児童発達支援、放課後等デイサービスの運営規定・契約書・重要事項説明書|運営上の注意点を設立開業前にチェック

児童発達支援、放課後等デイサービスの運営規定、重要事項説明書
井ノ上剛(社労士・行政書士)

児童発達支援、放課後等デイサービスの開業にあたり理解しておきたい運営規定と重要事項説明書。これらの正確な理解は、児童発達支援、放課後等デイサービスの事業成功の第一歩です。このコラムでは福祉事業開業の専門家が、児童発達支援、放課後等デイサービス開業前に理解しておきたい運営上の注意点について詳しく解説します。

このコラムの推奨対象者

・児童発達支援、放課後等デイサービス開業に際して必要な事前対策を理解したい方
・児童発達支援、放課後等デイサービスの運営規定、重要事項説明書を理解したい方
・児童発達支援、放課後等デイサービスの禁止事項を理解したい方

コラムの信頼性

タスクマン合同法務事務所は、介護障害福祉事業の設立と運営支援に専門特化した合同法務事務所です。このコラムのリライト(更新)時である、令和3年10月時点、これまでに設立支援した介護障害福祉事業件数が、累積400社を突破。児童発達支援、放課後等デイサービスの運営規定についても年間、数多くご対応しています。安心してお読み下さい 。

通所給付決定保護者に求めることのできる金銭

児童発達支援、放課後等デイサービスの運営規定作成にも影響する内容であるため、最初に通所給付決定保護者(以下保護者)に求めることのできる金銭について確認しましょう。

利用者負担額

児童発達支援、放課後等デイサービスでは、原則として利用料金の9割を利用者が居住する自治体が負担し、残り1割を利用者が負担します。
>>事業者が利用者の限度額上限の管理を代行する場合の加算はこちら

利用者負担は法令で義務付けられているため、理由なしに事業所側が肩代わりすることは不当な利益供与として罰せられる点に注意しましょう。

食費

児童発達支援、放課後等デイサービスで、食事提供部分が公費で賄われるのは、児童発達支援センターのみです。(つまり通常の児童発達支援事業所には食事提供加算がありません)

児童発達支援センターで食事提供を行う場合のみ、食材費・調理費について保護者に対して費用を請求することができます。

日用品費

本来、事業所側が負担すべき費用と明確に区別するため、保護者に請求するときは使途、必要な理由、金額を文書で作成し、保護者の同意を得なければなりません。次の基準を確認しましょう。

日用品費を保護者に請求する際の基準

1.曖昧な名目は認められない(お世話料、管理協力費、共益費、施設費)
2.事業所の利益を上乗せすることは認められない(実費相当額で請求する)
3.テレビ、DVD等の画一的サービス費を徴収することは認められない

具体的には保護者の希望による身の回り品(歯ブラシ、スキンケア)、施設行事に必要な材料費などが想定されています。

児童発達支援、放課後等デイサービスの運営規定

児童発達支援、放課後等デイサービス事業所運営上の憲法とも言うべき運営規定。ここでは運営規定に記載すべき事項とそれぞれの注意点について確認しましょう。(項目は列挙しますが、説明不要部分は省略します)

事業の目的、運営の方針

従業者の職種、人数、職務内容

営業日、営業時間

利用定員

指定を得る際の利用定員の概念とは異なり、同時にサービス提供を受ける障害児の上限

通所決定保護者から受領する費用

詳細は「通所給付決定保護者に求めることのできる金銭」の項目を参照

事業の実施地域

利用申し込みに関する目安であり、この実施地域の範囲を超えてサービス提供しても良い

サービス利用に当たっての留意事項

緊急時等の対応

記載事項ではないが、児童発達支援、放課後等デイサービスでは、近距離の協力医療機関との提携が必要です。自治体によっては車で〇分以内の協力医療機関、などの制限があるため予め確認を。

非常災害対策

主たる障害を定める場合の種類

児童発達支援、放課後等デイサービスは原則的には障害種別を問わず、通所受け入れを行う必要がありますが、特に専門性確保の目的で主たる対象障害を定めることができます。主たる対象障害を定めた場合、この障害種別の児童からの申し出があった場合、理由なく断ることはできません。

虐待防止のための措置

サービス提供拒否の禁止、懲戒権濫用の禁止、利益供与の禁止

次に児童発達支援、放課後等デイサービスにおける3つの禁止事項について確認しましょう。

サービス提供拒否の禁止

児童発達支援、放課後等デイサービスでは、正当な理由がない限り、利用申し込みやサービス提供を拒むことはできません。ここでいう正答な理由とは次の4種です。

利用申し込みを拒否できる正当な理由

1.利用定員を超える申し込みがあった場合
2.入院治療の必要がある場合
3.事業所が提供する主たる障害種別が異なる場合
4.当該障害児を受け入れることで他の障害児に適切なサービス提供が困難な場合

これらの点に該当するかどうかを慎重に検討して、通所サービスの提供を判断しましょう。

懲戒権濫用(らんよう)の禁止

児童発達支援、放課後等デイサービスが障害児の療育を目的としたものである以上、指導上の必要性から指導員が児童に厳しく応対せざるを得ない場面も発生するでしょう。

しかしながら法では、心身共に健やかに育成する趣旨から外れた行為を懲戒権の濫用(らんよう)として禁止しています。具体的には次のような行為です。

禁止される「懲戒権の濫用」

1.暴行
2.合理的な範囲を超えて一定の姿勢をとらせる
3.食事を与えない
4.必要な睡眠時間、休憩時間を与えない
5.施設を退所させると脅かす
6.性的な嫌がらせをする
7.無視する

一方で、危険行為の制止など窮迫した場面で、当該児童に強制力を加えることは、懲戒権の濫用に当たらない点も理解しておきましょう。

利益供与の禁止

適切な児童発達支援、放課後等デイサービスの提供のために、関連する福祉関連事業者との間で、障害児(保護者)を紹介し合うことでの金品のやり取りは、相互に禁じられています。

金品を贈っても貰っても法令違反となるので注意しましょう。

児童発達支援、放課後等デイサービス受給者証を持たない場合の援助

児童発達支援、放課後等デイサービスの利用のためには、障害児の保護者が、居住する自治体に対して、通所給付の申請を行い、受給者証の交付を受けなければなりませn。

通所給付決定(受給者証)を受けていない保護者から、児童発達支援、放課後等デイサービスの利用申し込みがあった場合、事業所側は申請のための援助を行う義務が定められています。

受給者証の有効期間が終了する場合の、更新の手続きについても同様に、事業所側には援助を行う義務がある旨が定められています。

児童発達支援、放課後等デイサービスの重要事項説明書と契約書

重要事項説明書

児童発達支援、放課後等デイサービスの利用申し込みがあった時は、事業所は保護者に対して、運営規定のダイジェスト版、従業者の勤務体制などの書類を、重要事項説明書として分かりやすくまとめて、交付しなければなりません。

契約書

実際に利用の契約が成立した際には、さらに最低限、次の5項目を記載した書面を契約書として交付する必要があります。

契約書に記載すべき5項目

1.経営法人の名称と本店所在地
2.児童発達支援、放課後等デイサービスの具体的内容
3.通所給付決定保護者が支払う金額
4.サービス提供年月日
5.苦情窓口

以上が児童発達支援、放課後等デイサービスの重要事項説明書と契約書の概要です。開業前に慎重に検討して作成しておきましょう。

このコラムのまとめ

児童発達支援、放課後等デイサービスの開業に際して、事前に取り組んでおかなければならない項目を列挙して解説しました。

児童発達支援、放課後等デイサービスは公費により運営される事業であるため、実際の運営には相当程度行政庁の監視が入ります。実地指導において不備を指摘されないよう、正しい制度理解が必要です。

児童発達支援、放課後等デイサービスの制度理解に不安の場ある場合は、是非福祉事業開業の専門家であるタスクマン合同法務事務所にご相談下さい。

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【この記事の執筆・監修者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
※ご契約がない段階での記事に関するご質問には応対できかねます。
 ご了承お願い致します。

◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士・行政書士
奈良県橿原市議会議員
◆介護福祉士実務者研修修了
タスクマン合同法務事務所 代表
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