デイサービス(通所介護)設立・開業者のための、運営上の注意点|運営規定・重要事項説明書

デイサービス(通所介護)設立・開業者のための、運営上の注意点/運営規定を中心に
井ノ上剛(社労士・行政書士)

デイサービス(通所介護)設立開業者のための運営規定・重要事項説明書の解説コラム。デイサービスの運営にあたり、必要となる運営規定、重要事項説明書の仕組みを理解していますか?またサービス提供の拒否やケアマナージャーへの謝礼禁止の制度とは?デイサービス設立・開業予定者必見のコラムです。

このコラムの推奨対象者

・デイサービス(通所介護)設立・開業時に備えるべき運営規定の内容を理解したい人
・デイサービス事業者と居宅介護支援事業者の関係性 を理解したい人
・サービス提供するうえで注意しなければならないこと を理解したい人

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に特化した会社です。このコラムのリライト(更新)時である、令和3年8月時点で、過去に設立支援した介護障害福祉事業の累積が400社を超えました。デイサービス(通所介護)の運営規定についても日常業務の中でご対応していますので、安心してお読み下さい。

デイサービス(通所介護)設立・開業に必要な運営規定とは?

デイサービス(通所介護)事業者には法令上、次の10点を定めた運営規定を作成することが義務付けられています。

デイサービス(通所介護)の運営規定記載事項

1.事業の目的及び運営方針
2.従業者の職種、員数および職務の内容
3.営業日および営業時間
4.利用定員
5.デイサービス(通所介護)の内容と利用料
6.実施地域(あくまでも目安。地域を越えて運営しても良い)
7.サービス利用にあたっての留意事項
8.緊急時の対応方法
9.非常災害対策
10.その他運営に関する重要事項

運営規定は事業の根幹をなすものであるため、専門家の助力を得ながら作成することを強くお勧めします。

デイサービス(通所介護)利用者に渡す重要事項説明書とは?

利用者とデイサービス(通所介護)の利用契約を結ぶ前に、利用者に会社の概要を知ってもらう必要があります。そのために、先に解説した運営規定をダイジェスト版にまとめ、次の内容をプラスして利用者に情報提供しなければなりません。

デイサービス(通所介護)の重要事項説明書

1.デイサービス(通所介護)従業員の勤務体制
2.事故発生時の対応
3.苦情処理体制

※以上の内容と運営規定ダイジェスト版により、「重要事項説明書」となります。

以上をパンフレット形式にしてもOKです。また他に介護関連の指定事業がある場合、一体的に作成しても問題ありません。

運営規定ダイジェスト版、勤務体制一覧、重要事項説明書は事業所内に掲示する必要アがあります。実地指導の際は必ずチェックされるため、注意しましょう。

サービスの提供を拒否することはできる?

ここで問題となるのが、

「運営規定や重要事項説明書に記載したサービスを拒否することは出来るのだろうか?」

という点です。この点にお答えします。法令により、

「デイサービス(通所介護)事業者は正当な理由無く通所介護サービスの提供を拒んではならない」

とされています。

逆説的に読むと、「正当な理由があれば、通所介護サービスの提供を拒んでも良い」とも言えます。「正当な理由」とはどのようなことを指すのでしょうか?

通達によると、デイサービス(通所介護)事業者がサービスを拒否できる「正当な理由」として次の3点が例示されています。

デイサービス(通所介護)事業者がサービス拒否できる正当な理由とは?

1.当事業所の職員数では、利用申込に応じきれない場合
2.対応エリア外である場合
3.利用申込に対して適切な通所介護サービスを提供することが困難な場合(技術面)

なお、デイサービス(通所介護)事業者がサービス提供を断る場合の措置として、居宅介護支援事業所への連携を行うべきこと、他のデイサービス(通所介護)事業者を紹介すべきことなどが義務付けられています。

居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)との関係性

続いて居宅介護支援事業者との関係青つについて確認しましょう。

通所介護サービスの利用に当たっては、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)が作成するケアプランが大前提となります。

そのためデイサービス(通所介護)事業者は、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)と密接な連携関係を保つことが法令で義務付けられています。

その一方、デイサービス事業者側に利用者の紹介を行う、居宅介護支援事業者に対して、金銭、物品を問わず謝礼を行うことは絶対禁止されています。

金銭や物品でなくとも、何らかの経済的利益を与えることを全面的に禁止しているので注意しましょう。

加えて、居宅介護支援事業者(ケアマネージャー)に対して、利用者に必要のないサービスの介護計画への組み込みを依頼することも法令で禁じられています。(不当な働きかけの禁止)

受給資格の確認、要介護認定申請の援助

要介護認定申請について

デイサービス(通所介護)を介護保険を使って利用することが出来るのは、要介護認定を受けている被保険者に限られます。そのためデイサービス事業者は、サービス提供開始前に、要介護認定の有無と有効期間を確認する必要があります。

仮に要介護認定を受けていない人からの通所の申し込みがあった場合、要介護認定申請が行われるよう、必要な援助を行う義務があります。

要介護認定の更新申請について

要介護認定の有効期間は原則6カ月です。要介護認定の更新審査は、更新申請から30日以内に行う、とされているため、デイサービス(通所介護)事業者は、利用者の要介護認定の有効期間を管理し、満期の30日前には申請が終わっているよう、十分な援助を行いましょう。

デイサービス(通所介護)事業者が徴収できる費用

デイサービス(通所介護)事業者は、介護保険適用とならない次のサービスについて、予め利用者またはその家族に対して説明した上で、費用を徴収することができると定められています。

デイサービス(通所介護)事業者が徴収できる費用

1.対象エリア外の利用者に対する送迎費用
2.サービス利用時間を超え部分に関する費用
3.食事提供に要する費用
4.おむつ代
5.日常生活費用(歯ブラシ、シャンプー、タオル等)

これらの費用については、「介護保険サービスの適用範囲外」であることを十分説明した上で実施・受領しましょう。

このコラムのまとめ

このコラムではデイサービス(通所介護)事業の設立・開業相談時に、頻繁に質問を受ける項目を解説しました。設立・開業予定者の中には、「重要事項説明書はどこで手に入るか」という疑問を持っている方もおられます。このコラムを読んでもらえれば、それらの疑念が払拭されることと思います。

特に運営規定は、指定申請内容の根幹をなすだけでなく、事業運営上のカギとなるため、作成時に当社にご相談されることをお勧めします。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
【記事内容自体に関するご質問には応対できかねますので、ご了承お願い致します。】

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護職員実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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