訪問看護の介護保険報酬(基本報酬)20分未満の訪問看護、2時間ルール、看護師、准看護師、理学療法士の報酬算定

訪問看護の介護保険報酬① 基本報酬を中心に 
井ノ上剛(社労士・行政書士)

訪問看護の基本報酬についてご説明します。20分未満の訪問看護、2時間インターバル・ルール、看護師、准看護師、理学療法士等それぞれの報酬算定ルールを理解していますか?このコラムでは訪問看護の基本報酬について、介護福祉事業設立支援の専門家が詳しく解説します。

このコラムの推奨対象者

・訪問看護ステーションの基本報酬の考え方を理解したい方
・20分未満の訪問看護、2時間インターバル・ルール を理解したい方
・看護師、准看護師、理学療法士等それぞれの報酬算定ルール を理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した合同法務事務所です。このコラムのリライト(更新)時点の令和3年8月時点、介護障害福祉事業の累積支援実績が400社を超えました。日々の開業相談の中で、訪問看護の基本報酬について数多くのご対応をしておりますので、安心してお読み下さい。

訪問看護ステーションの介護保険基本報酬

訪問看護ステーションの開設にあたり、まずは介護保険の基本報酬を確認しましょう。

訪問看護ステーションの介護保険報酬は、サービス提供時間等に応じて次の表の通りとなっています。

サービス提供時間等 介護保険報酬
20分未満 313単位
30分未満 470単位
1時間未満 821単位
1時間30分未満 1125単位
理学療法士等※の場合 293単位

※理学療法士のほか、作業療法士、言語聴覚士

☑令和3年度報酬改定

退院当日の訪問看護について、主治医が必要と認める場合は算定可能とされました。

以下基本報酬を中心に、訪問看護ステーションの設立・開業前に理解しておきたい報酬算定ルールを解説します。

20分未満の訪問看護サービスを提供できる条件

上記の表をご覧いただくと、短時間の訪問看護サービス提供の方が、分当たりの報酬単価が高く設定されていることがお分かり頂けると思います。

これは利用者宅を訪問するにあたって必要な移動時間を考えた場合に、短時間かつ多件数の訪問看護サービスを提供する場合に対して、報酬を手厚くしているのが理由です。

しかしながら20分未満の訪問看護については、次の2つの条件を満たさないと算定できません。

・保健師または看護師による20分以上の訪問看護が週1回以上含まれること
・24時間体制で応対できる緊急時訪問看護加算を届出ていること

>>緊急時訪問看護加算についてはこちら

以上2つの条件を事前に確認しつつ、20分未満の訪問看護サービスの対応を検討しましょう。

准看護師が訪問看護サービスを提供する場合の減算

准看護師も、看護師同様、訪問看護ステーションを設立・開業するに必要な2.5名の人員基準に算定することができます。

>>看護師と准看護師の違いについてはこちらを参照

准看護師が訪問看護サービスを提供する場合、所定単位数が10%減算(90%算定)されることを予め理解しておきましょう。

理学療法士等が訪問看護サービスを提供する場合

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(以下理学療法士等)による訪問看護は、リハビリテーションを目的に「看護師の代わりに訪問させる」との位置づけです。

理学療法士等が訪問看護サービスを提供する場合は、次の2つの条件を満たす必要があります。

・1回あたり20分以上の訪問看護を提供する(20分未満は算定できない)
・1人の利用者についての算定限度は週に6回まで

以上の2つの条件を事前に確認しつつ、理学療法士等の雇用、訪問計画を検討しましょう。

訪問看護における2時間インターバル・ルール

先に説明した通り、短時間の訪問看護サービス提供の方が、分当たりの報酬単価が高く設定されています。ここでは本来長時間提供すべき訪問看護を、短時間に分割することを抑制する仕組みを説明します。

2時間インターバル・ルール

訪問看護における2時間インターバル・ルールとは、前回の訪問から2時間以上の間(インターバル)を開けないと、前回の訪問と時間を合算して計算する、という仕組みです。

この仕組みによって、訪問看護サービスの短時間分割化を抑制しています。

ただし、先に説明した20分未満の訪問看護を算定する場合や、緊急時対応をする場合は例外的に除かれます(つまり、2時間インターバル・ルールが適用されません)。利用者に対する頻回医療措置が必要となるためです。

看護師と准看護師の時間合算

では、先の2時間インターバイル・ルールの適用を受けて、前後2回の訪問看護サービスの提供時間が合算されるケースを考えてみましょう。

前後2回の訪問看護サービスの提供がともに看護師である場合(または准看護師である場合)は、純粋に2回の訪問看護サービス提供時間を合算して報酬を算定します。

一方で、前後2回の訪問看護サービスの提供に看護師、准看護師が混在する場合を検討します。

このような場合(つまり合算される2回以上の訪問看護サービスの提供に、1回でも准看護師が混じっている場合)、全体を准看護師によるサービス提供であるとして報酬算定します。

結果、所定報酬を10%減算(90%算定)することになります。

看護職員と理学療法士等の時間合算

次に、看護職員と理学療法士等が連続して(2時間以上のインターバルを開けずに)サービス提供する場合を想定しましょう。ここで言う看護職員と理学療法士等とは次の表のとおりです。

イ)看護師等 保健師、看護師、准看護師
ロ)理学療法士等 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士

イ、ロそれぞれの訪問看護サービスが連続して(2時間以上のインターバルを開けずに)サービス提供する場合、職種ごとに報酬を算定することができます。

それぞれが提供する訪問看護サービスの目的が異なることが理由です。

計画と異なる資格者が訪問看護サービスを提供した場合

次に、計画と異なる資格者が訪問看護サービスを提供した場合を検討しましょう。ケースを大きく二つに分け、表により整理してみます。

准看護士と保健師・看護師

計画上の訪問者 実際の訪問者 報酬算定
准看護師 保健師・看護師 10%減算(90%算定)
保健師・看護師 准看護師 10%減算(90%算定)

准看護師と理学療法士等

計画上の訪問者 実際の訪問者 報酬算定
准看護師 理学療法士等 理学療法士の報酬
理学療法士 准看護師 理学療法士の報酬

以上の算定ルールを十分に把握したうえで、計画上の訪問者の交代要員の配置を計画しよう。

同一建物の利用者にサービス提供を行う場合の減算

訪問看護ステーションと同じ建物に住む利用者、隣接する建物にする利用者に対して、訪問看護サービスを提供する場合、または訪問看護ステーションとは全く異なる場所に利用者が住んでいるが、その建物に対象利用者が複数いる場合。

上記については訪問看護の移動時間が短縮され、効率的な運営ができるため一定の報酬減算が生じます。

具体的な減算割合は訪問介護と同様であるので、こちらの説明をご確認下さい。
>>同じ建物に住む要介護利用者にまとめて訪問介護サービスを提供した場合の減算

このコラムのまとめ

以上が基本報酬を中心とした、訪問看護の介護保険報酬です。基本報酬の理解なしでは、人員配置計画はもとより、事業計画を策定することもできません。

訪問看護ステーションの設立・開業前に、基本報酬について理解したい場合は、ぜひ当社の無料相談の利用をお勧めします。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)0120-60-60-60 
     06-7739-2538