このコラムを3分読めば理解できること

・就労継続支援A型での特定求職者雇用開発助成金受給ルールが理解できる
・就労継続支援A型で受給できない雇用助成金の種類が理解できる

障害者福祉作業所の一種、就労継続支援A型。障害者を雇用契約で受け入れるのが最大の特徴だ。この就労継続支援A型で、障害者雇用の代表的助成金である、特定求職者雇用開発助成金は受給できるのだろうか?このコラムでは就労継続支援A型事業所で受給できる助成金、受給できない助成金について、社会保険労務士が詳しく解説する。

このコラムの目次

①就労継続支援A型、特定求職者雇用開発助成金とは?
②就労継続支援A型における特定求職者雇用開発助成金の受給ルール
③就労継続支援A型における他の雇用助成金の受給ルール
④このコラムのまとめ

障害者就労支援事業の会社設立オールインワンパッケージ

①就労継続支援A型、特定求職者雇用開発助成金とは?

冒頭でこのコラムで使用する用語の解説から行おう。

就労継続支援A型とは?

就労継続支援A型は、一般事業所での就労が困難な障害者と雇用契約を結んで就労のサポートを行う福祉事業だ。労働者たる障害者の通所時間に応じて、事業所に福祉給付費が支給される。

(例:5時間以上6時間未満 定員20人以下の場合、1日約6000円)

指定(営業許可のこと)権限は都道府県知事または中核市等が持つ。障害者と雇用契約を結ばないB型事業所に対して、A型事業所では雇用契約を締結することが最大の特徴である。

このことによりA型事業所の障害者は、労働社会保険法令における労働者の扱いとなり、このコラムで取り扱う、雇用関連の助成金の対象者となるか否か、との問題が生じるのである。

特定求職者雇用開発助成金とは?

特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者等の就職困難者ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(長期雇用)として雇い入れる事業主に対して支給される。

障害者の部分に限定すると、下表の通りとなる。(中小企業の場合)

週労働時間 対象労働者 支給額
30時間以上 重度障害者等を除く身体・知的障害者 120万円
重度障害者等 240万円
20時間以上 30時間未満 重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 80万円

(特定就職困難者コース)

ここで問題となるのが、

A型事業所の本来の業務目的と、特定求職者雇用開発助成金の助成目的が重複するのではないか?

との問題である。特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難な人(高齢者、障害者、母子家庭の母等)の採用を行う事業所へ助成金を支給する制度だ。

一方のA型事業所は、一般就労が困難な障害者を雇用契約に基づいて受け入れる事業所に、障害福祉サービス費を支給する制度だ。

つまり、A型事業所に特定求職者雇用開発助成金を支給すると公費の二重支給が生じるのではないか、との疑念が生じる。

この問題について、平成29年5月1日確定的な変更が行われているので、下記で詳しく解説する。

②就労継続支援A型における特定求職者雇用開発助成金の受給ルール

平成29年5月1日以降のA型事業所における特定求職者雇用開発助成金の取り扱い

原則受給可能となった。ただし平成29年4月30日以前に雇い入れた利用者のうち、暫定支給決定を受けていた場合は対象外となる。

暫定支給決定とは?

暫定支給決定とは、障害者が訓練型の福祉サービスを利用するにあたり、

「このサービスを利用することが適しているのか」

を行政が判断するための期間だ。2カ月以内の範囲で設定され、受給者証と決定通知に記載される。

対象となる訓練型の福祉サービスは以下の通りである。

・自立訓練(機能訓練・生活訓練)
・就労移行支援
・就労継続支援A型

暫定支給決定を省くことができるケース

就労継続支援A型を利用する場合、原則として暫定支給決定を受ける必要がある。しかし下記いずれかに該当すれば、暫定支給決定を省略することができることを理解しておこう。

・利用者の転居によるA型事業所変更に伴い、前後のA型事業所でアセスメント情報が引き継がれている場合
・利用者が就労移行支援からA型事業所に移り、前後の事業所でアセスメント情報が引き継がれている場合

平成29年4月30日以前は?

前述の通り暫定支給決定は、いわゆる「試用期間」に類する位置づけであったため、A型事業利用開始時には特定求職者雇用開発助成金の支給条件である、「継続して雇用する労働者」とはみなされず、支給対象とならなかった。

平成29年5月1日以降は?

この制限が平成29年5月1日以降の雇用に関しては撤廃された形だ。ただし、対象となる利用者の離職割合が25%以上の場合は不支給となる。

これは特定求職者雇用開発助成金受給目的で、A型利用の短期離職を繰り返す悪質事業所を排除するための強化措置であると言える。

なお同一法人内で就労移行支援事業所または就労継続支援B型事業所から、A型事業所へ移動して雇用される場外は、雇用予約であると考えられ支給対象とならない旨、理解しておこう。

公共職業安定所でA型利用者を募集する場合の留意事項

このような制度変更の中、厚労省はA型事業所が公共職業安定所(ハローワーク)で労働者たる障害者を募集するにあたり、以下の内容の通達を発している。

1.就労継続支援A型の許可証(指定通知書)を提出すること
2.A型事業に応募する労働者たる障害者を他事業へ職務転換させないこと
3.暫定支給期間中、終了後それぞれの労働条件を明記すること
4.A型利用の趣旨にかんがみ、年齢不問とすること
5.求人条件には「居住する自治体による支給決定が必要」と記載すること

③就労継続支援A型における他の雇用助成金の受給ルール

この項では就労継続支援A型事業所における、代表的な雇用助成金との関連性を紹介する。

就労継続支援A型事業所と雇用助成金の関連一覧表

制度名 対象・内容 可否 備考
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)   高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成   
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース) 障害者雇用の経験のない中小企業が障害者を初めて雇用し、当該雇入れによって法定雇用率を達成する場合に助成    × A型事業所の
本来業務と近いため
障害者雇用調整金・報奨金 障害者法定雇用率を達成している企業に助成  
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース、障害者短時間トライアルコース) ハローワーク等の紹介により、就職困難な障害者を一定期間雇用し、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進雇用機会の創出を図る企業に助成 × A型事業所の
本来業務と近いため
職場適応訓練費 実際の職場で作業訓練を行い、作業環境に適応する目的で実施。訓練終了後は、その訓練を行った事業所に雇用されることを前提に助成 一部個別判断
障害者作業施設設置等助成金、障害者福祉施設設置等助成金 障害者が障害を克服し作業を容易に行えるよう配慮された施設、福利厚生施設の設置を行う場合にその費用の一部を助成 × A型事業所の
本来業務と近いため
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 重度身体障害者、知的障害者または精神障害者を多数継続して雇用し、事業施設等の設置または整備を行う場合に、その費用の一部を助成 個別判断  
重度障害者等通勤対策助成金 障害者を雇用する事業主、事業主が加入している団体が、これらの障害者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成 一部個別判断
障害者介助等助成金、重度障害者等通勤対策助成金(通勤援助者の委嘱助成金) 障害者を雇用する事業主が、適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成 × A型事業所の
本来業務と近いため
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース) 障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等の措置を講じる事業主に対して助成 × A型事業所の
本来業務と近いため
障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース) 職場適応・定着に特に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者による支援を実施する事業主に対して助成 × A型事業所の
本来業務と近いため
障害者雇用安定助成金(中小企業障害者多数雇用施設設置等コース) 労働者数300人以下の事業主が、障害者の雇入れに係る計画を作成し、当該計画に基づき障害者を10人以上雇用するとともに、障害者の雇入れに必要な事業所の施設・設備等の設置・整備をした場合に、当該施設・設備等の設置等に要する費用に対して助成 × A型事業所の
本来業務と近いため
人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)  障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるため、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う事業主又は事業主団体に対してその費用を一部助成 × A型事業所の
本来業務と近いため

④このコラムのまとめ

以上が就労継続支援A型と雇用助成金との関連である。

お読みいただけると分かる通り、A型事業の本来業務である、障害者の就労支援と目的を一にする雇用助成金は支給対象外となっている。

就労継続支援A型事業を設立開業する場合、あらかじめどの助成金が対象、または対象外となるかを調査しておこう。

就労継続支援A型の設立開業をお考えの際は、ぜひ当事務所の無料相談のご利用をお勧めする。

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