介護障害福祉事業を開業する時に必要となる知識の全体像【介護障害福祉事業での開業が不安な方へ-後編】
現在、介護障害福祉事業で従事しているあなたへ。「いつかは独立開業したい」という思いをお持ちではありませんか?前編後編で解説するコラム後編では、介護障害福祉事業の開業時に必要となる知識と業務の全体像を解説します。当社の累計552社のサポート経験によって、あなたの独立開業に対する不安を払しょくします。
前編も併せてお読みください。
このコラムの推奨対象者
・介護障害福祉事業に従事していて、将来の独立開業を夢見る方
・介護障害福祉事業を開業して間もない方
・現場経験は豊富だけれど、会社の運営面に不安のある方方
コラムの信頼性
タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した法務事務所です。このコラムの執筆時(令和5年4月)現在、介護障害福祉事業の累積支援実績552社。日々多くの方からの介護障害福祉事業の開業相談に対応しています。このコラムでは介護障害福祉事業の開業時の不安を払拭すべく、専門家が詳しく解説します。
このコラムで解説する「会社を設立して介護障害福祉事業を開始するための必要知識・業務」とそれらの分野の専門家をまとめました。あなたが開業時に直面する順に掲載しています。
タスクマン合同法務事務所は、以下の業務にワンストップで対応可能です。
項目 | 専門家 | 具体的には? |
定款作成 | 行政書士 | 「定款」は会社の憲法ともいえる基本書類です。 |
会社登記 | 司法書士 | 定款に即して法務局に登記申請を行うことで会社が成立します。 |
就業規則 | 社労士 | 従業員の労働条件を書面に整備します。 |
賃金規程 | 社労士 | 従業員の賃金の決め方や昇給のルールを書面に整備します。 |
処遇改善加算 | 社労士 | 福祉職員の賃金改善のための加算です。対象外業種もあります。 |
雇用契約 | 社労士 | 就業規則・賃金規程に基づき雇用契約書を締結します。 |
銀行借入 | 行政書士 | 創業計画書を作成し必要書類とともに融資申込を行います。 |
指定申請(事前協議) | 行政書士 | 営業開始のための許認可申請を行います。 |
雇用保険・労災保険 | 社労士 | 対象となる従業員のための保険加入申請を行います。 |
社会保険 | 社労士 | 同上。健康保険・介護保険・厚生年金保険から成ります。 |
給与計算 | 社労士 | タイムカード等の勤務記録により給与明細書を作成します。 |
助成金 | 社労士 | 対象となる従業員を雇用した場合等に受給できます。 |
会計・決算 | 税理士 | 毎月会計帳簿への記録を行い、年度末には決算書を組みます。 |
法人税 | 税理士 | 決算書に基づき、法人税を計算し申告します。 |
年末調整 | 税理士 | 1年の最後に所得税を精算し、源泉徴収票を発行します。 |
所得税・住民税 | 税理士 | 従業員から徴収する所得税・住民税を管理します。 |
裁判対策 | 弁護士 | トラブル発生時の法律相談や訴訟の代理を行います。 |
営業(利用者確保) | (自社) | 利用者確保のための営業活動です。 |
公費請求事務 | (自社) | 請求ソフトを導入し、毎月公費請求を行います。 |
経理 | (自社) | 預金通帳や現金出納帳などで、実際のお金を出入を管理します。 |
※「専門家」の列は当社基準によるサポートの専門家を示しています。
(自社)とあるのは「あなた」が担う事を指します。
同じ内容を動画でもご覧いただけます。
- 1. 会社(法人)を設立する
- 1.1. 定款作成
- 1.2. 会社登記
- 2. 就業規則を整えて職員を雇用する
- 2.1. 就業規則
- 2.2. 賃金規程
- 2.3. 処遇改善加算
- 2.4. 雇用契約
- 3. 資金を調達して開業する
- 3.1. 銀行借入
- 3.2. 指定申請(事前協議)
- 4. 社会保険に加入して給与を支払う
- 4.1. 雇用保険・労災保険
- 4.2. 社会保険
- 4.3. 給与計算
- 4.4. 助成金
- 5. 税金を計算して納付する
- 5.1. 会計・決算
- 5.2. 法人税
- 5.3. 年末調整
- 5.4. 所得税・住民税
- 6. 裁判に備える
- 6.1. 弁護士相談
- 7. あなたが専念すること
- 7.1. 営業(利用者確保)
- 7.2. 公費請求事務
- 7.3. 経理
- 8. まとめ
会社(法人)を設立する
定款作成
「定款」は会社の憲法ともいえる基本書類です。具体的には「会社名」・「事業の内容」・「発起人(出資者や株主と呼んだります)」・「決算月」を含む、会社の仕組みの詳細事項を書面に定めます。定款を作成したあと、公証人役場で認証を受けます。電子定款とすることで定款に貼る印紙代が節約できます。当社でも電子定款でご対応しています。なお合同会社の場合、定款を作成した後の公証人役場での認証手続き自体が省略できます。
会社登記
完成した定款に基づき、その内容を法務局に登記申請することで会社が成立します。定款の中の基本事項は「登記情報」として登録され、広く一般の方に公開されます。また登記事項証明書として誰でも取得可能な状態となります。登記申請と同時に会社の実印を定めて登録することで会社の印鑑証明書が発行されるようになります。4種類ある会社の比較についてはこちらのコラムをご参照下さい。
就業規則を整えて職員を雇用する
就業規則
従業員の雇用条件を定める書面が就業規則です。具体的には出勤時刻、退勤時刻、休日、有給休暇、退職に関するルールなどです。作成した就業規則は従業員代表者の意見書を添付して労働基準監督署へ届出します。なお10名未満の事業所の場合、就業規則の作成届出義務はありませんが、当社としては作成をお勧めしています。
賃金規程
従業員の賃金に関するルールを定める書面が賃金規程です。就業規則の中に賃金規程が盛り込まれていても構いませんが、賃金規程を別途切り離すのが一般的です。具体的には賃金の決め方、昇給のルール、支給日、賞与、退職金などです。
処遇改善加算
介護障害福祉事業のうち、処遇改善加算の対象となる事業の場合、処遇改善加算の配分ルールを決定し、賃金規程にも記載します。処遇改善加算についての詳細は以下のコラムと動画をご参照下さい。
雇用契約
就業規則、賃金規程および処遇改善加算配分ルールの決定に基づき、各従業員との雇用契約書を作成します。雇用契約は就業規則、賃金規程および処遇改善加算配分ルールで定めた基準を下回ることはできません。例えば就業規則で週休2日制を規定しているのに、Aさんとの雇用契約書で週休1日とすることはできません。
資金を調達して開業する
銀行借入
事業所の場所が定まり、いよいよ開業に向けて様々な支出が始まるという時点で、銀行借入の検討を行います。優先的に審査申し込みする先は、国が全額を出資する日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫は創業融資の登竜門とも言えます。創業計画書を作成し必要書類とともに融資申込を行います。日本政策金融公庫での創業融資については以下のコラムをご参照下さい。
指定申請(事前協議)
営業開始のための許認可申請のことを「指定申請」と呼びます。申請書類と添付書類を整えて、管轄の自治体に提出します。指定申請の前に、自治体との間で公式の「事前協議」の実施が求められる場合があります。多くの自治体で指定申請書類の提出期限は、開業月の2カ月前~1カ月半前で定められているため、開業月から逆算して必要書類の収集を行う必要があります。指定申請のスケジュールについては以下のコラムをご参照下さい。
社会保険に加入して給与を支払う
雇用保険・労災保険
雇用する従業員の雇用保険と労災保険の手続きを行います。雇用保険は週20時間以上勤務の方が加入対象。労災保険は労働時間の長短に関わらず全員加入です。雇用保険と労災保険を合わせて労働保険と呼びます。労働保険料は1年分を前払いします。
社会保険
厚生年金保険、健康保険、介護保険を合わせて社会保険と呼びます。社会保険は常勤職員と常勤職員の4分の3以上時間働く人パート労働者等が加入対象です。通常、常勤職員は週40時間勤務するため、週30時間働くことが社会保険の加入ラインであると考えて間違いないでしょう。雇用保険と社会保険については以下のコラムをご参照下さい。
65歳以上高齢者を雇用する場合、雇用保険と社会保険の加入義務はありますか?
給与計算
タイムカード等の勤務記録に基づき支給額の計算を行うと同時に、社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税を控除します。給与の締め日から支給日まで期間が近接しすぎると、タイムカード集計作業が大変になるため、余裕を持って締め日と支給日を決定する必要があります。給与の締め日と支給日は就業規則で定めます。
助成金
受給可能な助成金を検討します。特に正社員登用時に受給可能性のある「キャリアアップ助成金」は受給金額も大きい(例:1人あたり57万円)ため、自社の人事計画に盛り込むと有利に働きます。キャリアアップ助成金については以下のコラムをご参照下さい。
税金を計算して納付する
会計・決算
毎月のお金の出入りを会計の専用ソフトへ入力し「月次決算」を行います。これによって毎月「月次残高試算表」を作成し、収支状況を把握します。決算月(決算月は各社で自由に決定できます)には年間を総括した「決算報告書」を作成ます。
法人税
「決算報告書」に基づき、法人税の計算を行います。管轄の税務署、都道府県税事務所、市町村に対して「決算報告書」を添付して法人税申告を行います。ここで計算した法人税は決算日から2カ月以内に納税する必要があります。
年末調整
1年の最後(12月)の給与または賞与の支給により、その会社で給与を得る全ての人の年収が確定します。これらの方々から年末調整に関わる扶養控除、保険料控除、住宅ローン控除などの書類を回収して年末調整計算を実施、源泉徴収票を発行します。年末調整後は管轄の税務署へ法定調書合計票を提出し、各人が居住する市町村へ給与報告を行う必要があります。
所得税・住民税
給与支給時に徴収(天引き)する所得税、住民税を取りまとめて金融機関で納税します。いずれも給与支給日の翌月10日が納税期限です。所得税には、年2回の取りまとめ納付制度があり、これを適用すると7月10日と1月20日が納税期限となります。住民税は年末調整後に各人が居住する市町村へ給与報告を行った結果、6月から5月を課税期間として個人別の住民税額が決定されます。
裁判に備える
弁護士相談
取引相手、ライバル会社、従業員等と法的トラブルに発展する場合に備えて、その日のうちに相談できる弁護士を確保しておくことをお勧めします。弁護士と顧問契約をすると月額顧問料金の負担が大きくなるため、当社ではパートナー弁護士による電話相談を低価格でご利用できるサービスをご紹介しています。
あなたが専念すること
最後に、あなた自身が士業専門家の力を借りずに、独力で体制を整えて実行していくお仕事をご紹介します。
営業(利用者確保)
利用者確保のために関係団体等に働きかけを行い、契約を獲得する必要があります。まずはケアマネージャーや相談支援事業所等にあなたの会社の存在を知ってもらうことから始めましょう。介護保険事業、障害福祉事業のアプローチ先としては次のコラムをご参照下さい。
公費請求事務
サービス提供月の翌月10日まで、介護保険報酬、障害福祉サービス費等について公費請求業務を行う必要があります。専用の請求ソフトを利用するのが一般的です。当社では公費請求事務を代行することは行っていませんが、請求ソフト会社とパートナー契約を締結しており、ご紹介することが可能です。
経理
ここで言う「経理」とは実際のお金の出入りを管理することです。具体的には現金出納帳を付けたり、預金通帳に直接メモ書きを加えたりする作業です。自社での経理業務が杜撰になると、その後の決算や法人税申告を正確に行うことが出来ないため、資料整理方法をきちんとルール化しましょう。当社ではそのルール化のお手伝いをしています。会計・経理関連の資料整理方法についてはこちらのコラムをご参照下さい。
会計・経理関連の資料整理方法を教えて下さい。
まとめ
以上が介護障害福祉事業を開業し、運営する上で必要となる知識と業務の全体像です。あまりにも多岐に渡るため、すこし尻込みされているのではないでしょうか?でもご安心ください。このコラムの冒頭でご説明した通り、タスクマン合同法務事務所では末尾3つの業務を除いてすべての業務にご対応することができます。介護障害福祉事業の立ち上げをご検討中の方は、是非ご相談ください。
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【この記事の執筆・監修者】
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※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
ご了承お願い致します。
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
◆奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
◆タスクマン合同法務事務所 代表
〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
(電話)0120-60-60-60
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