護師に対して定期健康診断を実施
・全看護師のうち勤続3年以上の締める割合が30%以上※

※常勤換算法により前年度実績を用いる。前年度実績が6か月に満たない事業所、または新設事業所の場合は、直前3か月の平均を用います。

看護・介護職員連携強化加算

訪問看護サービスにおける看護・介護職員連携強化加算とは、訪問介護事業所の介護職員がたんの吸引などの業務を円滑に行えるよう支援する際に算定できる加算です。1か月に1回、250単位を加算することができる。

看護・介護職員連携強化加算の算定のためには、緊急時訪問看護加算の届出を出していることが条件となるので注意しよう。

このコラムのまとめ

以上がケースごとの加算を中心とした、訪問看護サービスの報酬算定のルールです。このコラムで解説した加算については、あなたの訪問看護ステーションの運営方針と密接にリンクすることがお分かり頂けたと思います。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538